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7 シャロウン兄妹
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沈黙が痛いですわ。
だ~れも、ええ、誰一人として声を出しませんわ。
食堂にいらっしゃる皆様は、ひとり残らずわたくしとシャロウン男爵子息の一挙一動を注視しておりますわ。
「わたくし、知り合いの方々としか席は共にしたくないんですの。ごめんあそばせ」
これで、伝わりましたかしら?
「ご令嬢とは挨拶を交わしましたから、もう知り合いですね。ということは、一緒に食事をしていただけるんですねっ?」
かなり直接的な表現で、お断りの返事をしたはずですのに……呆れが過ぎて、もうため息も出てきませんわ……。
「これほど言っても通じないなんて……あなた様はずいぶんと、のんびりした方ですのね」
「のんびり? いえ、私は剣の指南役から俊敏性を褒められるほど」
「もう結構ですわ」
頭痛がしますわ。
一秒でも早く、この方から離れたいですわ。
「あなた様とわたくしでは、『知り合い』の定義が異なる――つまりは、価値観が全く違うようですわね」
日本からはるばるやってきた美しい扇子を取り出し、口元で広げましたわ。
同じ空気も吸いたくございませんもの。
「はっきり申し上げますと、わたくしとあなた様は相容れぬ存在――水と油なのですわ。住む世界が違いますの」
「ひどいです!」
不意に、ちょうど食堂に入ってきたどなたかが割り込んでいらっしゃいました。
「お兄ちゃんをいじめないでください!」
食堂を、失笑が満たしましたわ。
いくらなんでも、「お兄ちゃん」はないですわね、兄様ならまだよろしいですけれども。
これは貴族令嬢として、いかがなものでしょう?
「ごきげんよう、シャロウン男爵令嬢。初めてお目にかかります、アリアンヌ=マルゼリアスティーナ・ド・ギーズと申しますわ。以後、お見知り置きくださいまし」
「アリアンヌ様……尊敬していたのに、こんな身分を笠に着るような人だったとは思いもしませんでした!」
挨拶も返せないだなんて……兄妹揃って、嘆かわしいですわね。
それに、身分を笠に着るだなんて……。
「事実を、述べたまでですわ」
「嘘です! 身分を盾にしてるじゃないですか!」
「……そんなこと……わたくし、しておりませんわ……」
身に覚えがないことばかり責め立てられて、なかなか言葉も出てきませんわ。
「さっきだって、わたしのこと、『男爵令嬢』だって言ったじゃないですか!」
「それは事実ですし、礼儀として当たりま」
「公爵令嬢公爵令嬢って、そんな公爵令嬢が偉いんですか?!」
ですから、落ち着いて話を聞いてくださいませ。
まあ、こんな状態のシャロウン男爵令嬢に何を言ったところで……焼け石に水、ですわね。
かなり一途な考えをお持ちの方のようですので。
「アリア」
あえて、そちらをなるべく見ないようにしておりましたのに。
「邪魔だ、どいてくれないか」
邪魔……やはり、そうですのね。
彼の冷たい表情に、わたくしは扇子の裏側で哀しみを押し殺して穏やかに笑みを浮かべましたわ。
「御心に気付けなかったこと、お詫び申し上げます」
通路の端によると、ラファエル王太子殿下がシャロウン男爵令嬢の肩に手を添えている様子が目に入りましたわ。
「さ、行こう」
「はい、殿下ぁ」
殿下はわたくしには見せてくださらなかった温かい表情を浮かべ、ご令嬢を連れて奥の方の席へと歩いていってしまわれました。
わたくしの前を通る際、シャロウン男爵令嬢が一瞬皮肉げな――嘲るような笑みと眼差しを向けてきた気がいたしましたわ。
ですが、殿下がおそばに置くような方がそんなひどい性格をお持ちになっているはずがございませんもの。
きっと、見間違えだったのでしょう。
しばらくぼんやりとその後姿を眺めておりましたが、ふと視界が揺れてきていることに気がつき、慌てて逃げるように食堂を後にいたしました。
だ~れも、ええ、誰一人として声を出しませんわ。
食堂にいらっしゃる皆様は、ひとり残らずわたくしとシャロウン男爵子息の一挙一動を注視しておりますわ。
「わたくし、知り合いの方々としか席は共にしたくないんですの。ごめんあそばせ」
これで、伝わりましたかしら?
「ご令嬢とは挨拶を交わしましたから、もう知り合いですね。ということは、一緒に食事をしていただけるんですねっ?」
かなり直接的な表現で、お断りの返事をしたはずですのに……呆れが過ぎて、もうため息も出てきませんわ……。
「これほど言っても通じないなんて……あなた様はずいぶんと、のんびりした方ですのね」
「のんびり? いえ、私は剣の指南役から俊敏性を褒められるほど」
「もう結構ですわ」
頭痛がしますわ。
一秒でも早く、この方から離れたいですわ。
「あなた様とわたくしでは、『知り合い』の定義が異なる――つまりは、価値観が全く違うようですわね」
日本からはるばるやってきた美しい扇子を取り出し、口元で広げましたわ。
同じ空気も吸いたくございませんもの。
「はっきり申し上げますと、わたくしとあなた様は相容れぬ存在――水と油なのですわ。住む世界が違いますの」
「ひどいです!」
不意に、ちょうど食堂に入ってきたどなたかが割り込んでいらっしゃいました。
「お兄ちゃんをいじめないでください!」
食堂を、失笑が満たしましたわ。
いくらなんでも、「お兄ちゃん」はないですわね、兄様ならまだよろしいですけれども。
これは貴族令嬢として、いかがなものでしょう?
「ごきげんよう、シャロウン男爵令嬢。初めてお目にかかります、アリアンヌ=マルゼリアスティーナ・ド・ギーズと申しますわ。以後、お見知り置きくださいまし」
「アリアンヌ様……尊敬していたのに、こんな身分を笠に着るような人だったとは思いもしませんでした!」
挨拶も返せないだなんて……兄妹揃って、嘆かわしいですわね。
それに、身分を笠に着るだなんて……。
「事実を、述べたまでですわ」
「嘘です! 身分を盾にしてるじゃないですか!」
「……そんなこと……わたくし、しておりませんわ……」
身に覚えがないことばかり責め立てられて、なかなか言葉も出てきませんわ。
「さっきだって、わたしのこと、『男爵令嬢』だって言ったじゃないですか!」
「それは事実ですし、礼儀として当たりま」
「公爵令嬢公爵令嬢って、そんな公爵令嬢が偉いんですか?!」
ですから、落ち着いて話を聞いてくださいませ。
まあ、こんな状態のシャロウン男爵令嬢に何を言ったところで……焼け石に水、ですわね。
かなり一途な考えをお持ちの方のようですので。
「アリア」
あえて、そちらをなるべく見ないようにしておりましたのに。
「邪魔だ、どいてくれないか」
邪魔……やはり、そうですのね。
彼の冷たい表情に、わたくしは扇子の裏側で哀しみを押し殺して穏やかに笑みを浮かべましたわ。
「御心に気付けなかったこと、お詫び申し上げます」
通路の端によると、ラファエル王太子殿下がシャロウン男爵令嬢の肩に手を添えている様子が目に入りましたわ。
「さ、行こう」
「はい、殿下ぁ」
殿下はわたくしには見せてくださらなかった温かい表情を浮かべ、ご令嬢を連れて奥の方の席へと歩いていってしまわれました。
わたくしの前を通る際、シャロウン男爵令嬢が一瞬皮肉げな――嘲るような笑みと眼差しを向けてきた気がいたしましたわ。
ですが、殿下がおそばに置くような方がそんなひどい性格をお持ちになっているはずがございませんもの。
きっと、見間違えだったのでしょう。
しばらくぼんやりとその後姿を眺めておりましたが、ふと視界が揺れてきていることに気がつき、慌てて逃げるように食堂を後にいたしました。
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