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第二章 魔獣討伐
05.聖者の力2
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大丈夫か、だって? 見れば分かるだろう、平気なはずがない。なんせ骨が見えるほど肉を抉られたんだ、しばらく養生に励まなければならないだろう。
来るな!
そう言いたいのをグッと飲み込んだ。
せいぜい騎士団が命がけで戦っている様を見せつけてやろうと思ったのだ。
魔獣を倒して当たり前だと思っている神殿の面々にも、こんな風に身体を張っているのだとその目に焼き付けてやろう。痛みが生まれるまでは。
案の定、側に来た真柴は「ひぃっ!」と細い悲鳴を上げ、一定距離から近づけなくなった。
(そらみろ、お前の偽善なんて所詮その程度だ)
これが魔獣と戦うことなんだと突きつけて、それでどうしたいのか自分でも分からない。ただ真柴が自分から遠ざかるのを見て指さして笑ってやりたかった。所詮、聖者なんて役立たずなんだと。もっと騎士団を重用すべきだと。自分がまみえることのできない王族に真柴を通して訴えたい。
聖者を召喚したからといって騎士団を蔑ろにするな、と。
だというのに、真柴は怯えた顔をして両手を握り絞めると、ギュッと両目を閉じて神への祈りを捧げるような仕草をし始めた。
「助けてくださいっ!」
その時だ。
ふわりと真柴の胸元から光りの玉が生まれ、次第に膨らんで彼を包み込む。光の塊に取り込まれた真柴は目映くアーフェンは目を開けることもできない。
「うわっなんだこれは!」
両腕で視界に影を造り必死に薄目を開けようとするが、見えるのは目映いばかりの光に包まれた真柴の姿だけ。
光は次第に大きくなり、周囲一帯を包み込むとパァァァンとシャボン玉のように弾けた。光の雫がパラパラと落ち、馬やアーフェンの身体、それに地面に吸い込まれていく。
「なんだったんだ……今のは……」
これが聖者の力なのか。
ガクリと真柴の身体が崩れ落ちた。
「あぶないっ!」
慌てて立ち上がり腕を伸ばし真柴の身体を受け止めた。ひょろりとした身体は抱き上げればいつになく重い。
「あーあ、力を使ったんですね、聖者は」
馬車にいた神官の一人が下りてきた。意識を失ったように倒れアーフェンに抱き留められている様を見て嘆息し、「馬車に乗せてください」と素っ気ない一言を放つ。
なんだ、神殿の人間は。聖者を召喚できることでその地位を保てているのではないのか。
カッと怒りが湧きあがり、真柴を神官の腕に投げた。
「こっちは怪我をしてるんだ、運べるわけがないだろっ!」
「……どこをですか?」
どこって、こんなにもわかりやすいのになぜ気付かない! と怒鳴ろうと足を上げると、怪我などどこにも存在しなかった。破れた服から見えるのは、魔獣と遭遇する前と何一つ変わらない自分の足だ。小さな傷跡すらそのままの。
「え……?」
確かにそこを熊氷に抉られたはずだ。凍って感覚がなくなったが、確かに肉は削げ落ち骨が見えていた。これから大量に血が噴き出すだろうと止血のために縛った布が残っているのも、気味が悪かった。
「なんだ……これは……」
「それが聖者の力ですよ。治ってるんですから早く馬車に乗せてください」
再び真柴の身体をこちらに寄越された。アーフェンは腕の中に戻ってきたその顔をまじまじと見れば、唇の色は悪く眉間に皺を寄せて今にも吐きそうな表情だ。
(……何かに酔ったのか?)
もしかしたら、聖者の力を使うと一時的に酔った状態になるのかもしれない。
(それにしても凄い力だ……)
一瞬にして身体を回復させた。あのままだったら半年は現場復帰はできないかもしれない。いや、治るのに一年はかかるかも……。
「凄い……」
アーフェンは先に戻った神官の後を追い、真柴を馬車に突っ込んだ。
その間にわらわらと団員が戻り、周囲を見渡した。
「さっき、凄い光が出てましたけど、あれなんですか!」
皆一様に興奮している。
「木の枝に引っかかった怪我が治ってるんですよ!」
「それだけじゃない、熊氷が突然動きを止めたんだ、吐き出す息が白くなかった……」
「なんだって!」
そんなはずはない。熊氷の息は凄まじい冷気で、吹きかけられただけで凍ってしまうというのに。今の気温なら確実に息は白くなり周囲の空気を凍らすはずだ。
これもやはり……。
「聖者の力だ……あの光は聖者から出たんだ……」
ぼそりと呟いたアーフェンの言葉に団員は一瞬表情を失い、次の瞬間湧きあがった。
「本当ですか! だったらこれからの討伐に聖者を随行させれば俺たちは怪我をしないだけじゃなく魔獣の属性を無効化できるかも知れませんね!」
「そ……そうだな!」
魔獣の恐ろしさはその持って生まれた属性だ。
炎や水、岩や土、そして今回の氷といった様々な属性が人間を苦しめている。それらがなければ確かに戦うのが難しい相手ではない。しかも聖者の光を浴びれば動きが鈍るとなれば、足の速い魔獣だって倒すことが容易になる。
聖者が回復や魔獣の弱体化ができるなら、騎士団の存在意義はそのままだ。
(これから俺たちの活躍が注目されるぞ!)
なんせ先の城郭襲撃で騎士団は仕事をしていないと言われたばかりだ。これで面目躍如となるどころか、それ以上の評価を得られる。
「よし、お前ら! これからどんどん魔獣を討つぞ!」
発破を掛ければ興奮している団員はすぐさま拳を掲げた。
来るな!
そう言いたいのをグッと飲み込んだ。
せいぜい騎士団が命がけで戦っている様を見せつけてやろうと思ったのだ。
魔獣を倒して当たり前だと思っている神殿の面々にも、こんな風に身体を張っているのだとその目に焼き付けてやろう。痛みが生まれるまでは。
案の定、側に来た真柴は「ひぃっ!」と細い悲鳴を上げ、一定距離から近づけなくなった。
(そらみろ、お前の偽善なんて所詮その程度だ)
これが魔獣と戦うことなんだと突きつけて、それでどうしたいのか自分でも分からない。ただ真柴が自分から遠ざかるのを見て指さして笑ってやりたかった。所詮、聖者なんて役立たずなんだと。もっと騎士団を重用すべきだと。自分がまみえることのできない王族に真柴を通して訴えたい。
聖者を召喚したからといって騎士団を蔑ろにするな、と。
だというのに、真柴は怯えた顔をして両手を握り絞めると、ギュッと両目を閉じて神への祈りを捧げるような仕草をし始めた。
「助けてくださいっ!」
その時だ。
ふわりと真柴の胸元から光りの玉が生まれ、次第に膨らんで彼を包み込む。光の塊に取り込まれた真柴は目映くアーフェンは目を開けることもできない。
「うわっなんだこれは!」
両腕で視界に影を造り必死に薄目を開けようとするが、見えるのは目映いばかりの光に包まれた真柴の姿だけ。
光は次第に大きくなり、周囲一帯を包み込むとパァァァンとシャボン玉のように弾けた。光の雫がパラパラと落ち、馬やアーフェンの身体、それに地面に吸い込まれていく。
「なんだったんだ……今のは……」
これが聖者の力なのか。
ガクリと真柴の身体が崩れ落ちた。
「あぶないっ!」
慌てて立ち上がり腕を伸ばし真柴の身体を受け止めた。ひょろりとした身体は抱き上げればいつになく重い。
「あーあ、力を使ったんですね、聖者は」
馬車にいた神官の一人が下りてきた。意識を失ったように倒れアーフェンに抱き留められている様を見て嘆息し、「馬車に乗せてください」と素っ気ない一言を放つ。
なんだ、神殿の人間は。聖者を召喚できることでその地位を保てているのではないのか。
カッと怒りが湧きあがり、真柴を神官の腕に投げた。
「こっちは怪我をしてるんだ、運べるわけがないだろっ!」
「……どこをですか?」
どこって、こんなにもわかりやすいのになぜ気付かない! と怒鳴ろうと足を上げると、怪我などどこにも存在しなかった。破れた服から見えるのは、魔獣と遭遇する前と何一つ変わらない自分の足だ。小さな傷跡すらそのままの。
「え……?」
確かにそこを熊氷に抉られたはずだ。凍って感覚がなくなったが、確かに肉は削げ落ち骨が見えていた。これから大量に血が噴き出すだろうと止血のために縛った布が残っているのも、気味が悪かった。
「なんだ……これは……」
「それが聖者の力ですよ。治ってるんですから早く馬車に乗せてください」
再び真柴の身体をこちらに寄越された。アーフェンは腕の中に戻ってきたその顔をまじまじと見れば、唇の色は悪く眉間に皺を寄せて今にも吐きそうな表情だ。
(……何かに酔ったのか?)
もしかしたら、聖者の力を使うと一時的に酔った状態になるのかもしれない。
(それにしても凄い力だ……)
一瞬にして身体を回復させた。あのままだったら半年は現場復帰はできないかもしれない。いや、治るのに一年はかかるかも……。
「凄い……」
アーフェンは先に戻った神官の後を追い、真柴を馬車に突っ込んだ。
その間にわらわらと団員が戻り、周囲を見渡した。
「さっき、凄い光が出てましたけど、あれなんですか!」
皆一様に興奮している。
「木の枝に引っかかった怪我が治ってるんですよ!」
「それだけじゃない、熊氷が突然動きを止めたんだ、吐き出す息が白くなかった……」
「なんだって!」
そんなはずはない。熊氷の息は凄まじい冷気で、吹きかけられただけで凍ってしまうというのに。今の気温なら確実に息は白くなり周囲の空気を凍らすはずだ。
これもやはり……。
「聖者の力だ……あの光は聖者から出たんだ……」
ぼそりと呟いたアーフェンの言葉に団員は一瞬表情を失い、次の瞬間湧きあがった。
「本当ですか! だったらこれからの討伐に聖者を随行させれば俺たちは怪我をしないだけじゃなく魔獣の属性を無効化できるかも知れませんね!」
「そ……そうだな!」
魔獣の恐ろしさはその持って生まれた属性だ。
炎や水、岩や土、そして今回の氷といった様々な属性が人間を苦しめている。それらがなければ確かに戦うのが難しい相手ではない。しかも聖者の光を浴びれば動きが鈍るとなれば、足の速い魔獣だって倒すことが容易になる。
聖者が回復や魔獣の弱体化ができるなら、騎士団の存在意義はそのままだ。
(これから俺たちの活躍が注目されるぞ!)
なんせ先の城郭襲撃で騎士団は仕事をしていないと言われたばかりだ。これで面目躍如となるどころか、それ以上の評価を得られる。
「よし、お前ら! これからどんどん魔獣を討つぞ!」
発破を掛ければ興奮している団員はすぐさま拳を掲げた。
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