「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

間瀬

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9 人生相談 à お父様

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 今日は中等学園をお休みすることにいたしましたわ。
 怖い子判定された侍女の諫言かんげんですわ。
 わたくしの心の内を察してくださるだなんて、さすが我がギーズ家の精鋭侍女としか言いようがございませんわ!
 レアから報告を受けたお父様がお話をしたいとおっしゃったので、現在、人生相談という名の尋問を行っておりますわ。

「で、そんなひどいことをされたアリアはどうしたいんだい?」

 正直、そこが定まっていないのですわ。

「まだ何とも言えませんわね……。お二人がどうなさりたいのか、ギーズ家にどのような利害を与えるのか、確認してみてから今一度お話いたしますわ」
「損得なんかはどうでもいい。アリアがいやなら、すぐにでも陛下の執務室に乗り込んで直談判してくるが」
「お父様……」

 呆れてしまいますわ。
 ギーズ公爵家当主たるものが、目先のこと娘のしあわせに囚われてばかりでは、すぐに没落してしまうんではなくて。

「それとも、シャロウン家を直接没落させるほうがいいかい? 幸いにも既に没落仕掛けている男爵家、それも大きな反発のなかで叙爵された外国貴族だから、一週間もかからないよ」
「やめてくださいませっ」

 なんてことをおっしゃるのです、お父様……。

「冗談だよ、冗談」

 相変わらずこの方は……言うだけ無駄ですわね。
 騎士としてお忙しくしていらっしゃるので今は不在のセドお兄様が、以前、「アリア、気をつけるんだ。父上は『親バカ』という人種なのだ」とおっしゃっておりましたもの。

「それで、正直なところ、アリア自身はどうしたいんだい?」
「ラファエル王太子殿下をしあわせにして差し上げるのですわ」
「相変わらず殿下が大好きすぎる、我が愛しの娘……不憫だ……健気で素直……」

 嘘くさいですわね。
 大仰でいかにもお芝居ですといった、大根役者も真っ青どころか真っ白なお言葉ですわ。

「明日はきちんと中等学園に参りますので、その際、お二人を見極めてまいりますわ」
「……あー、その、なんだ、まあ、頑張れ」
「はい」

 歯切れが悪いですわね。
 我が家の当主ならば、そんな情けない声も自信なさげな態度もなさらないでくださいましっ。
 まあ、今はわたくししかいませんし、特別に許して差し上げますわ。

「そうだ、久しぶりにボードゲームをしようか」

 いつも唐突ですわね。

「受けて立ちますわ」
「いや、なにもそんな喧嘩腰にならなくても……」
「貴族たるもの、いつでも戦場と思わなくてはなりませんわ」

 情けないですわね、お父様。
 もっとシャキッとしてくださいまし。

「それで、なにをいたしますの? バックギャモンですの? それとも、チェスですの?」
「チェスはここ最近飽きるほどやった。流行だから、そこかしこの貴族がこぞってやってるんだ」
「では鵞鳥ガチョウのゲームをいたしましょう」
「なぜそこで選択肢になかったものを……」

 あら、頭を使うゲームをしたくないのではなくて?
 それに、わたくしは曲者ですもの、そんな単純なことをするわけがございませんわ。

 お父様より格段に運の良いわたくしは、当然のごとく勝利いたしましたわ。
 爽快ですわねぇ、胸がすきますわぁ……。
 わたくしの八つ当たりの標的にされてボロ負けだなんて――ご愁傷さまですわね、お父様。
 オーホッホッホ!
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