「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

間瀬

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10 遅刻ですわ!

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 あぁ、朝日の眩しいこの時間帯、澄み切ったこの空気、全てが美味しいですわぁ!

「お嬢様、遅刻しますよ」
「い、行ってまいりますわっ」

 お説教が続きそうでしたもの、逃げるが勝ち、ですわ。
 実は、徹夜がたたったのか、今朝も大寝坊してしまいましたの。
 馬車ではとても間に合いそうもない時間でしたので、頼みの綱、愛馬のロマンとともに駆歩ガロップで向かうことにいたしますわ。
 遅刻だけはダメですもの、なりふりかまってなどいられませんわ。
 学園の門が見えてきましたわ。
 さあ、大きくすうっと息を吸うのですわ。
 予鈴の音になど負けていられませんもの!

「門――まだ――閉じないでくださいまし!」
「あぁ?! って、おい、どこぞのご令嬢が馬で通学してきたぞぉ!」
「何だって?! 遅刻間際だ、早く開けてやれっ!」
「てか、ご令嬢が馬で通学するって見たことないんだけど!」

 騒々しいですわね、朝から元気すぎませんこと?

「ありがとう存じますわっ!」
「はぁ?! ちょ、ギーズ公爵令嬢が馬?!」

 誤解を生むような言い方はやめてくださいまし、わたくしはれっきとした人間ですわ。
 ふうっ、到着、ですわ……!
 片足を大きく振ってとんっと軽く飛び降り、以心伝心のロマンを最高速度で厩舎に繋いでまいりましたわ。
 厩舎から出ますと――先ほど門を開けてくださった親切な方々が、まだいらっしゃいますわね?!

「皆様、遅刻しますわよ! 走ってくださいまし!」

 なにをぐずぐずしていらっしゃるのです、遅刻まであと三分ですわよ!
 ギリギリですわ。

「お先に失礼いたしますわ!」

 猛ダッシュ、ですわ!
 親切な方々を取り残して独走いたしますわ!

「アリアンヌ様!」
「シャロウン男爵令嬢――ごきげんようおどきになって――邪魔ですわ――遅刻ですわ!」
「ふえぁ?!」

 ビュンッと走り抜けますわ。

「うそ……あのアリアンヌ様が……走って……」

 なにを当たり前のことを言っていらっしゃるの?
 ――って、へたりこんでいてはダメではありませんの、遅刻してしまいますわっ。
 Uターンですわ!

「失礼いたしますわっ」

 シャロウン男爵令嬢の手をつかみ――やや荒い手つきになってしまったのは許してくださいまし――再びのUターンですわ。

「んにゃ~っ!?」

 その悲鳴――シャロウン男爵令嬢、実は猫でしたの?!
 シャロウン男爵令嬢のクラスに到着いたしましたので、すかさず押し込みますわっ。

「シャロウン男爵令嬢、わたくしが遅刻してもあなた様のせいではございませんから、責任を――感じないでくださいませっ!」

 鳴り始めた鐘の音の中、わたくしは走り出しましたわ。
 そして、鳴り終わった直後にめでたく教室に滑り込み、遅刻判定を受け――そうになりましたが、日頃の行いがどうこうというので罰則だけで済みましたわ。
 持つべきは運と努力と才能と実力、それから、教師の方々からの評価ですわ。
 オーホッホッホッ!
 どうやらシャロウン男爵令嬢も、無事間に合ったようですので――まあ、終わり良ければ全て良し、ですわね?
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