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第二章 魔獣討伐
04.聖者の力1
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駆け足で進んだ討伐の工程は、目的地に到着するよりも早く魔獣に遭遇した。
四日目だ。
「今年はいつもより魔獣が荒ぶっているな……聖者の召喚と何か関係あるのか?」
例年であれば冬を前にした今の時期、アルヘンティーノの周辺に目撃情報が出始めるというのに、現地に着く前に涎を垂らし、熊に似た氷属性の魔獣が涎を垂らして街道に現れた。腹を空かせているのは一目瞭然。血走った赤い目に吐き出される白い息、垂れた涎は地面に着く前に固まり、コロリと地面に落ちてから溶け出している。
十匹以上の群れはジリジリと騎士団へ向かって近づいてきた。
「随分と腹を空かせているようだ……もしかしたらこの先の村はもうやられたかもしれない」
「……不吉なことを言わないでくださいよ。とりあえずあんたは下りてくれ、とてもじゃないがあんたを連れて戦うことはできないんでな」
ローシェンにしがみ付いていた真柴を下ろせば、察知して前に来た神官が真柴を後方へと引きずっていった。
これで足手まといはいなくなった。
「どうします、団長。ツーマンセルならいけますよ」
なんせ今回参加しているのは騎士団の精鋭ばかりだ。
二人組になり、一組二体倒せば終わるだろうが、これほどまでに飢えた魔獣に出会うには時期が早すぎる。
何かがおかしい。
おかしすぎる。
アーフェンは剣を抜くと、団長の返事も聞かず後ろに控えている仲間たちに向け、二本の指を立てた。それだけでどうすべきかを理解している騎士団員はすぐに馬を下り、壁を作るように前に出て剣を構える。
それを見ただけで魔獣は一層涎を垂らし近づいてきた。
「いいか、散らばって熊氷(ゆうひよう)の注意を散らすんだ! 近づきすぎるな、絶対に腕を凍らせるな!」
アーフェンの怒号に騎士たちはいっせいに散らばり、追いかけてきた魔獣を煽って群れから引き離していく。
散り散りになった魔獣は自分たちが群れだからこそ強いのだと忘れて、人肉を求めて一体また一体と森の中へと入っていく。そうなれば街道に残る魔獣は数を減らし、残りはアーフェンとローデシアンでどうにかできる。
「分かってると思いますけど、神官の皆さんは馬車から一歩も出ないでください」
怒鳴って、馬すらも後ろに下がらせて対峙する。
腹を空かせた魔獣は大きな鈎型の爪を肉に食い込ませようと、手を振り上げてくる。それは己の弱点である脇を晒していることでもあると果たして気付いているのか。
アーフェンはすぐさま一瞬だけ見える脇に剣を突き刺し、すぐに引き抜くと背中に回って振りかざした剣で腕を切り落とした。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
しばらくは動けないところにとどめを刺し、次に近づいてきた魔獣を地獄に堕とすべく一瞬の隙を突いていった。
一体、また一体と地に沈んでは鮮血を土に吸い込ませていく。
(あと何体だ……)
ちらりと視線を移せば自分よりも一体多く魔獣を倒しているローデシアンの姿がある。アーフェンよりも十五も年上の彼が、四十にしてまだ衰えることなく剣を振るっているのを目の辺りにすれば、負けてられないと一気に奮い立つ。
疲れなど忘れ、にやりと嗤ってまた魔獣へと向き合った。
後一体倒せば街道にいる魔獣はすべて地面に沈むことになる。そうなれば森の中で戦っている仲間の元へ行ける。
両手を振り上げてきた魔獣をいつものように突き刺そうとしたが、それよりも早く剣を掴まれ反対の手が振り下ろされる。
「なっ!」
すぐさま剣を放し魔獣の体勢を崩そうと蹴り上げたが、鋭い爪がすねを抉った。
「ぐっ……くそっ!」
これくらいどうってことはない。が、戦いの最中では不利だ。すぐさま他の熊氷がこの血の臭いに惹き付けられ目の前の団員を無視してやってくる。
「しくじった……」
皆に迷惑がかかる。今ここで魔獣が出てきたということはこれより先、もっと強敵が現れるはずだ。
しかもここを踏ん張らなければ後ろにいる聖者たちはすぐにやられてしまう。
自分一人のせいで、この討伐が失敗と言われてしまう。
だがすぐにまた鋭い爪が振り下ろされた。
(もう駄目だ……っ!)
だが、その大きな手がアーフェンの肉を抉る前に身体から切り落とされた。すぐさま反対の手も。首からは大量の血が噴出し始める。
倒れていく魔獣の後ろに立っていたのはローデシアンだった。
「団長……」
「すぐに調子に乗るのがお前の悪い癖だぞ。いつだって冷静さを欠くな。そこで止血していろ、私は他の団員の援護に回る」
刃に付いた血を振り払い、すぐに背を向けられる。
唇を噛んだ。敬愛するローデシアンに見捨てられたような気になってしまう。
(こんなんじゃ駄目だ……団長が頼ってくれる存在になるんだと頑張ったのに……)
結局足を引っ張ってしまった。
アーフェンは肉が抉られた足に目をやる。痛みはまだない。なんせ魔獣の爪に触れた場所が凍っているからだ。だがこれが溶け出したら大量の血が噴出し、猛烈な痛みがやってくるのは経験で知っている。そして回復が遅いことも。
「ベルマンさん、大丈夫ですかっ!」
こんなみっともない姿で地面に座っているしかないアーフェンの元に走ってくる足音が聞こえてくる。振り返らなくても分かる、真柴だ。変わらず偽善で心配する振りをしているのか。
四日目だ。
「今年はいつもより魔獣が荒ぶっているな……聖者の召喚と何か関係あるのか?」
例年であれば冬を前にした今の時期、アルヘンティーノの周辺に目撃情報が出始めるというのに、現地に着く前に涎を垂らし、熊に似た氷属性の魔獣が涎を垂らして街道に現れた。腹を空かせているのは一目瞭然。血走った赤い目に吐き出される白い息、垂れた涎は地面に着く前に固まり、コロリと地面に落ちてから溶け出している。
十匹以上の群れはジリジリと騎士団へ向かって近づいてきた。
「随分と腹を空かせているようだ……もしかしたらこの先の村はもうやられたかもしれない」
「……不吉なことを言わないでくださいよ。とりあえずあんたは下りてくれ、とてもじゃないがあんたを連れて戦うことはできないんでな」
ローシェンにしがみ付いていた真柴を下ろせば、察知して前に来た神官が真柴を後方へと引きずっていった。
これで足手まといはいなくなった。
「どうします、団長。ツーマンセルならいけますよ」
なんせ今回参加しているのは騎士団の精鋭ばかりだ。
二人組になり、一組二体倒せば終わるだろうが、これほどまでに飢えた魔獣に出会うには時期が早すぎる。
何かがおかしい。
おかしすぎる。
アーフェンは剣を抜くと、団長の返事も聞かず後ろに控えている仲間たちに向け、二本の指を立てた。それだけでどうすべきかを理解している騎士団員はすぐに馬を下り、壁を作るように前に出て剣を構える。
それを見ただけで魔獣は一層涎を垂らし近づいてきた。
「いいか、散らばって熊氷(ゆうひよう)の注意を散らすんだ! 近づきすぎるな、絶対に腕を凍らせるな!」
アーフェンの怒号に騎士たちはいっせいに散らばり、追いかけてきた魔獣を煽って群れから引き離していく。
散り散りになった魔獣は自分たちが群れだからこそ強いのだと忘れて、人肉を求めて一体また一体と森の中へと入っていく。そうなれば街道に残る魔獣は数を減らし、残りはアーフェンとローデシアンでどうにかできる。
「分かってると思いますけど、神官の皆さんは馬車から一歩も出ないでください」
怒鳴って、馬すらも後ろに下がらせて対峙する。
腹を空かせた魔獣は大きな鈎型の爪を肉に食い込ませようと、手を振り上げてくる。それは己の弱点である脇を晒していることでもあると果たして気付いているのか。
アーフェンはすぐさま一瞬だけ見える脇に剣を突き刺し、すぐに引き抜くと背中に回って振りかざした剣で腕を切り落とした。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
しばらくは動けないところにとどめを刺し、次に近づいてきた魔獣を地獄に堕とすべく一瞬の隙を突いていった。
一体、また一体と地に沈んでは鮮血を土に吸い込ませていく。
(あと何体だ……)
ちらりと視線を移せば自分よりも一体多く魔獣を倒しているローデシアンの姿がある。アーフェンよりも十五も年上の彼が、四十にしてまだ衰えることなく剣を振るっているのを目の辺りにすれば、負けてられないと一気に奮い立つ。
疲れなど忘れ、にやりと嗤ってまた魔獣へと向き合った。
後一体倒せば街道にいる魔獣はすべて地面に沈むことになる。そうなれば森の中で戦っている仲間の元へ行ける。
両手を振り上げてきた魔獣をいつものように突き刺そうとしたが、それよりも早く剣を掴まれ反対の手が振り下ろされる。
「なっ!」
すぐさま剣を放し魔獣の体勢を崩そうと蹴り上げたが、鋭い爪がすねを抉った。
「ぐっ……くそっ!」
これくらいどうってことはない。が、戦いの最中では不利だ。すぐさま他の熊氷がこの血の臭いに惹き付けられ目の前の団員を無視してやってくる。
「しくじった……」
皆に迷惑がかかる。今ここで魔獣が出てきたということはこれより先、もっと強敵が現れるはずだ。
しかもここを踏ん張らなければ後ろにいる聖者たちはすぐにやられてしまう。
自分一人のせいで、この討伐が失敗と言われてしまう。
だがすぐにまた鋭い爪が振り下ろされた。
(もう駄目だ……っ!)
だが、その大きな手がアーフェンの肉を抉る前に身体から切り落とされた。すぐさま反対の手も。首からは大量の血が噴出し始める。
倒れていく魔獣の後ろに立っていたのはローデシアンだった。
「団長……」
「すぐに調子に乗るのがお前の悪い癖だぞ。いつだって冷静さを欠くな。そこで止血していろ、私は他の団員の援護に回る」
刃に付いた血を振り払い、すぐに背を向けられる。
唇を噛んだ。敬愛するローデシアンに見捨てられたような気になってしまう。
(こんなんじゃ駄目だ……団長が頼ってくれる存在になるんだと頑張ったのに……)
結局足を引っ張ってしまった。
アーフェンは肉が抉られた足に目をやる。痛みはまだない。なんせ魔獣の爪に触れた場所が凍っているからだ。だがこれが溶け出したら大量の血が噴出し、猛烈な痛みがやってくるのは経験で知っている。そして回復が遅いことも。
「ベルマンさん、大丈夫ですかっ!」
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