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99『さくらのアイドリングな日々・2』
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ここは世田谷豪徳寺
99『さくらのアイドリングな日々・2』
「お暑い中、わざわざの取材ありがとうございます」
帝都ドールの社長さんは、70ちょっとぐらいの実直そうなオジサンだ。
この年代はオジイサンとオジサンに分かれるけど、確実にオジサン。まだまだ元気で頑張ってますって現役オーラがムンムン。
「ちょっとびっくりさせたかもしれませんけど、まだまだこれから。お二人とも目をつぶって両手を出してもらえますか……」
言われるままに、目をつぶってプレゼントをもらうように両手を出した。
「ヒャッ!」
「エエ!?」
はるかさんもあたしも似たような声を上げた。冷やっこくってプニプニしたものが手の上に置かれたから。
目を開けて、もう一回「ヒヤッ!」と「エエ!?」 あたしの手の上には心臓、はるかさんの手の上には腎臓が載っていた。
「医療教育用のレプリカです。大学の医学部から頂いたデータを基に3Dプリンターで原型をおこし、シリコンで作ったものです」
「え、これが、あのドールさんたちの中に入ってるんですか!?」
アハハハハハ
あたしのバカな質問に、セーラー服のお孫さんが健康的に笑ってくれる。
「これは、息子の会社で作ってます。元々のうちの本業です。昔の学校なんかにあったでしょう。人体模型とか臓器の模型とか」
「それが、この人間そっくりなドールさんたちになるんですか?」
「昔、ニクソンショックってのがあって、変動相場制になって円が高くなりまして、医療用の模型じゃやっていけなくなりましてね。苦肉の策で始めたのが、これだったんです。ま、工場の方にどうぞ」
ショールームを抜けて廊下をいくと「関係者以外立ち入り禁止」のドアが自動で開いたのでビックリ。なんのことはない、モニターで見ていた社員の人が、向こう側から開けてくれたのだ。
「ウワー……」
首のない女の子の体が天井から吊るされてゆっくりと回っている。以前テレビで見た肉牛の解体工場を思い出した。
白手袋のオネーサンたちが、一体ずつ検品している。
「ここでハネられたらボツなんですか?」
「たまには出ますが、細かい傷は補修して、またラインに戻します」
「プロポーションもまちまちなんですね」
なるほど、よく見れば、モデルさんみたいなボディーもあれば、なんとなく親近感の湧く体型のボディーもあった。
「これなんか、さくらちゃんに似てるかも!」
はるかさんは切り替えが早い。はしゃぎまくってあたしを、そのボディーと並ばせた。
「この子は身長 158.5cm バスト 83.7cm(Cカップ) ウエスト 63.7cm ヒップ 86.4cmの日本女性の平均です」
コンマ以下はとにかく、ほとんどあたしといっしょだった。
「一体ずつ違うんですよ。この子たちをお求めになるお客さんの中には女性の方もいらっしゃいます。娘さんが遠くに行ってしまった方や(遠くには、いろんな意味があるのは想像がついた)一人暮らしの方が家族の一員のように迎えてくださる方もいます。で、半分ほどがサイズや特徴をうかがって、それぞれに見合ったものを作っています。こんな感じです」
社長さんが案内してくださった部屋には、なんと、はるかさんが座っていた。
「あ、あたしだ!」
一応短パンとカットソーは着ているが、はるかさんそっくりの首がついていた。
「マイって子のマスクが似ていたんで、あとはメイクとウィッグで似せてあります。一か月もあれば完全にそっくりなものも作れたんですけどね」
「さくらさんのもできましたよ」
マスクに白衣の歯科助手みたいなオネーサンが、あたしの首を持って現れた。
「ギョエ、あたしの生首!」
で、ドールといっしょに、記念撮影。社長さんは、こともなげに「これは売れるなあ……」正直複雑な気持ち……。
「ご安心を。お二人は並の肖像権以外に、プロダクションが版権もってますから、商品にはできません」
なんだか残念そう。
「でも、これだとオーダーメイドで高くて、値段の割には商売にならないんじゃないですか?」
「ハハ、さすが坂東はるかさんだ。うちの主力商品は、こちらです」
次に案内された工場は、小さい子たちで一杯だった。
「BJDとかSDとか業界では言ってますが、ビスクドールの進化系です。1/3~1/6までのラインナップです。金属製の関節が入ったドールで、ヘッドは市販の他社ののものでも付けられるようにアタッチメントが付いています」
「なるほど、これなら、いろいろカスタマイズして遊べますね」
「こちらは版権を買って商品化したもので、来月から発売します」
壁を曲がったコーナーには、真田山学院の制服を着た人形がズラリと並んでいた。はるか風と由香風の二種類があった。
「あの『はるか ワケあり転校生の7カ月』の人気は、まだまだ続きますよ。親しみの持てるルックスだし、これに『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』のキャラも入れて学院シリーズで売り出そうと思ってます」
で、それぞれはるか風と由香風をもらった。
家に持って帰るとお父さんが気に入ってしまい、ちょっと複雑な、それぞれの夏の始まりでした。
99『さくらのアイドリングな日々・2』
「お暑い中、わざわざの取材ありがとうございます」
帝都ドールの社長さんは、70ちょっとぐらいの実直そうなオジサンだ。
この年代はオジイサンとオジサンに分かれるけど、確実にオジサン。まだまだ元気で頑張ってますって現役オーラがムンムン。
「ちょっとびっくりさせたかもしれませんけど、まだまだこれから。お二人とも目をつぶって両手を出してもらえますか……」
言われるままに、目をつぶってプレゼントをもらうように両手を出した。
「ヒャッ!」
「エエ!?」
はるかさんもあたしも似たような声を上げた。冷やっこくってプニプニしたものが手の上に置かれたから。
目を開けて、もう一回「ヒヤッ!」と「エエ!?」 あたしの手の上には心臓、はるかさんの手の上には腎臓が載っていた。
「医療教育用のレプリカです。大学の医学部から頂いたデータを基に3Dプリンターで原型をおこし、シリコンで作ったものです」
「え、これが、あのドールさんたちの中に入ってるんですか!?」
アハハハハハ
あたしのバカな質問に、セーラー服のお孫さんが健康的に笑ってくれる。
「これは、息子の会社で作ってます。元々のうちの本業です。昔の学校なんかにあったでしょう。人体模型とか臓器の模型とか」
「それが、この人間そっくりなドールさんたちになるんですか?」
「昔、ニクソンショックってのがあって、変動相場制になって円が高くなりまして、医療用の模型じゃやっていけなくなりましてね。苦肉の策で始めたのが、これだったんです。ま、工場の方にどうぞ」
ショールームを抜けて廊下をいくと「関係者以外立ち入り禁止」のドアが自動で開いたのでビックリ。なんのことはない、モニターで見ていた社員の人が、向こう側から開けてくれたのだ。
「ウワー……」
首のない女の子の体が天井から吊るされてゆっくりと回っている。以前テレビで見た肉牛の解体工場を思い出した。
白手袋のオネーサンたちが、一体ずつ検品している。
「ここでハネられたらボツなんですか?」
「たまには出ますが、細かい傷は補修して、またラインに戻します」
「プロポーションもまちまちなんですね」
なるほど、よく見れば、モデルさんみたいなボディーもあれば、なんとなく親近感の湧く体型のボディーもあった。
「これなんか、さくらちゃんに似てるかも!」
はるかさんは切り替えが早い。はしゃぎまくってあたしを、そのボディーと並ばせた。
「この子は身長 158.5cm バスト 83.7cm(Cカップ) ウエスト 63.7cm ヒップ 86.4cmの日本女性の平均です」
コンマ以下はとにかく、ほとんどあたしといっしょだった。
「一体ずつ違うんですよ。この子たちをお求めになるお客さんの中には女性の方もいらっしゃいます。娘さんが遠くに行ってしまった方や(遠くには、いろんな意味があるのは想像がついた)一人暮らしの方が家族の一員のように迎えてくださる方もいます。で、半分ほどがサイズや特徴をうかがって、それぞれに見合ったものを作っています。こんな感じです」
社長さんが案内してくださった部屋には、なんと、はるかさんが座っていた。
「あ、あたしだ!」
一応短パンとカットソーは着ているが、はるかさんそっくりの首がついていた。
「マイって子のマスクが似ていたんで、あとはメイクとウィッグで似せてあります。一か月もあれば完全にそっくりなものも作れたんですけどね」
「さくらさんのもできましたよ」
マスクに白衣の歯科助手みたいなオネーサンが、あたしの首を持って現れた。
「ギョエ、あたしの生首!」
で、ドールといっしょに、記念撮影。社長さんは、こともなげに「これは売れるなあ……」正直複雑な気持ち……。
「ご安心を。お二人は並の肖像権以外に、プロダクションが版権もってますから、商品にはできません」
なんだか残念そう。
「でも、これだとオーダーメイドで高くて、値段の割には商売にならないんじゃないですか?」
「ハハ、さすが坂東はるかさんだ。うちの主力商品は、こちらです」
次に案内された工場は、小さい子たちで一杯だった。
「BJDとかSDとか業界では言ってますが、ビスクドールの進化系です。1/3~1/6までのラインナップです。金属製の関節が入ったドールで、ヘッドは市販の他社ののものでも付けられるようにアタッチメントが付いています」
「なるほど、これなら、いろいろカスタマイズして遊べますね」
「こちらは版権を買って商品化したもので、来月から発売します」
壁を曲がったコーナーには、真田山学院の制服を着た人形がズラリと並んでいた。はるか風と由香風の二種類があった。
「あの『はるか ワケあり転校生の7カ月』の人気は、まだまだ続きますよ。親しみの持てるルックスだし、これに『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』のキャラも入れて学院シリーズで売り出そうと思ってます」
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家に持って帰るとお父さんが気に入ってしまい、ちょっと複雑な、それぞれの夏の始まりでした。
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