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6 貴族令嬢の矜持
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ラフィ殿下の腕にしがみついていた、まるで小動物のように愛らしく、可憐なご令嬢――クロエ=キミネッテ・ド・シャロウン様。
ラフィ殿下――いえ、もう未練たらしく愛称で呼ぶのはやめましょう。
距離を置かなければ、もっと苦しくなるだけですわ。
人間、時には諦めも大事なのですわ。
ましてやわたくしは貴族令嬢、己の心など二の次でございますもの。
ラファエル王太子殿下の愛するお方が、シャロウン男爵令嬢なのでしょう。
些事だと思い気にも留めておりませんでしたが、クレーム・ブリュレの待ち時間に「きみ」について唐突に話し始めたあの時。
窓の外には、シャロウン家の馬車がございましたわ。
目には入りませんでしたが、おそらく馬車の近くにシャロウン男爵令嬢もいらっしゃったのでしょう。
今朝、挨拶を交わした際も、おそらく視線の先――わたくしの後ろに、シャロウン男爵令嬢がいらっしゃったのですわね。
それから、「きみ」という言葉。
あれは、卵の黄身ではなく、キミ――シャロウン男爵令嬢のセカンドネームの愛称だったのですわ。
愛称を呼ぶということは、たとえファーストネームであっても親密な仲であるということ。
つまり、その愛称がファーストネームどころかセカンドネームであるということは――まあ、そういうことですわね……。
「こんにちは、ギーズ公爵令嬢」
一人食堂の扉をくぐりますと、とあるご令息がお声掛けくださいましたの。
色々と複雑な心情ではありますけれども、私は高位貴族の令嬢ですわ。
誇り高く、そして、謙虚に美しく。
「ごきげんよう、シャロウン男爵子息。初めてお目にかかります、アリアンヌ=マルゼリアスティーナ・ド・ギーズと申しますわ。以後、お見知り置きくださいまし」
シャロウン男爵令嬢のお兄様だけあって、筋肉が付きにくいのでしょうか。
騎士を目指して鍛錬を積んでいらっしゃるそうですが、線が細く、どこか儚い雰囲気のお方ですわ。
「見たところ、お一人のご様子。よろしければ、私とともに食事をしませんか」
ひく、とこめかみが引き攣りましたわ。
ひどい侮辱……わたくしをとことんまで軽視していることがよくよくわかりましたわ。
「シャロウン男爵子息はとてもはっきりとした方でいらっしゃいますのね。わたくしはお魚や小鳥ではございませんし、無邪気な幼子でもございませんわ」
要するに、そんなホイホイつられはいたしませんわ、ということですわね。
わたくしにも矜持というものはございますもの。
婚約者でも家族でもないお方――それも、身分を無視した行動を平気で行うような方とは、何の理由もなく相席するなどという事はしたくないのですわ。
必要に迫られ、やむにやまれぬ事情であるならばそういたしますが……ねぇ?
「そんなことはご令嬢を見ればわかりますよ。それで、そうなんです? 一人では寂しくないですか?」
・・・これっぽっちも嫌味が通じていらっしゃらない、ですって?!
それに、もう婉曲にではございますがお断りの返事はいたしましたわ。
貴族たるもの、これくらいはわからなくてはなりませんのに。
最低ラインですわよ……あのシャロウン家も地に落ちてしまいましたのね、嘆かわしいこと……。
ラフィ殿下――いえ、もう未練たらしく愛称で呼ぶのはやめましょう。
距離を置かなければ、もっと苦しくなるだけですわ。
人間、時には諦めも大事なのですわ。
ましてやわたくしは貴族令嬢、己の心など二の次でございますもの。
ラファエル王太子殿下の愛するお方が、シャロウン男爵令嬢なのでしょう。
些事だと思い気にも留めておりませんでしたが、クレーム・ブリュレの待ち時間に「きみ」について唐突に話し始めたあの時。
窓の外には、シャロウン家の馬車がございましたわ。
目には入りませんでしたが、おそらく馬車の近くにシャロウン男爵令嬢もいらっしゃったのでしょう。
今朝、挨拶を交わした際も、おそらく視線の先――わたくしの後ろに、シャロウン男爵令嬢がいらっしゃったのですわね。
それから、「きみ」という言葉。
あれは、卵の黄身ではなく、キミ――シャロウン男爵令嬢のセカンドネームの愛称だったのですわ。
愛称を呼ぶということは、たとえファーストネームであっても親密な仲であるということ。
つまり、その愛称がファーストネームどころかセカンドネームであるということは――まあ、そういうことですわね……。
「こんにちは、ギーズ公爵令嬢」
一人食堂の扉をくぐりますと、とあるご令息がお声掛けくださいましたの。
色々と複雑な心情ではありますけれども、私は高位貴族の令嬢ですわ。
誇り高く、そして、謙虚に美しく。
「ごきげんよう、シャロウン男爵子息。初めてお目にかかります、アリアンヌ=マルゼリアスティーナ・ド・ギーズと申しますわ。以後、お見知り置きくださいまし」
シャロウン男爵令嬢のお兄様だけあって、筋肉が付きにくいのでしょうか。
騎士を目指して鍛錬を積んでいらっしゃるそうですが、線が細く、どこか儚い雰囲気のお方ですわ。
「見たところ、お一人のご様子。よろしければ、私とともに食事をしませんか」
ひく、とこめかみが引き攣りましたわ。
ひどい侮辱……わたくしをとことんまで軽視していることがよくよくわかりましたわ。
「シャロウン男爵子息はとてもはっきりとした方でいらっしゃいますのね。わたくしはお魚や小鳥ではございませんし、無邪気な幼子でもございませんわ」
要するに、そんなホイホイつられはいたしませんわ、ということですわね。
わたくしにも矜持というものはございますもの。
婚約者でも家族でもないお方――それも、身分を無視した行動を平気で行うような方とは、何の理由もなく相席するなどという事はしたくないのですわ。
必要に迫られ、やむにやまれぬ事情であるならばそういたしますが……ねぇ?
「そんなことはご令嬢を見ればわかりますよ。それで、そうなんです? 一人では寂しくないですか?」
・・・これっぽっちも嫌味が通じていらっしゃらない、ですって?!
それに、もう婉曲にではございますがお断りの返事はいたしましたわ。
貴族たるもの、これくらいはわからなくてはなりませんのに。
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