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水無杏里の物語(第26話)
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「まあ、我らが魔女殿は好奇心旺盛なお方だからなぁ、やっぱり試してみたんだな、箒跨ぎ」
にやにやと笑いながら、煙草片手にモリガンをからかう楓。
「そ、そんなことは・・・今はどうでもいいじゃろが!!」
ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向く魔女殿。まだまだ年齢相応の振る舞いが目立つところは、まあご愛嬌といったところだろう。
「そのうち、箒で空を飛ぶ勇姿を見せておくれよ、モリガン」
「ええい、やめんか!!」
モリガンをこれ以上からかって怒らせるとろくなことにならないと思ったのか、楓は今度はカイトに話しかけてきた。
「さて、カイト。君を呼んだのは他でもない・・・ちょっとばかし、最近の天空世界の近隣領域で気になることがあるものでね・・・」
煙草をふかしながら、カイトの向かい側の席に座る楓。ラフなシャツとジーンズ姿で、こうして改めて見てみると、美人ではあるのだが、あまり身なりに気を使うタイプではないようだ。燃えるような赤い髪は、彼女の左目を隠しており、右目だけを見れば、エメラルドのような深緑ーなかなか魅力的な容貌をしている。
「みんな、お茶が入ったわよ」
いつの間にか、杏里が紅茶とシフォンケーキを運んできていた。さっきまで部屋のカーテンを開けていたはずだが、どうやら、楓が部屋に入ると同時にキッチンへ向かい、紅茶などを用意していたようだ。ホルルがホーホウと、何か言いたげな声で鳴いていたが、楓は何も気にした様子はなかった。
家主の楓がやらず、楓が居間に入ってから自身も客なはずの杏里が用意する辺りが、彼女たちの今までの関係性をよく表していると言えるだろう。毎度のことながら、ホルルも呆れ気味である。
「ありがとう、杏里」
「わしもありがたくいただくぞ」
「さて、お茶も入ったところで・・・」
楓が、先ほどの話の続きを始めた。
「カイト、君は確か、この付近に不時着したんだよな・・・杏里からの話だと、他の飛空鎧にやられたそうじゃないか・・・?」
「ええ、そうです」
カイトは、この浮遊大陸に墜ちてくる直前まで戦っていた相手のことを思い出し、悔しさに顔を歪めながら、
「あいつは・・・今まで戦ってきた中でも最も強いやつでした。僕のほか、先輩2人と一緒に戦ったのですが、全く歯が立たなかったというのが正直なところです」
思わず、握りしめた拳に力が入る・・・3人掛かりで戦ったというのに、ああもあっさりと負けてしまうとは・・・。
カイトは、まだ若いがこれでも数多くの空での戦闘経験がある。害蟲や、敵対する空賊などの飛空鎧とは何度もことを構えてきた。それでも全く歯が立たなかったのである。
「おそらく先輩たちはうまく逃げたようですけど、僕だけが間に合わずにこの付近に墜ちてしまった・・・すいません、この付近に不時着してしまって・・・まさか、この辺りに人が住んでいるとは思ってなかったので」
カイトの謝罪に対し、楓は特に気にした様子でもなく、軽く右手を振りながら、
「ああ、いいよ別に。この家に被害さえなければどこに墜ちようが君の自由だ」
・・・前に、杏里から聞いた通りの人物だった。基本的に、自分の城さえ無事ならばあとはどうでもいいらしい。
だが、そんな周囲のことに無関心人間が、なんで空の戦いなんかに興味を持つのだろうか?
「カイト・・・ああ、まあ落ち着いて聞いてくれ」
ふいに、楓が口調を変える。何か、言い出しにくそうなものを抱えたような・・・そんな雰囲気だった。一度、煙草の煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出しながら、楓はカイトに残酷な事実を告げた。
「君の二人の先輩だが、おそらく、完全に墜とされた・・・そいつに」
楓の言葉に、一瞬何を言われたのかよくわからなかったカイトだったが、その言葉の意味することをようやく理解し、
「え・・・」
絶句したー。
にやにやと笑いながら、煙草片手にモリガンをからかう楓。
「そ、そんなことは・・・今はどうでもいいじゃろが!!」
ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向く魔女殿。まだまだ年齢相応の振る舞いが目立つところは、まあご愛嬌といったところだろう。
「そのうち、箒で空を飛ぶ勇姿を見せておくれよ、モリガン」
「ええい、やめんか!!」
モリガンをこれ以上からかって怒らせるとろくなことにならないと思ったのか、楓は今度はカイトに話しかけてきた。
「さて、カイト。君を呼んだのは他でもない・・・ちょっとばかし、最近の天空世界の近隣領域で気になることがあるものでね・・・」
煙草をふかしながら、カイトの向かい側の席に座る楓。ラフなシャツとジーンズ姿で、こうして改めて見てみると、美人ではあるのだが、あまり身なりに気を使うタイプではないようだ。燃えるような赤い髪は、彼女の左目を隠しており、右目だけを見れば、エメラルドのような深緑ーなかなか魅力的な容貌をしている。
「みんな、お茶が入ったわよ」
いつの間にか、杏里が紅茶とシフォンケーキを運んできていた。さっきまで部屋のカーテンを開けていたはずだが、どうやら、楓が部屋に入ると同時にキッチンへ向かい、紅茶などを用意していたようだ。ホルルがホーホウと、何か言いたげな声で鳴いていたが、楓は何も気にした様子はなかった。
家主の楓がやらず、楓が居間に入ってから自身も客なはずの杏里が用意する辺りが、彼女たちの今までの関係性をよく表していると言えるだろう。毎度のことながら、ホルルも呆れ気味である。
「ありがとう、杏里」
「わしもありがたくいただくぞ」
「さて、お茶も入ったところで・・・」
楓が、先ほどの話の続きを始めた。
「カイト、君は確か、この付近に不時着したんだよな・・・杏里からの話だと、他の飛空鎧にやられたそうじゃないか・・・?」
「ええ、そうです」
カイトは、この浮遊大陸に墜ちてくる直前まで戦っていた相手のことを思い出し、悔しさに顔を歪めながら、
「あいつは・・・今まで戦ってきた中でも最も強いやつでした。僕のほか、先輩2人と一緒に戦ったのですが、全く歯が立たなかったというのが正直なところです」
思わず、握りしめた拳に力が入る・・・3人掛かりで戦ったというのに、ああもあっさりと負けてしまうとは・・・。
カイトは、まだ若いがこれでも数多くの空での戦闘経験がある。害蟲や、敵対する空賊などの飛空鎧とは何度もことを構えてきた。それでも全く歯が立たなかったのである。
「おそらく先輩たちはうまく逃げたようですけど、僕だけが間に合わずにこの付近に墜ちてしまった・・・すいません、この付近に不時着してしまって・・・まさか、この辺りに人が住んでいるとは思ってなかったので」
カイトの謝罪に対し、楓は特に気にした様子でもなく、軽く右手を振りながら、
「ああ、いいよ別に。この家に被害さえなければどこに墜ちようが君の自由だ」
・・・前に、杏里から聞いた通りの人物だった。基本的に、自分の城さえ無事ならばあとはどうでもいいらしい。
だが、そんな周囲のことに無関心人間が、なんで空の戦いなんかに興味を持つのだろうか?
「カイト・・・ああ、まあ落ち着いて聞いてくれ」
ふいに、楓が口調を変える。何か、言い出しにくそうなものを抱えたような・・・そんな雰囲気だった。一度、煙草の煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出しながら、楓はカイトに残酷な事実を告げた。
「君の二人の先輩だが、おそらく、完全に墜とされた・・・そいつに」
楓の言葉に、一瞬何を言われたのかよくわからなかったカイトだったが、その言葉の意味することをようやく理解し、
「え・・・」
絶句したー。
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