やくもあやかし物語・2

武者走走九郎or大橋むつお

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035『デラシネに向き合う・2』

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やくもあやかし物語 2

035『デラシネに向き合う・2』 





「なあ、これってハイジのおかげなんだろ!?」

 ポコン!

「イッテエなあもう」

「今度言ったら、殺す」

「わ、分かってるけどよぉ」

 これでもう五回目くらい。


 学校の庭で詩(ことは)さんが歩く練習をしている。介添えは王女さま、時どきソフィー先生。二人とも日本にいたころからのお友だち。

 先週、ハイジと男子が木登りしてて、調子に乗ったハイジがお猿みたいに落っこちた。

 その瞬間を、この窓から見ていた詩さんは、ビックリした拍子に自分の脚で立ち上がったんだ。

 その時、庭の端っこで見ていたデラシネが疾風みたいに飛んできてハイジを受け止めた。

 でも、デラシネはわたし以外には見えないから、みんな、ハイジは魔法かなんかで助かったと思っている。

 それと、詩さんが自分の脚で立ち上がったことと合わせて、王宮や学校では『セントヤマセン以来の奇跡』と噂が立っている。


 こないだ三方さんが聖真理愛学院の修学旅行に紛れてやってきた。仁徳天皇の御勅使だそうで、あれこれやっていった。
 最後はヤマセン湖のほとりでデラシネに付き添ってくれて、わたしの胸にもラブ注入みたいにしてくれて、それが影響してるんだと思う。

 今のところ、デラシネの姿はわたしにしか見えない。

 森で大暴れしていたころは、ハイジやネルにも見えていたんだけどね。年末の決戦で負けてからは、わたし以外には見えないようになった。


 一時間近く歩行練習をして、詩さんは、王女さまに付き添われて王宮に帰って行った。


 そして、それまで庭の隅っこで見ていたデラシネも姿を消した。

「さあ、そろそろ宿題やらなきゃだなぁ!」

 ネルがピンと耳を立てて力こぶを作る。

「あはは、そういや、そんなもんがあったな(^_^;)」

「ハイジ、どうせやってないんだろ」

「どうしてわかった!?」

「分かるわあ!」

「そ、そうか。じゃ、見せてくれよ」

「いっしょにやってやるから、自習室行くぞ」

「おう、やくもはやったのかぁ?」

「あと、ちょっとだけ。あとで自習室行く」

「おう、じゃあ、宿題は手を付けないで待っててやるからな」

「それは、やらなきゃダメだろがぁ」

 ポコン

「あ、また叩いたぁ!」

「うるさい、いくぞ……」

「待てったらぁ……」

 ふたりのにぎやかな声が廊下に消えてバルコニーの方に目をやると――もういいか?――という顔でデラシネが浮かび上がってきた。

 ベッドに腰掛けて、隣をポンポンと叩くと、少しだけ安心したような顔をして、わたしの横に腰掛けた。



☆彡主な登場人物 

やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法)
あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方
 
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