王族に転生した俺は堕落する

カグヤ

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第55話 裏切り

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 BBQが終わり、片付けも終えて、椅子に座って焚火を見つめて、まったりしていると、青髪のリーズさんに呼びかけられた。

 「ジークフリート様、ちょっといいですか?」

 これは、まさか、いきなりのあれですか? ドキがムネムネしてきましたぞ。一泊移住最大のイベントがやってきましたか。

 「大丈夫ですよ。どうしましたか?」
 「ちょっとここでは………ついて来てくれますか?」

 皆各々焚火の近くでまったりしているからな。俺は椅子から立ち上がる。

 「いいですよ」

 俺はリーズさんの後についていく。何故かそれに呼応して、赤髪のクインさんも一緒に俺達についてくる。まぁ護衛だしね。空気を読んでもうちょっと離れて欲しいところであるけど、クインさんも知っているのだろう。リーズさんが付いて来ていることに何も言わない。少し皆から離れたところで、リーズさんが止まったので、俺も止まる。そしてクインさんも止まって、木にもたれかかって、こちらの様子を伺っている。

 「あ、あの、じ、実は………」

 もじもじして、なかなか切り出さない。
 ここはどっしりと構えておこう。浮かれているような顔を見せてはいけない。歯を見せていいのは勝利を確信した時だけだ。
 
 「もう誰かから聞いてるかもしれませんけど………」

 いや、誰からもきいていないですよ。
 情報統制はしっかりされているようです。
 リーズさんのその恥ずかしそうな顔を見れば、薄々は気付いてしまっているが、俺は何食わぬ顔で聞き返す。
 「いや、誰からも聞いてません」

 今世初のムネ熱イベントに俺の心は踊ってしまって、若干声にビブラートがかかってしまっていた気もするが気にしてはいけない。

 「実は、私、ヨハネス様のことが好きなんです」

 「…………」

 ………なーーーにーーー!! やっちまったな!!
 男は黙って、色即是空。

 小さな恋の予感がするなんて、何見当はずれのことを考えてしまっていたんだ。
 普通に考えれば、俺に関係があるっていうクインさんの台詞も、俺のことではなくてお兄様のことだったということじゃあないだろうか。
 お兄様の後輩にあたるんだから、接点のない俺なんかより、お兄様に好意を抱いているってちょっと考えればわかりそうなものじゃないか!
 というか仮に接点のある俺よりも、接点のないお兄様の方が人気があるのは俺にだって分かる。
 クルトさんもお兄様は皆の憧れって、言ってたし、気付くべきヒントはいっぱいあったということか。

 「そ、それで、ヨハネス様と仲良くなるのに協力してもらえれば、と思いまして」
 「いや、それはちょっと………」
 「えっ?!」
 まさか断られるとは思っていなかったのか、びっくりした顔を見せる。

 「おい、どうしてだ? こいつは剣術なんて本当はしたくなかったのに、ヨハネス様に会いたくて剣術稽古に参加してしまっていたほど本気なんだぞ。ちょっとくらい協力してあげてもいいじゃないか」
 木によりかかり傍観していたクインさんが口を挟む。
 「そ、それは言っちゃ駄目なやつです~」
 リーズさんが恥ずかしがる。
 
 なるほど。それが、魔法が得意なのに女性ながらに剣術稽古に参加していた理由ということか。しかし、こちらも協力できない理由があるのだ。何も意地悪しているわけではない。

 「実は同じようにお兄様と仲良くなるために協力してほしいって方がいて、それに協力することになっているんですよ」
 ラズエルデ先生のことは裏切るわけにはいけないのだ。
 変態だけど。
 キングオブイモってダサイ2つ名をエルフ族に名付けられているけど。
 俺の先生だからな。

 「なに? しかし、だったらリーズにも協力してあげてもいいんじゃないのか? そいつがOKでリーズが駄目な理由は何なんだ?」

 「対価をもらっていますから………」

 「ど、どんな対価ですか?」
 リーズさんが尋ねる。

 「それは秘密ですけど」
 授業をしてもらっていると教えれば、誰の事か特定できてしまうからな。

 「もしかして、お金をとっているのか?」

 「いや、そんなものは貰っていませんよ。お金には困っていませんし。強いて言うなら僕の生活にプラスになることを対価にしているというか」

 「何も付き合いたいとかそういうことではないんだ。もっと普通に話せるようになればいいだけなんだぞ。それでも駄目なのか?」
 「そうなんですか? う~ん、でもなぁ………」
 「は、はい。ヨハネス様と普通に話せるようになるだけでいいです。ヨハネス様の前だと緊張してしまって、全然喋ることができません」
 「それにヨハネス様は王族だからな、気軽に話しかけられないオーラがあるからな」

 う~ん、ラズエルデ先生のライバルを増やすのはなぁ~。
 あれっ、今思えば同じ王族である俺とは普通に話せているのでは。
 同じように話せばいいだけじゃないのか。

 「ちなみに僕も王族ですけど………」
 「そ、それは、何故かジークフリート様は話しかけやすいと言いますか。剣術稽古もエドガエル君と仲が良さそうで、話しかけやすそうでしたから、今回の護衛任務に立候補したんです」
 「そうだな。ヨハネス様と違ってオーラがないというか、いや、親しみやすい王族ってことだ」

 ………あんまり嬉しくないな。
 たしかにお兄様は家族以外の他者を寄せ付けない感じはするけど、俺にも隠し切れない王族オーラがあるはずなんだが………はぁ。

 「こ、こんなのはどうでしょうか? 2年目からは剣術稽古は一番上の上級生について訓練することになるのですが。私の下につけば、しんどい訓練はしないようにしますよ。走り込みを見ていると、そういう訓練はお嫌いなのではありませんか? それに、ヨハネス様の好きなたべものとか、興味があることとか、そういったことを教えてもらえるだけでもいいんです」
 
 リーズさんからのまさかの提案である。
 2年目の剣術稽古は最上級生について訓練を強要されるのだが、それに拒否権はないらしいのだ。岩を持って走るとか、火の上を走るとか、頭のおかしい先輩についてしまうと、地獄の訓練方法が待っている。
 リーズさんは俺が重い服を着て走っているという嘘設定を知らないので、普段の訓練を見てしんどい訓練は嫌いだと思ったんだろう。
 まぁ、当たっているんだが………
 さて、どうするか。
 いや、待て、俺、ラズエルデ先生を裏切るわけにはいかないだろう。
 俺はNOと言える異世界人だ。
 俺はすぐさま返答した。

 「分かりました。商談成立ですね」

 俺はリーズさんと固い握手を交わした。
 そして、クインさんは呆れた顔をしていた………
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