112 / 139
112≪ついてくる足音!≫
しおりを挟む
新・ここは世田谷豪徳寺・14(さくら編)
112≪ついてくる足音!≫
誰も触らないのに水飲み機から放物線を描いて水が飛び出した。まるで透明人間が水を飲んでいるように!
「東京大空襲で焼け死んだ人たちが、水を求めてやってくるのよ」
米井さんは、怖そうなことを天気予報の解説のようにお気楽に言う。
聞いた瞬間は「そうなんだ」だけど、数秒後に頭が理解して、俄然怖くなる。
これは、あたしたち女子高生が、いかに人の話をいい加減に聞いているかの現れ。
人が話したら、とりあず「はい」とか「そうなんだ」を息を吐くように無意識ってか、無神経に言う。
これは「まず、お返事しましょう」という保育所時代から仕込まれた動物的な条件反射。
そんで帝都で仕込まれた『明朗・闊達・俊敏』の指導の賜物。
「人の話には、まず明るく、素早く返事をしましょう。明朗・闊達・俊敏に」
何かにつけて言われるので、帝都の子たちは明るく躾がいいと言われる。
でも、これも保育所以来の仕込みの積み重ね。返事のわりには理解していない。
聞いたことは、そのあと頭の中で取捨選択して、重要なものや、興味のあるもの、怖いものには、そのあと脳みそが判断する。
で、今の米井さんの話は、数秒かかって、脳みそが「怖い」と認識したわけ。
授業なんかだと「はい、分かりました」と無意味に返事して、スルーしたまま脳みそは反応しない。
「これは他の学校にでも起こっていてね、大概は生徒が居なくなった深夜に起こるの。うちに来る幽霊さんたちは優しいから、まだ日のあるうちにおこしになるの」
そんなの優しいって言わないよ!
「これは、ボクもガードマンのバイトし始めたころに経験したよ。とある都立高校に深夜の巡回に回ったら、同じように水飲み機から、水が飛び出して……」
四ノ宮のニイチャンが恐ろしげにいうので、これにはダイレクトに反応した。
「こいつはタネがあるんだよ」
測量技師のオジサンが、マジシャンの種明かしのような口調で言い始めた。
「水飲み機のタンクの水が腐らないように、タイマーが仕掛けられていてね、一日に一回タンクを空にするために、水が全部出るんだ」
聞いてみると、どうってことない。
米井さんは知っていたようで、ニンマリ笑っている。その傍で佐伯君もニコニコ。どうも二人にはめられたようだ。
「でもさ、今のみんなの反応も七不思議だな。情報によって脳みそが取捨選択するっての」
「あ、そうだね。動画も撮ったし、これで七不思議の三つが取材できた!」
アハハハと、楽しそうに笑う米井、佐伯兄妹であった。
プンプン!
あくる日は、担任の水野先生にも付き添ってもらって、日が沈んでからの取材だった。
「なんにも言わないで、グランドを一周走ってみそ」
米井さんは、とぼけた口調で言う。
また昨日の水飲み機のデンであろうと、あたしたちはタカをくくっていた。
もう8時を回っていて、運動部もいない。グラウンドが広く感じる。青山通りからは一筋隔てているだけなのに、車や街の喧騒はほとんど聞こえない。
佐伯君が高性能カメラを担いでスタンバイしている。なんだか、もうスタッフの一員だ。
あたしたちは、グラウンドシューズに履き替えて、グラウンドに並んだ。
今日は遅いのにも関わらずメンバーは10人に増えている。時間まで、あたしたちは東京の都市伝説なんかで盛り上がっていて、やる気は満々だった。
「時間だわ、ヨーイ……スタート!」
走り出して二三分で気が付いた。
あたしたちのすぐ後ろを、数十人の集団が走っている。今にも追いつかれそう。グラウンドは夜間照明が点いているとはいえ、周りは青山通り界隈のビル、怖さはひとしおだった。
みんな同じと見え、速度が上がっていく。
先頭はバレー部セッターの山口恵里奈。二番手は意外も茶道部の佐久間マクサ……なんのことはない、二人とも親友のあたしをほったらかしにして先を走っているだけ!
迫りくる何十という足音。
心臓が口から飛び出しそうになった!
112≪ついてくる足音!≫
誰も触らないのに水飲み機から放物線を描いて水が飛び出した。まるで透明人間が水を飲んでいるように!
「東京大空襲で焼け死んだ人たちが、水を求めてやってくるのよ」
米井さんは、怖そうなことを天気予報の解説のようにお気楽に言う。
聞いた瞬間は「そうなんだ」だけど、数秒後に頭が理解して、俄然怖くなる。
これは、あたしたち女子高生が、いかに人の話をいい加減に聞いているかの現れ。
人が話したら、とりあず「はい」とか「そうなんだ」を息を吐くように無意識ってか、無神経に言う。
これは「まず、お返事しましょう」という保育所時代から仕込まれた動物的な条件反射。
そんで帝都で仕込まれた『明朗・闊達・俊敏』の指導の賜物。
「人の話には、まず明るく、素早く返事をしましょう。明朗・闊達・俊敏に」
何かにつけて言われるので、帝都の子たちは明るく躾がいいと言われる。
でも、これも保育所以来の仕込みの積み重ね。返事のわりには理解していない。
聞いたことは、そのあと頭の中で取捨選択して、重要なものや、興味のあるもの、怖いものには、そのあと脳みそが判断する。
で、今の米井さんの話は、数秒かかって、脳みそが「怖い」と認識したわけ。
授業なんかだと「はい、分かりました」と無意味に返事して、スルーしたまま脳みそは反応しない。
「これは他の学校にでも起こっていてね、大概は生徒が居なくなった深夜に起こるの。うちに来る幽霊さんたちは優しいから、まだ日のあるうちにおこしになるの」
そんなの優しいって言わないよ!
「これは、ボクもガードマンのバイトし始めたころに経験したよ。とある都立高校に深夜の巡回に回ったら、同じように水飲み機から、水が飛び出して……」
四ノ宮のニイチャンが恐ろしげにいうので、これにはダイレクトに反応した。
「こいつはタネがあるんだよ」
測量技師のオジサンが、マジシャンの種明かしのような口調で言い始めた。
「水飲み機のタンクの水が腐らないように、タイマーが仕掛けられていてね、一日に一回タンクを空にするために、水が全部出るんだ」
聞いてみると、どうってことない。
米井さんは知っていたようで、ニンマリ笑っている。その傍で佐伯君もニコニコ。どうも二人にはめられたようだ。
「でもさ、今のみんなの反応も七不思議だな。情報によって脳みそが取捨選択するっての」
「あ、そうだね。動画も撮ったし、これで七不思議の三つが取材できた!」
アハハハと、楽しそうに笑う米井、佐伯兄妹であった。
プンプン!
あくる日は、担任の水野先生にも付き添ってもらって、日が沈んでからの取材だった。
「なんにも言わないで、グランドを一周走ってみそ」
米井さんは、とぼけた口調で言う。
また昨日の水飲み機のデンであろうと、あたしたちはタカをくくっていた。
もう8時を回っていて、運動部もいない。グラウンドが広く感じる。青山通りからは一筋隔てているだけなのに、車や街の喧騒はほとんど聞こえない。
佐伯君が高性能カメラを担いでスタンバイしている。なんだか、もうスタッフの一員だ。
あたしたちは、グラウンドシューズに履き替えて、グラウンドに並んだ。
今日は遅いのにも関わらずメンバーは10人に増えている。時間まで、あたしたちは東京の都市伝説なんかで盛り上がっていて、やる気は満々だった。
「時間だわ、ヨーイ……スタート!」
走り出して二三分で気が付いた。
あたしたちのすぐ後ろを、数十人の集団が走っている。今にも追いつかれそう。グラウンドは夜間照明が点いているとはいえ、周りは青山通り界隈のビル、怖さはひとしおだった。
みんな同じと見え、速度が上がっていく。
先頭はバレー部セッターの山口恵里奈。二番手は意外も茶道部の佐久間マクサ……なんのことはない、二人とも親友のあたしをほったらかしにして先を走っているだけ!
迫りくる何十という足音。
心臓が口から飛び出しそうになった!
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】メインヒロインとの恋愛フラグを全部ブチ壊した俺、サブヒロインと付き合うことにする
エース皇命
青春
《将来ヤンデレになるメインヒロインより、サブヒロインの方が良くね?》
16歳で自分が前世にハマっていた学園ドラマの主人公の人生を送っていることに気付いた風野白狼。しかしそこで、今ちょうどいい感じのメインヒロインが付き合ったらヤンデレであることを思い出す。
告白されて付き合うのは2か月後。
それまでに起こる体育祭イベント、文化祭イベントでの恋愛フラグを全てぶち壊し、3人の脈ありサブヒロインと付き合うために攻略を始めていく。
3人のサブヒロインもまた曲者揃い。
猫系ふわふわガールの火波 猫音子に、ツンデレ義姉の風野 犬織、アニオタボーイッシュガールの空賀 栗涼。
この3人の中から、最終的に誰を選び、付き合うことになるのか。てかそもそも彼女たちを落とせるのか!?
もちろん、メインヒロインも黙ってはいない!
5人の癖強キャラたちが爆走する、イレギュラーなラブコメ、ここに誕生!
※カクヨム、小説家になろうでも連載中!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる