召喚された世界でも役立たずな僕の恋の話

椎名サクラ

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第七章 招かれざる訪問者

08.貴方の腕の中で3

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 アーフェンはそんな真柴の気持ちも知らぬまま汚れを掬い指に絡めると、その奥の秘かな蕾へと先を挿れた。

「いたいっ!」

 悲鳴が上がる。そこを弄られたことなんてない真柴はさすがに足をバタつかせた。

「すまない……だがここを許してくれ。お前と一つになりたいんだ、真柴」
「こ……わい、です……」
「本当にここを使ったことがないのか。嬉しいと言ったら困るか?」

 やはり、ずるい人だ。
 幸福を前面に押し出した笑みで訴えられたら拒みたいのに拒めなくなってしまう。これが惚れた弱みというものか。

「頼む、もう少しだけ……それでも嫌だったら止める」

 チュッと頬に、唇に口付けを落とされた。
 年下だというのに真柴よりもずっとしっかりしている彼が初めて見せる甘えた仕草にまたしても絆されてしまう。

 舌が唇をノックし、先を促してくる。僅かに開けばぬるりと潜り込み、またあの甘い痺れを起こさせるように絡めてきた。覚えたばかりの刺激はすぐに真柴を虜にする。舌を伸ばして自分から熱を貪りにいけば、愉悦を覚えたばかりで耐性のない身体はすぐにのめり込んでしまう。
 恥ずかしくてあまり口にできない分、好きだ好きだと舌を伸ばした。擦り合わせては噛まれてと甘い痺れに翻弄されていく。秘かな蕾に指が挿っている違和感すら忘れてしまうほど口付けにのめり込むと、ぬくっと指が動いた。

「ん!」

 怯めばこちらに集中しろと口付けが深くなる。囚われた舌を甘く噛まれ擽られるだけでなく、解放されても真柴の口内を蹂躙するかのようにどこもかしこも舌で擽られる。
 歯列を辿られた擽ったさ、肉の薄い頬の内側を擦られて生まれる甘さ。何よりも上顎を舌の先で舐められた時に湧きあがった痺れは大きく、真柴の身体を溶かしまたしても下腹部に熱を溜めていく。

 キスがこんなにもバリエーションに富んだものだったなんて……。真柴は戸惑いながらもすべてを甘受していくしかなかった。
 口付けに溶けている合間を縫って、秘かな蕾に潜り込んだ指が僅かに動く。違和感しかなかったはずなのに、痛みすら起こすのに、愉悦を大量に浴びせられながらまさぐられると、怖がっていたはずの行為に次第と馴れていく。

 痛みも違和感もそこにあるはずなのに、口付けに酔っている真柴は弛緩した身体をアーフェンへと委ねてしまうのだ。指が抜かれ、汚れを纏ってまた挿り塗り広げられるのを繰り返されると、ぬめりをまぶされた中はスムーズにアーフェンを受け挿れていく。

 徐々に身体が作り替えられていく。
 同時に恥ずかしいのに溺れてしまう感覚のむず痒さと求められる心地よさ、合わさった肌の温もりに酔っては、自分の中に生まれる様々な感情を処理しきれず沈んでいくのだ、愉悦の沼の中へ。

 きっと人は、その感覚に溺れのめり込むのだろう。
 恥ずかしい自分を晒しても受け入れてくれる相手に出会えた幸福を実感するために。
 今、真柴はどれだけ恥ずかしい様をアーフェンに見せても、彼から浴びせられるのは悦びと快楽と、愛情だけ。否定されることも笑われることも、ましてや罵声を浴びることもない。ただありのままの自分を露わにしては、喜ぶ彼を受け入れる甘さにまた酔うのだ。

 人がこの行為に溺れる理由を肌で感じ、真柴は身体を震わせた。
 抜いては挿れるだけだった指がある程度まで潜り込むと、アーフェンは指を動かし始めた。軽く振動を与え裡を解していく。その頃には痛みはないが、むず痒さが沸き起こる。僅かに腰を揺らめかせれば褒美とばかりにアーフェンの舌が真柴の覚えたての官能を引きずり出すように舐めてくる。

 少しずつ秘めた蕾への刺激に馴れていくと、アーフェンが指を僅かに折り曲げ中にある一点を押した。

「ひゃっ! ……えっなに?」

 あまりにもの衝撃に口付けを外して怯えを訴える真柴に、アーフェンは柔らかい笑みを湛えたままもう一度指を動かした。

「いやっ」
「ここがお前の感じる場所だ」
「うそ……あっやめて!」
「弄られたら出したくてたまんなくなるだろう、それでいいんだ。もっと感じてくれ」

 アーフェンがノックするようにそのポイントを指先で叩くたびに、僅かに力を持った真柴の分身が跳ね、そのたびに硬さを増していく。急激に押し上げられ、真柴は戸惑うしかなかった。

「ベルマンさん、ベルマンさんっ! やだそこ……変、変です!」

 今までアーフェンから与えられた愉悦とは確実に異なる明確な快楽に翻弄されていくのを止められず、怯えるしかなかった。

「怖がるな、真柴。男同士で一つになるにはここで感じることを覚えないと、お前が辛いんだ」
「そ……なんですか?」
「ああ、だから怯えるな。頼む」

 もう一度そこをノックされ、ビクリと身体が跳ねた。

「悦いようだな」

 ふわりと笑うとアーフェンは身体を起こし、ベッドの横にある小さなテーブルへと身体を伸ばした。ずっとそこに置いてあるが何に使うのかわからない小瓶を手に取ると、たっぷりと中身を掌に落とし指を濡らした。

「これは男同士が家族でい続けるために必要なものだ。だから怖がらないでくれ」

 とろりと粘度の高い液体と纏って指は再び秘かな蕾へと伸ばされ、窄んだ周囲をゆっくり撫でてから潜り込んできた。先程とは違い、突っかかりがない分すぐさまに深くまで挿っていく。

「あっ」
「痛くないようだな……良かった。もっと感じてくれ、俺の手で」

 ぐるりと中で動いてからまたあの場所をノックし始めた。

「だめっ……ああ、変っ……変になる!」
「それでいい。俺だけを感じていろ。お前を愛している俺のことだけを考えていてくれ」

 逼迫した声の中の甘さを汲み取り、真柴は再び心と身体を震わせ、アーフェンから与えられるすべてに翻弄された。ノックが抉るような動きに変わって指が抽挿を始める。それにすら心地よくて内腿を震わせ間にある頑強な身体を締め付けた。
 もう口付けで誤魔化さなくても明確にそこから湧きあがる愉悦は真柴を虜にする。
 この男同士で家族になることが異様ではない世界では、同性同士での交わりを助ける術が教えられているのかと訝しむくらい、アーフェンの手は的確に真柴を追い上げていく。

 三十代も後半で何度も遂情できない身体となったはずなのに……いや、それ以前にもう何年も快楽を忘れるくらいストレスで機能不全となっていたはずの分身が、はち切れんばかりに猛り、下腹に堆積した熱も出口を求めて暴れ回っては真柴から理性を奪っていく。
 見つけ出した愉悦の源を指で擦られ、アーフェンの下でひたすら身悶えるしかなかった。
 一度解放した分身も透明の蜜を幾度と零してはもう我慢できないと震えている。

「もぉ……達きたいっ」

 解放の瞬間を切望してアーフェンの空いている腕に縋り付いた。その手が真柴の頬を撫で無意識に浮かんだ汗を、涙を拭う。

「達っていい。好きなだけ達け」
「やだっ……も……一人で達くのは嫌ですっ!」

 これは二人で想いを交わす行為なのだから。
 あれほど痛みを感じていた場所ですら、アーフェンの優しさでこんなにも感じてしまうのだ。もっと確かな触れあいがその先にあり、真柴はその瞬間を欲した。
 もしかしたら……最後かもしれない。

 彼らの言葉を借りれば自分はもう命の灯火が潰えようとしている、らしい。実感はない、けれど納得する部分があった。
 深すぎる眠り。
 気怠い身体。
 どれほど食べても太らない肉体。
 病魔に冒された人と同じだ。

 あと一人救ったその瞬間、真柴は潰えるかもしれない。それでも成し遂げたい。同時にアーフェンの愛情をどこまでも貪りたい。理性と本能が鬩ぎ合い、どちらとも選ぶことができないまま両方を内包しようとしている。矛盾だらけの感情、けれどそれが真柴のすべてだ。
 頬に当たっているアーフェンの手を両手で包み、目を閉じてじっくりとその大きさと温かさを味わってから両手を伸ばした。見下ろす彼の身体が近づいてくる。逞しい首に両手を回して無骨な頬にまろみのない己の頬を擦り付けた。

「一人は、嫌です……今だけは一緒に……」

 自分だけが愉悦を追いかけて終わるのは嫌だ。
 もっと彼の愛情を感じていたい。感じて覚えて忘れないまま、全うするのだ、自分の使命を。

「バカッ煽るな……」
「煽られてください……好きです」

 アーフェンのように「愛してる」と伝えたくて、慣れない言葉が口を突くこともできず逃げるような単語を並べる。けれど、心は誰よりも愛しているこの人のすべてを感じたかった。

「……痛いかもしれないが、いいんだな」
「はい……」
「なるべく優しくする。だが、辛いなら言え。お前はいつも我慢してしまうから、本当に辛いときは口にしないから、なんでもいい、教えてくれ」

 その優しさが嬉しいのだと回した腕に力を込めた。
 指が抜かれ僅かにズボンをずらすと、すぐに硬く熱いものが宛がわれる。真柴は深く息を吐いてその瞬間を待ち受けた。できる限り身体から力を抜くが、長大なアーフェンの分身が塗り込められた液体のぬめりを借りて挿っただけで悲鳴を上げそうになるくらいの痛みが沸き起こった。

(声を出しちゃダメだ……弱音を吐いたらすぐに止められる)

 優しいアーフェンは己の欲望を堪えてしまうだろう。それがどれだけ辛いか、同じ男である真柴にはわかる。だからグッと奥歯を噛み締め、辛い表情を隠すように硬い肩に己の顔を押しつけた。

「止めるか……?」

 いやだ、このままひと思いに奥まで蹂躙してくれ。
 真柴は小さく首を横に振ると、無理矢理に大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出した。何度も、時間を掛けて。

「そうだ、そうやって力を抜くんだ。もう少しだけ挿れる、痛かったらすぐに言え」

 頷くが、決して言葉にするつもりはない。
 彼の臭いを肺いっぱいに吸い込んで次の衝撃に備える。
 奥へと進むたびに強張る身体にアーフェンも気付いているだろうに、真柴の気持ちを優先してくれるのがただただ嬉しかった。時間を掛けゆっくりと、時折その場所で僅かな抽挿を繰り返しながら、愛しい人の身体の一部が自分の中へと挿ってくる感覚をじっくりと味わった。

 ただ痛みに耐えるだけの行為になっても良い、彼を感じられるなら。
 そう覚悟をしていたはずなのに、先程まで執拗に弄られた一点を太い部分が押したその瞬間、真柴はアーフェンにしがみ付いたまま仰け反った。

「あっ!」

 痛みに力を弱めた分身がまた硬くなってアーフェンの下肢を叩いて跳ねる。

「ぐ……そんなに締め付けるな!」
「あ……あっ! やめっ、擦らないで!!」

 アーフェンが軽く真柴の身体を揺らすのでまたしてもそこが抉られ、強烈な快感がドクリと下腹部へと流れ込んできてはその中で暴れ回る。
 それだけじゃない。
 指では感じなかった痺れが背筋を駆け上がっていき身体を震わせる。

(なに、これ……さっきよりも、強いのがくるっ!)

 指とは比べものにならないくらい、分身で擦られると我慢できないほどの快楽が湧きあがり真柴を翻弄していった。知識も経験もないから理由なんてわからない。でも怖いのにもっと味わいたくなる。
 アーフェンもそんな真柴の感情を手に取るようにわかっているのか、そこばかりを執拗に太い部分で擦り続ける。

「やーっ! やめっ……ああ!」
「痛いんじゃないんだろ……くそ、そんなに締め付けたら我慢するのがやっとだ……ここをこうするのが気持ちいいのか?」
「いい……やだっやだ! いく、またいく!」
「一回達け……今お前を抱いて感じさせてるんだって教えてくれっ」

 アーフェンが腰を掴み抽挿を激しくした。浅い場所でのそれは、入り口ギリギリまで抜いては愉悦をもたらす一点を抉ってくる。そのたびに分身の先端が頑強な腹筋に擦られ、中との愉悦と相まってもう堪えることはできなかった。

「ひっ……ああ、も……でるっ!」

 身体を強張らせ、その瞬間を迎える。
 きつく抱きつき、腰を振ってアーフェンの腹に白濁を撒き散らす。
 まさか自分が中の刺激だけで遂情するとは思わなかった真柴が放心している間に、アーフェンが腕の力だけで痩身を抱き起こした。自分の膝に乗せまだ惚けた顔に口付けを落とす。

「嬉しいぞ……ありがとう、真柴。だが……もう少しだけ付き合ってくれ」

 ぼんやりとした頭ではアーフェンがなにを言っているのかわからない。乞われていることだけを認識し小さく頭を縦に振ると、逞しい彼へと身体を預けた。
 緩く身体が揺らされ少しずつ遂情の後の泥濘んだ秘かな蕾にアーフェンの長大な分身が挿っていくのを感じるがもう痛みはそこになく、中で得られる愉悦を覚えた真柴は緩く感じる場所を擦られるたびに小さく甘い声を上げ続けた。

 彼に身体を預けて感じるすべてが愛おしくて、逞しい腕に抱かれてただただ与えられる心地よく優しい快感を貪っていく。真柴の鼓膜を震わす荒い息すらそれを増幅させた。
 こんなみっともない身体にすら彼は悦んでくれているのがただただ嬉しかった。

「真柴……真柴っ…………愛しているんだ、お前だけを」

 切迫した想いが心地よくて、酩酊したように何度も頷いては彼の肌に顔を擦り付けた。

「ベルマンさん……ああまたっ……」
「だから締め付けるなって……お前が大事なんだ」

 大事にされてます、これ以上ないほど。わかっているから首に回したままの腕を放さずしがみ付いた。隙間なく合わさった肌から感じる彼のすべてを味わい尽くすように。

 緩やかな抽挿は真柴から甘い声が上がれば少しずつ加速し、今までずっと我慢し続けたアーフェンの限界が迫る頃には膝立ちになった彼が自ら腰を打ち付けてきた。深い場所まで潜り込んできた灼熱のような塊が真柴の中を穿っていく。けれど感じるのは愉悦と彼らしい真っ直ぐな愛情だ。
 真柴を愛していると身体でも訴え、ぶつけてくる。

(嬉しい……でもこの一夜だけかもしれない……)

 臆病だった自分が悔しい。
 卑屈だった自分が悲しい。
 もっと早くにアーフェンに己の気持ちをぶつけていたなら、もっと長い時間彼から愛されているのだと感じられただろう。けれど、どこまでも矮小になった心は己を晒し出すことができなかった。
 後悔しても、時間は戻ってこない。

(もっと、愛されたい……)

 初めて欲が真柴の中へと宿った。
 いつからか諦めるのが当たり前になり、自分の心にすら諦観をもって見つめるだけだった心が、諦めたくないと暴れ始める。
 それは恐ろしいほどに真柴を支配していく。
 言葉よりも視線よりも、こうして思いの丈をぶつけてくれるのが嬉しくて、このままずっと一緒にいたいと切望する一方で、このままじゃダメだと警鐘を鳴らす自分がいる。

 このままただアーフェンの傍にいるだけなら、真柴は卑屈なまま隣に立つことができなくて一歩も二歩も下がって着いていくだけになる。家族という対等な立場でなく、今と変わらない居候のままだ。おんぶに抱っこで情けない自分をいつ彼が空くのかと怯える日々をきっと過ごすのだ。
 そんな未来を望んでいるわけではない。
 アーフェンとともに歩ける自分でありたいんだ。
 逼迫した声が荒々しくなるにつれ、真柴の決意は固くなる。

(貴方の傍にいられる僕にならなくちゃ……)

 耳に吹きかけられる熱い吐息がグッと途切れ、強く腰を押しつけられた。

「うっ……」
「あ……」

 熱い飛沫が迸るのを感じてまた胸が熱くなった。
 嬉しい。
 こんな自分にこれほどまで熱い想いをぶつけてくれたのが。
 嬉しくて嬉しくて、溢れる涙をこっそりとアーフェンの肩で拭った。
 幸せだ。

 だからこそ、前を向いて抱いた信念を貫かないと。アーフェンに貰った勇気を抱えて、そして再びここに戻ってこないと。帰ってきたら今度こそ、家族になるんだ。そして彼に「愛している」と言える自分に。
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