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第四話「熱を出す」
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朝、寝室から出てきた柚月を見て歩が「ああこりゃダメだ」と呟き、仕事部屋にいる希に声をかけた。
「おーい、希。柚月が熱出したぞ」
「マジか」
すぐに希が駆けつけ、双子が額に頬に首筋にと手を当てる。
「37、7ってとこだな」
「今日は休むって高校に連絡入れるわ」
「じゃあ俺はいつもの内科に予約を入れよう」
双子がテキパキ動くのを、柚月は首を傾ぎながら見ていた。
「あのー、別に熱ないと思うけど」
そう言うと耳で測るタイプの体温計を耳に入れられ、ピピッと電子音が鳴る。柚月は眉間に皺を寄せた。
「あゆちゃんなんで僕の体温わかるの?」
「柚月の大体のものは把握済みに決まってんだろ。食欲はあるか?」
「…ない」
「朝イチで予約取れた。俺が内科に連れて行くから、その間に歩はスポドリとか買っとけ」
「オーケー」
あれよあれよと言う間にマスクを付けられ車に乗せられ近所の内科へ連れて来られた。
待合室で希を見上げる。
「僕ひとりで来れるよ?」
「柚月に何かあったらどうすんだ? 途中で高熱になって倒れたり、吐いたり、かわいいから誰かに連れ去られる可能性もある。ほら、な? 俺か歩がいないとダメだろ?」
最後のは違う気がするなあと思っていると肩を抱かれた。
「しんどいな。もたれかかっとけ」
「ん…」
思った以上に体はしんどいらしい、柚月の小さな体を希の大きな体へ預ける。
無事に診察し風邪とのことで薬を貰って家へ帰ると、ちょうど歩が買い物を済ませた後だった。
歩に頭を撫でられる。
「おかえり、柚月。ゼリー買ってきたから食べて薬飲んで寝ような」
「ん…」
食欲がないので小さなゼリーを一口だけ食べて薬を飲み、寝室へ行った。
広いベッドは三人で寝るため、なるべくウイルスを撒かないようにとマスクを付けて眠る。
「…さみしい」
しばらく眠って目を開けると、広いベッドにひとりで眠ることがさみしくなりずるずると毛布を引きずりながらリビングへと行く。
大きなソファーにちょこんと座り、ぼーっとしているとちょうど仕事部屋から歩が出てきた。
「どうした柚月。さみしいのか?」
「…なんでわかるの?」
「そりゃあ柚月のことだからな。よし、一緒に昼寝するか」
毛布に包まった柚月を抱きしめ、歩がソファーに横になる。
「あゆちゃんお仕事はいいの?」
「お前が気にすることじゃねえよ。俺も休憩したかったんだ。それよりマスク、苦しくないか? 取っていいんだぞ」
ふるふると首を横に振り「移っちゃうから…」と言うと頭を撫でられた。
「お前は優しいなあ」
ぎゅっと抱きしめられ背中を撫でられる。その指先の優しさに目がとろんと落ち、柚月は再び眠った。
昼ごはんにはくたくたに煮てもらったうどんを少しだけ食べてゼリーも一口だけ食べて薬を飲み、寝室へ向かうと希が付いてきた。
「のんちゃん?」
抱っこされ一緒にベッドの中。
「柚月がさみしがってるだろうから、俺も一緒に昼寝だ」
「お仕事…」
「いつも言ってんだろ? お前が気にすることじゃねえよ」
「…あゆちゃんものんちゃんも優しいね。僕ふたりとも大好き」
その厚い胸板にすりすり擦り寄ると額にキスをされ、そして眠った。
ーー柚月がハッと目を覚ますと辺りはすでに真っ暗で、ベッドサイドに置いたスマホを確認すると夜の十二時を回っていた。
(…お腹空いた。ということは熱は下がったのかな?)
額に手を当てるといつも通りな気がした。柚月は風邪引き最中は食欲がなくなるが、熱が下がった瞬間に食欲が一瞬で戻るのだった。
ぐううう、と腹が鳴る。慌てて押さえて両隣の双子を見るも、聞こえていなかったようで小さな寝息を立てて眠っていた。
その二人の腕からなんとか抜け出し、そっとキッチンへ忍び込む。
「えっと、ケトルは半分ぐらい入れたら大丈夫だよね? 吹きこぼれないよね…?」
カップラーメンを作りたいが前科があるため沸かすのすら少し怖い。
小さな灯りでガサゴソしていると、パッとキッチンの電気が点いた。
「おいコラ」
「何してやがる」
案の定、双子がキッチンの入り口に立っているので柚月は「お腹空きました」と白状した。
「お、ということは治ったな?」
「どれ。うーむ、熱はなさそうだな。しんどくないか?」
「喉は痛くないか? 頭は痛くないか?」
双子に額や頭やら胸や尻やあちこち撫でられ「もう大丈夫だよ」と柚月は笑う。
「腹減ったんなら何か作ってやろうか?」
「んーん、たまにはカップラーメン食べたいなーって思って」
「湯を沸かしてやろう」
手にしたケトルを奪われ、信用されてないなあとしみじみ思った。
沸かす間にカップラーメンを選び、ケトルの湯が沸くのを待つ間、双子に交互に抱きしめられる。
「明日から存分にエロいことしようなー」
「今日は流石にやめとこうなー。そういや明日…今日は学校どうする? 念のため休むか?」
「もう熱も下がったし学校行くよ。あ、でも朝また熱があったら休むかも」
「休め休め。このまま休み続けろ」
「休み続けて出席日数足りずに退学しろ」
「そうだそうだそれがいい」
「そうだそうだそれがいい」
頭上から同じ声同じトーンで言われ頭がぐるぐる回る。何かしらの洗脳に近いのでは、なんて思ってしまう。
湯が沸き、カップラーメンに注ぐと頭上からごくりと喉が鳴る。
「うまそうだな…」
「俺も食いてえ…」
「僕の一口食べる?」
「足りねえよ」
「うまいもんは全部食いたいだろ」
そう言って、あー、と口を開けたふたりにガブリと腕を噛まれた。
「ひゃんっ」
「さーて、どのカップラーメン食うか」
「この時間に食うのは背徳感あっていいな」
「ちょっ、僕の腕噛んだのはノーコメントなの!?」
「そんだけ元気だったら柚月食うけどいいのか?」
「熱下がったからってあんまはしゃぐな。俺らが食うぞ」
「……」
もう何も言わない方がいい。そう悟った柚月は小さくなりながら三分経過するのを待った。
「は? 学校行くのか?」
「あーあ、せっかく休むと思ったのに」
「だって熱下がったもん」
「あのな柚月。いい加減高校なんか辞めて俺らの邪魔をしろ」
「そうだそうだ。お前が邪魔しねえと俺らの仕事が捗らねえだろ」
「…?? 邪魔したら捗るの?」
「おう」
「おう」
「??」
相変わらず双子の言うことはよくわからないと柚月はひたすら首を傾いだ。
「おーい、希。柚月が熱出したぞ」
「マジか」
すぐに希が駆けつけ、双子が額に頬に首筋にと手を当てる。
「37、7ってとこだな」
「今日は休むって高校に連絡入れるわ」
「じゃあ俺はいつもの内科に予約を入れよう」
双子がテキパキ動くのを、柚月は首を傾ぎながら見ていた。
「あのー、別に熱ないと思うけど」
そう言うと耳で測るタイプの体温計を耳に入れられ、ピピッと電子音が鳴る。柚月は眉間に皺を寄せた。
「あゆちゃんなんで僕の体温わかるの?」
「柚月の大体のものは把握済みに決まってんだろ。食欲はあるか?」
「…ない」
「朝イチで予約取れた。俺が内科に連れて行くから、その間に歩はスポドリとか買っとけ」
「オーケー」
あれよあれよと言う間にマスクを付けられ車に乗せられ近所の内科へ連れて来られた。
待合室で希を見上げる。
「僕ひとりで来れるよ?」
「柚月に何かあったらどうすんだ? 途中で高熱になって倒れたり、吐いたり、かわいいから誰かに連れ去られる可能性もある。ほら、な? 俺か歩がいないとダメだろ?」
最後のは違う気がするなあと思っていると肩を抱かれた。
「しんどいな。もたれかかっとけ」
「ん…」
思った以上に体はしんどいらしい、柚月の小さな体を希の大きな体へ預ける。
無事に診察し風邪とのことで薬を貰って家へ帰ると、ちょうど歩が買い物を済ませた後だった。
歩に頭を撫でられる。
「おかえり、柚月。ゼリー買ってきたから食べて薬飲んで寝ような」
「ん…」
食欲がないので小さなゼリーを一口だけ食べて薬を飲み、寝室へ行った。
広いベッドは三人で寝るため、なるべくウイルスを撒かないようにとマスクを付けて眠る。
「…さみしい」
しばらく眠って目を開けると、広いベッドにひとりで眠ることがさみしくなりずるずると毛布を引きずりながらリビングへと行く。
大きなソファーにちょこんと座り、ぼーっとしているとちょうど仕事部屋から歩が出てきた。
「どうした柚月。さみしいのか?」
「…なんでわかるの?」
「そりゃあ柚月のことだからな。よし、一緒に昼寝するか」
毛布に包まった柚月を抱きしめ、歩がソファーに横になる。
「あゆちゃんお仕事はいいの?」
「お前が気にすることじゃねえよ。俺も休憩したかったんだ。それよりマスク、苦しくないか? 取っていいんだぞ」
ふるふると首を横に振り「移っちゃうから…」と言うと頭を撫でられた。
「お前は優しいなあ」
ぎゅっと抱きしめられ背中を撫でられる。その指先の優しさに目がとろんと落ち、柚月は再び眠った。
昼ごはんにはくたくたに煮てもらったうどんを少しだけ食べてゼリーも一口だけ食べて薬を飲み、寝室へ向かうと希が付いてきた。
「のんちゃん?」
抱っこされ一緒にベッドの中。
「柚月がさみしがってるだろうから、俺も一緒に昼寝だ」
「お仕事…」
「いつも言ってんだろ? お前が気にすることじゃねえよ」
「…あゆちゃんものんちゃんも優しいね。僕ふたりとも大好き」
その厚い胸板にすりすり擦り寄ると額にキスをされ、そして眠った。
ーー柚月がハッと目を覚ますと辺りはすでに真っ暗で、ベッドサイドに置いたスマホを確認すると夜の十二時を回っていた。
(…お腹空いた。ということは熱は下がったのかな?)
額に手を当てるといつも通りな気がした。柚月は風邪引き最中は食欲がなくなるが、熱が下がった瞬間に食欲が一瞬で戻るのだった。
ぐううう、と腹が鳴る。慌てて押さえて両隣の双子を見るも、聞こえていなかったようで小さな寝息を立てて眠っていた。
その二人の腕からなんとか抜け出し、そっとキッチンへ忍び込む。
「えっと、ケトルは半分ぐらい入れたら大丈夫だよね? 吹きこぼれないよね…?」
カップラーメンを作りたいが前科があるため沸かすのすら少し怖い。
小さな灯りでガサゴソしていると、パッとキッチンの電気が点いた。
「おいコラ」
「何してやがる」
案の定、双子がキッチンの入り口に立っているので柚月は「お腹空きました」と白状した。
「お、ということは治ったな?」
「どれ。うーむ、熱はなさそうだな。しんどくないか?」
「喉は痛くないか? 頭は痛くないか?」
双子に額や頭やら胸や尻やあちこち撫でられ「もう大丈夫だよ」と柚月は笑う。
「腹減ったんなら何か作ってやろうか?」
「んーん、たまにはカップラーメン食べたいなーって思って」
「湯を沸かしてやろう」
手にしたケトルを奪われ、信用されてないなあとしみじみ思った。
沸かす間にカップラーメンを選び、ケトルの湯が沸くのを待つ間、双子に交互に抱きしめられる。
「明日から存分にエロいことしようなー」
「今日は流石にやめとこうなー。そういや明日…今日は学校どうする? 念のため休むか?」
「もう熱も下がったし学校行くよ。あ、でも朝また熱があったら休むかも」
「休め休め。このまま休み続けろ」
「休み続けて出席日数足りずに退学しろ」
「そうだそうだそれがいい」
「そうだそうだそれがいい」
頭上から同じ声同じトーンで言われ頭がぐるぐる回る。何かしらの洗脳に近いのでは、なんて思ってしまう。
湯が沸き、カップラーメンに注ぐと頭上からごくりと喉が鳴る。
「うまそうだな…」
「俺も食いてえ…」
「僕の一口食べる?」
「足りねえよ」
「うまいもんは全部食いたいだろ」
そう言って、あー、と口を開けたふたりにガブリと腕を噛まれた。
「ひゃんっ」
「さーて、どのカップラーメン食うか」
「この時間に食うのは背徳感あっていいな」
「ちょっ、僕の腕噛んだのはノーコメントなの!?」
「そんだけ元気だったら柚月食うけどいいのか?」
「熱下がったからってあんまはしゃぐな。俺らが食うぞ」
「……」
もう何も言わない方がいい。そう悟った柚月は小さくなりながら三分経過するのを待った。
「は? 学校行くのか?」
「あーあ、せっかく休むと思ったのに」
「だって熱下がったもん」
「あのな柚月。いい加減高校なんか辞めて俺らの邪魔をしろ」
「そうだそうだ。お前が邪魔しねえと俺らの仕事が捗らねえだろ」
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