「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

間瀬

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8 レア=怖い子の公式ができた瞬間

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 一睡もできませんでしたわ。
 徹夜……結果としてそうなってしまいましたわね、眠すぎますわぁ……。

「お嬢様おはようご――もう起きてたんですか?」

 ちょうど伸びをしていたところに、レアが入ってきましたわ。

「あ、ええ、少々」
「あれ、その顔、寝てませんよね?」

 ギクリ、ですわ。

「な、なんのことですの?」

 自分で言っておきながら、説得力皆無ですわね。
 視線が泳いでおりますもの。
 ですが仕方がないのです、一度気を抜いた相手には警戒しようとしてもできないのですもの。

「寝不足で顔色悪いですし、なんて言うんでしょう、気だるげな色気? がただよってて、あ、寝不足だ~ってわかるんですよ」

 この方、どんどん遠慮がなくなってきていらっしゃるような気がいたしますわ。

「セリーヌが専属だった頃からずっと、入眠まで三秒もかからなかったのに、今日に限って寝られなかっただなんて……なにか、あったんですか?」

 ベッドの脇に膝をつき真っ直ぐな目で見上げてくるレアに、思わず口が動いておりましたわ。

「愛が……ない、のですわ……」
「……は?」

 唖然とした顔の彼女に、ゆったりと微笑んで、告げましたの。
 およそその表情に合わない内容を。

「ラファエル王太子殿下には、愛するお方がいらっしゃるのですわ」
「……」

 沈黙――まあ、そうなりますわよね。
 昨日までラファエル王太子殿下のことできゃあきゃあ言ってはしゃいでいたのですもの。

「申し訳ございません、わたしもそろそろ耳が遠くなって耄碌してきたのかもしれません」

 あ、そちらに現実逃避いたしますのね。
 耳が遠くなっただとか耄碌しただとか、まだ十代なのですから無理がありすぎではないですこと。
 仕方がないですわね、もう一度教えて差し上げましょう。

「ラファエル王太子殿下には、愛するお方がいらっしゃるのですわ」
「……ぁあ?」

 ヒィヤァァァァァァ!
 ち、地を這うような低い声……初めて、聞きましたわ……。
 威圧感……怖い、恐すぎる、ですわ……。

「レア、意外とガラが悪いのですわね……」
「猫かぶってますから」

 あら、さらっとそれを言ってしまうのですわね。

「それで、そんなことをお嬢様に吹き込んだのはどこのトチ狂ったガキ――コホン、人間ですか?」

 もうガラの悪さを隠そうともしないのですわね。
 まあ、信頼されていると受け取ればなんてことないのですわ。

「吹き込まれたのではなく、直接その現場を見たのですわ」
「……ラファエル、殺す」

 またそんな低い声を――って、い、いくらなんでもそれは言ってはなりませんわ。
 王族を呼び捨てにするのも、殺人予告するのも、バレたら終身強制労働か死罪ですわよ!

「失礼しました。では、なにがあったのか教えてください――洗いざらい、吐いてください」
「……わかりましたわ……」

 ガラが悪すぎますわ……。
 一部始終、包み隠さず教えたところ……とても低い声で悪態をついておりましたわ……。
 ところどころわからない言葉があったのは、きっと、下町の言葉が混じっていたからですわね。
 レア、怖い子ですわ……。
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