ここは世田谷豪徳寺

武者走走九郎or大橋むつお

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111≪四ノ宮青年の正体≫

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新・ここは世田谷豪徳寺・13(さくら編)

111≪四ノ宮青年の正体≫




 ヘルメットを脱いだ顔に驚いた……。

 それは渡辺謙を若くして、少しバタ臭くしたハーフっぽいイケメンなのだ。

 思わず見つめてしまった。

「ああ、お袋アメリカ人だから。ちょっととっつきにくいかもしれないけどよろしく」

 なんで、こんなイケメンが、水道工事のガードマンやら測量助手をやっているのか、わけが分からなかった。
 声もバリトンでイケてるし、背も高くてかっこいい。その気になればモデルだってやれるんじゃないかと思った。
 チラ見すると、米井さん以外の子も同じような顔で見ている。測量技師のオジサンはニヤニヤしている。

「ここ昔はうちの屋敷があったんだ……」

 あっさり言った。

「……あの、聞いてる?」

「あ、はい。もちろん!」

 あやうく上の空になるところだった。

「うちは昔ちっこいけど大名家でね、代々ここに上屋敷をもっていた。大名家って没落したとこが多いんだけど、うちのご先祖は上手く立ち回って明治からこっちは華族さまでね。帝都の創設者がひいジイサンの友達で、学校が移転するときにこの家屋敷を寄付した……といったらかっこいいけど、戦争に負けてニッチモサッチモ。
 で、国に取られてばら売りされるよりは、そのまま学校になった方がいいって、帝都女学院がここにあるわけ。
 で、上屋敷だったころは、ここ丑寅……北東のことで、魔物が入ってくるって鬼門だったんだ。実際不審火が出たり、庭師が怪我をしたりしたりして。
 そこで、都から陰陽師を呼んで鬼門封じをやってもらったと……ここまでいい?」

 みんな黙ってコックリした。イケメンの上にやんごとないお方なのだ。竹田さんて元皇族の人よりずっとイケてる。

「で、将門塚から敷石を一つもらってきて。あの校舎の下あたりに埋めたんだ。それから、今みたいに坂の上の方に物が転がるようになった。どう、すごい話でしょう……?」

 最後の方は、声を低めて言うもんだから、あたしたちはすっかりキミが悪くなった。

「ハハ、信じた?」

「え……え、ウソなの!?」

「本当さ。でもここから先は佐伯君に譲ろう」

「実は、重力異常の場所って、案外あるんだよ。うちみたいに建築会社やってると、たまにこういうところに出くわすんだ。地脈の異常とか、地下に大きな隕石が埋まってるとか、説はいろいろだけど、怪奇現象……にしていた方がいいかな。あ、由美、そろそろ時間じゃないか?」

 佐伯君が、兄妹のニュアンスで米井さんに振る。

 それから、あたしたちは古い別館の三階の水洗い場に向かった。三つ蛇口が並んだ横に時代物の水飲み機があった。

「え、ここで何があんのん?」

 大阪弁丸出しで里奈が聞く。

「待ってて、あと20秒ほどだから……」

 みんな米井さんに従って、水飲み機を見つめた。


 ドーーーーーーーーーー

 キャ!!?


 なんということ!

 誰も触らないのに、水飲み機から放物線を描いて水が飛び出した。まるで透明人間が水を飲んでいるように!
 
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