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前編
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「へえ、これが悪魔か」
にこりと笑う大男に見つめられ、クロエは体をビクッと震わせた。
「思ってたよりかわいいんだな。ーーよし、買おう。いくらだ?」
交渉が終わったらしい、自分を裏切った悪魔たちが姿を消す。
男が…死神がクロエを見て笑った。
「今日からお前は俺のだ。かわいい悪魔」
ベルベットの一人用ソファーに長い足を組んで座り、目の前に立つクロエに笑いかける。
「お前、名前は?」
「く、クロエ…」
「クロエか。俺はジェットだ。わかるか? お前は俺に買われたんだ。かわいそうに」
「…」
「とは言っても買うつもりなかったんだよな。正直、これからお前をどうすればいいのか俺もよくわからん」
ジェットが笑う。
「お前を買った理由はふたつ。悪魔がどの程度の知能を持っているのか知りたかった。でもまあ、お前を売ったあの悪魔は低級悪魔の中でも下っぽいな。で、もうひとつ。予想以上にお前がかわいかった」
ジェットの手が伸び、クロエの小さな手のひらを包み込む。
ひんやりとした悪魔の手よりさらにジェットの手は冷たかった。
「お、死神の方が体温が低いのか。なるほどな。お前の手はかわいいな、クロエ」
にこにこ笑いながら手を包まれてもどうすればいいのかわからない。クロエはただ目を泳がせるしかできない。
ジェットが笑顔を止めた。
「なあ、さっきから俺の目え見ないけどなんで?」
「……」
「何も言ってくれねえし。何か言ったら? おい、何とか言えよ」
強く手を握られ痛みに顔が歪む。
ぱ、と口を開けて、けれどもすぐ閉じる。ジェットが目を見開いた。
「もしかして喋れないのか?」
「クロエ…」
「自分の名前だけが喋れるのか?」
こくこく、と頷く。クロエは喉を指さして、先ほど悪魔が消えた場所を指差した。
「あー…もしかしてさっきの悪魔たちに声を奪われたのか? 元は喋れるのか?」
こくこくこく、と何度も頷く。ジェットが手で顔を覆った。
「なるどな…アイツらそういう知能はあるんだな。悪いが経緯を知りたい。文字は書けるか?」
頷くとジェットが紙とペンを用意した。クロエは書く。
『さっきの悪魔たちに騙されました』
「かわいい字だな。騙されたとはどういうことだ?」
『人間に悪魔が捕まったから助けてほしいって』
「で、付いて行ったらお前が捕まったのか?」
こくこく。
「お前を売った悪魔とお前は仲間でいいのか?」
『種族が同じだけです。でも僕も下級悪魔だから仲間と言えば仲間…??』
「顔見知りってところか」
こくこく。
「なるほどねえ。大体の経緯はわかった。…さすがにこの状態のお前を放っておくことはできん」
ジェットが立ち上がり、クロエの小柄な体を抱きしめた。
「心配するな。お前の声は俺が取り戻してやるよ」
腕の中でクロエが首を傾ぐ。
「あ? なんでそこまでするかって? 買ったからには責任を持たないとな」
しかしクロエは目を泳がせる。
さっき騙されたばかりなのにほいほいと信用していいのだろうか。
戸惑いや焦りや逡巡が顔に出たのだろう、頬を撫でられた。
「まあ心配だろうけどそこはお前の中で踏ん切りつけてくれ。お前は俺に聞きたいことあるか?」
抱きしめられながらしばらく考えて、ぱ、と口を開けるものの声が出ないことを思い出す。
とんとん、と腕を叩いて抜け出し、紙に書いた。
『あなたのことを教えてください』
「そういや俺のこと何も言ってなかったな。俺はジェット。死神だ。ちなみにここは人間界だ。それはわかるか?」
こくこく。
「死神は見たことあるか?」
クロエは頭からフードを被る仕草をしてみせた。
「そうそう、フードを深く被ったのが死神だ。アイツらは顔を持っていない。でも俺は突然変異で顔を持って生まれた。ついでに本来の死神よりも知能が高い。だから俺は人間に紛れて暮らしている。俺のような死神も結構多いんだ。で、最近は死神も増えてきたからそろそろ統率を取ろうかと思ってな。それに向けて数人で動き出してるところだ」
こくこく。
「最近では人間界で死神退治が流行ってる。俺ら以外の死神…低級死神とでも呼ぶか。低級死神は人間の魂を狩るのが本能なんだ。だから人間たちは悪魔を雇ってでも死神を討伐しようとしてる。あ、俺は人間の魂狩らなくても生きていけるタイプだから。まあそんな中であの悪魔からお前を買わないかと言われたんだ」
ビクッとクロエは体を震わせる。
やっぱり買われた身なのだと実感する。
ジェットは長い腕を伸ばしてクロエの小柄な体を抱っこした。
「お前はかわいいなあ、クロエ」
「…??」
「かわいい悪魔を買ったと思ったら声を奪われてるとか、最高に意味わからんくておもしろい」
「…??」
「俺は面倒ごとが大好きなんだよ。お前を買って正解だ、クロエ」
クロエの腹に顔を埋めて「んー、いい匂い」とジェットは擦り寄っている。
クロエはどうすればいいのかわからず緊張して固まる。それを見てジェットが笑った。
「ははっ、そりゃあ固まるよな。じゃあ俺はちょっと別の部屋に篭るから好きにしててくれ」
ベルベットの一人用ソファーに座らされ、ひらひらと手を降ってジェットが別の部屋へ行く。
クロエは大きな息を吐き出した。
ーーこの短時間で一体何が起きたんだろう。
(なんか色々起きすぎてよくわかんない…。さっきの悪魔に騙されて、声を奪われて、この人に買われて…)
ソファーの上で膝を抱えた。
(僕これからどうなっちゃうんだろ…)
ここは人間界。地界へ帰りたいけれど帰り方がわからない。
でも地界へ帰ったところで何かいいことがあるわけでもない。それならまだここにいたほうがいいのかな…?
(あの人を信じていいのかな…)
ジェットという名の死神。顔を持ち喋れるのだから死神の中でもすごく知能が高いはずだ。
それにジェットに買われた身でもある。恐らく自分には何の拒否権もないだろう。
「…」
特にすることもないのでソファーから降りて、他の部屋を見て回った。リビングにキッチン、トイレに風呂場に寝室とその他の部屋が二つ。
扉が開いている部屋を覗き込むと、ジェットが壁の方を向いて眺めていた。
壁を見ると、一面に十台ほどのモニターがびっしりと埋められ、それぞれが別の映像を流していた。
「ああクロエ、来たのか」
何をしているの、とモニターを指差すとなぜかジェットに腕を広げられた。
「おいで」
「…??」
「おいで」
よくわからないので腕の中に行くと抱っこされた。ジェットが笑う。
「かわいいお前を抱っこするの癖になりそうだな。これらはな、クロエ。全部魔法省に勤める奴らの情報だ」
よく見ると履歴書のようなものや顔写真が映っている。クロエは首を傾ぐ。
「魔法省にも悪魔や天使、その他の種族が大勢勤務している。中には俺のように身分を偽って働く者も多いんだ。ちなみに俺は悪魔と嘘をついている。羽根は魔法でなんとかなるからな。そういやお前も羽根あるのか?」
こくこく。
「見せてもらってもいいか?」
これには腕の中でクロエが目を泳がす。どうしようどうしよう。
しかしジェットがじっと見つめているため無理そうだ。しょうがないので、背を屈めて真っ黒い悪魔の羽根を出した。
「ん? 小さくねえか? しかもむしられたあとがすげえある…」
クロエの羽根は、ジェットの大きな手のひらほどもなかった。
これにはジェットが眉間に皺を寄せた。
「これじゃあ飛べねえだろ」
こくこく。
「…お前もしかして、いじめられてた?」
クロエは明後日の方向を見る。当たっているような当たっていないような、なんて表現すればいいかわからない。
「なるほどなあ。お前、加虐心そそられそうだもんな」
どういうこと? と首を傾ぐと笑われた。
「こっちの話。大丈夫だクロエ。安心しろ。お前にひどいことはしない。約束する。…ん? 悪魔を買った時点ですでにひどいことだろうって? ははっ、その通りだな」
顔に出ていたのだろう、慌てて腕で隠すとさらに笑われた。
「お前はかわいいな、クロエ」
向けられるジェットの目が優しいものに見え、ぽぽぽ、とクロエは顔を赤くした。
コーヒー豆を挽きながら、その様子をぼんやりと眺めるクロエを見た。
(悪魔とはもっと勝気な性格だと思ってたんだが、こんなのんびりもいるんだな)
ずる賢く他者を騙す…そんなイメージだったがクロエは違う。正直、クロエは悪魔に向いていないと思う。
湯が沸いたので少し冷まし、コーヒーフィルターに挽いた豆を入れた。
(悪魔に騙される悪魔ってすげーおもしろいな)
思わず吹き出しそうになる。
死神を統率するためにもまずは悪魔がどの程度の知能を持っているか知りたかった。実際、クロエを連れてきた数人の悪魔たちは片言の言葉を喋っていた。
その点で知能は低いのだろうと推測したが、まさか商品のクロエの声を奪っているとは思いもしなかった。
知能は低いが能力は高め。恐らくだが、クロエは反対に知能は高いが能力は低めとみた。
(しかしまあかわいい顔だな)
黒い髪の毛に白い肌、黒い瞳は伏目がちで神秘的な印象を与える。
体も小さくおまけにのんびりな性格でおどおどするタイプならいじめられても納得がいってしまう。
(天使や悪魔は命よりも羽根が大事だというからな…いじめで片付けられる問題でないのはわかっている。が)
いじめたくなる気持ちもわかる。クロエは加虐心をそそるのだ。
コーヒーサーバーに少しずつコーヒーが流れていく様子を、クロエは興味深そうに見つめている。
かわいい。
「クロエ」
名前を呼ぶとパッと顔を上げた。
「お前もコーヒー飲むか?」
クロエは首を傾ぐ。
「ああ、これがコーヒーって言うんだ。いい匂いだろう? でも苦い。チョコレートがあるからそれと一緒に食べるといい」
冷蔵庫から箱に入ったチョコレートを見せると首を傾いでいた。悪魔にも食事は必要ないので、単純に見たことがないのだろう。
チョコレートを口に含んで食べて見せ、コーヒーを啜る。試しにクロエもマグカップを傾けるものの、眉間に大量の皺を寄せていた。
「はは、苦いな。口開けろ。チョコレートだ」
クロエが口を開けたので、球体型のチョコレートを口に入れてやる。
するとクロエが、ぱああっ、と顔を光り輝かせた。
「…!!」
「うまいか?」
こくこくこくこく! と初めて見せる勢いで頷いている。ジェットは笑った。
(かわいいなあ)
長い間人間に紛れて生きているためジェットとしてはなんでもないことも、クロエにとっては新鮮なのだろう。その反応がかわいくてしょうがない。
(今度はココアを飲ませてやろうかな。それともアイスか? 綿菓子なんか食ったら驚きそうだな)
頭の中のクロエが目を丸くしている。きっとどれを食べてもこんなかわいい反応をするのだろう。
(早く声が聞きたいな)
声を奪われたクロエは自らの名前しか口にできない。どんな声でこの名前を呼んでくれるのだろうか。
もぐもぐ動くクロエのピンク色の頬に、ジェットはそっと触れた。
「うまいか?」
こくこくこく!
「全部食っていいからな」
こくこくこくこく!
勢いよく振られる頭がかわいい。チョコレートの合間に飲むコーヒーが苦いままなのだろう、その度に眉間に皺が寄るのもまたかわいい。
(コイツといたら楽しそうだな)
人間に紛れて暮らすつまらない生活。だから死神関係ではなんでも首を突っ込んだ。
それが今、人生で一番ワクワクしている。
(クロエを買って正解だ)
クロエはチョコレートとコーヒーの組み合わせがよほど気に入ったのか、毎日のように食べていた。
あまりにも食べるものだから、一日一箱まで、とジェットが笑いながら制限をかけるほどに。
出会って五日目の本日もクロエはチョコを堪能しながらコーヒーを飲んでいる。それを見つめながらジェットは考える。
(そろそろ動かないとな)
クロエの声が聞きたい。
「クロエ、ちょっといいか」
チョコを食べていた手を止めて、クロエが見上げる。おいでと両腕を広げるとおずおずと来る姿がかわいいけれど警戒心がなさすぎる気もする。
軽く抱っこをして、その喉元に口付けた。
「さて、お前の声はどこにあるだろうな」
魔法を使って追跡を開始。
実はこの五日間、クロエを売った悪魔たちが味を占めて再び来るのではと少し考えた。
しかし来なかったためにこちらから出向こう。ジェットにとってはどちらでも良かった。
トクントクン、と脈打つクロエの細い喉。軽く食むようにして口づけると、ジェットの頭の中にイメージが入ってきた。
「ーー見つけた」
ふと見上げるとクロエがなんとも言えない顔をしていた。そりゃあ喉元にキスをしているのだ、何をしているのだと思うだろう。
「ははっ、噛んでやろうか?」
ぶるぶるとクロエが慌てて首を横に振る。
「今からお前の声を取り戻しに行ってくる。留守番よろしくな」
しかしクロエは何度も自らを指差した。
「ん? 連れてけって?」
こくこく。
「ダメに決まってんだろ? お前は魔法使えないんだから危ない。 わかったか?」
しばらく悩み、少しして不満げにクロエは頷いた。
「無事にお前の声が戻るように祈っとけ」
そう言うと、トントン、と腕を叩かれ下せと暗に言われた。その通りにするとクロエが紙に何かを書き始めた。
それを見たジェットが目を丸くする。
『あなたが怪我をしないように祈ります』
ジェットは笑った。
ーー手離せるわけがない。
「ははっ! ありがとなクロエ!」
勢いよく抱き上げその頬に何度もキスをしてから羽根を羽ばたかせ出て行った。
浮かんだイメージと同じ通りを見つけ、狭い路地を飛んでいく。人目が付きにくい路地裏のさらに奥に、クロエを売ったあの悪魔たちがいた。
ジェットがその後ろに降り立つ。
「よくもこの俺に不良品を売りつけたな」
悪魔の一人の背中を蹴り上げた。悪魔が勢いよく宙を舞い、地面に叩きつけられる。
それを見た他の悪魔が慌てて逃げようとするので結界を張って行き場をなくす。
ジェットが笑った。
「でもまあ、その不良品がめちゃくちゃかわいくてな。だからクロエを連れてきたお前らを褒めてやろう。ーー魔法省が配給する拳銃と」
ゴキゴキと指を鳴らした。
「俺の素手であの世行き、どっちがいいか特別に選ばせてやる」
「ありがとうございましたー!」
店舗限定な上に期間限定のかわいいチョコレートを買えたジェットはうきうきしながら羽根を出して飛んだ。
もうクロエの声は戻っているだろう。
クロエの声を聞きながらコーヒーとチョコレートを食べよう。
一体どんな声だろう、早く名前を呼んでほしいーーそう思いながら近づくマンションを見ると、自室のベランダにクロエが立っていた。
嬉しそうにぶんぶんと手を降っている。
「ジェットさーん!」
高い声が、響いた。
「僕! 声が! 戻りましたー!」
羽根を仕舞いながらベランダへ降り立つとクロエが抱きついてきた。
「ジェットさん、ジェットさん。僕の声が戻りました」
ジェットが笑う。
「お前は声までかわいいんだな。想像よりずっとずっとかわいい。お前はかわいいな、クロエ」
クロエの顔が、ぽぽぽ、赤く染まるもはにかむように笑った。
「嬉しいです」
その頭を撫でてやり、頬にキスをしてやる。赤い顔をして戸惑うクロエに紙袋を渡した。
「?? なんですか?」
「お前の好きなチョコレートだ。お前の声が戻ったお祝い」
「いいんですか? やったあ」
「コーヒーも淹れてやるから一緒に食べよう」
「はい」
紙袋を大事そうに抱えて室内に入るクロエを見て、ジェットが笑う。
これは一生どころでは済まないほど好きになってしまったな、と。
「クロエ」
思わずジェットは呼び止めた。
「お前が好きだ」
にこりと笑う大男に見つめられ、クロエは体をビクッと震わせた。
「思ってたよりかわいいんだな。ーーよし、買おう。いくらだ?」
交渉が終わったらしい、自分を裏切った悪魔たちが姿を消す。
男が…死神がクロエを見て笑った。
「今日からお前は俺のだ。かわいい悪魔」
ベルベットの一人用ソファーに長い足を組んで座り、目の前に立つクロエに笑いかける。
「お前、名前は?」
「く、クロエ…」
「クロエか。俺はジェットだ。わかるか? お前は俺に買われたんだ。かわいそうに」
「…」
「とは言っても買うつもりなかったんだよな。正直、これからお前をどうすればいいのか俺もよくわからん」
ジェットが笑う。
「お前を買った理由はふたつ。悪魔がどの程度の知能を持っているのか知りたかった。でもまあ、お前を売ったあの悪魔は低級悪魔の中でも下っぽいな。で、もうひとつ。予想以上にお前がかわいかった」
ジェットの手が伸び、クロエの小さな手のひらを包み込む。
ひんやりとした悪魔の手よりさらにジェットの手は冷たかった。
「お、死神の方が体温が低いのか。なるほどな。お前の手はかわいいな、クロエ」
にこにこ笑いながら手を包まれてもどうすればいいのかわからない。クロエはただ目を泳がせるしかできない。
ジェットが笑顔を止めた。
「なあ、さっきから俺の目え見ないけどなんで?」
「……」
「何も言ってくれねえし。何か言ったら? おい、何とか言えよ」
強く手を握られ痛みに顔が歪む。
ぱ、と口を開けて、けれどもすぐ閉じる。ジェットが目を見開いた。
「もしかして喋れないのか?」
「クロエ…」
「自分の名前だけが喋れるのか?」
こくこく、と頷く。クロエは喉を指さして、先ほど悪魔が消えた場所を指差した。
「あー…もしかしてさっきの悪魔たちに声を奪われたのか? 元は喋れるのか?」
こくこくこく、と何度も頷く。ジェットが手で顔を覆った。
「なるどな…アイツらそういう知能はあるんだな。悪いが経緯を知りたい。文字は書けるか?」
頷くとジェットが紙とペンを用意した。クロエは書く。
『さっきの悪魔たちに騙されました』
「かわいい字だな。騙されたとはどういうことだ?」
『人間に悪魔が捕まったから助けてほしいって』
「で、付いて行ったらお前が捕まったのか?」
こくこく。
「お前を売った悪魔とお前は仲間でいいのか?」
『種族が同じだけです。でも僕も下級悪魔だから仲間と言えば仲間…??』
「顔見知りってところか」
こくこく。
「なるほどねえ。大体の経緯はわかった。…さすがにこの状態のお前を放っておくことはできん」
ジェットが立ち上がり、クロエの小柄な体を抱きしめた。
「心配するな。お前の声は俺が取り戻してやるよ」
腕の中でクロエが首を傾ぐ。
「あ? なんでそこまでするかって? 買ったからには責任を持たないとな」
しかしクロエは目を泳がせる。
さっき騙されたばかりなのにほいほいと信用していいのだろうか。
戸惑いや焦りや逡巡が顔に出たのだろう、頬を撫でられた。
「まあ心配だろうけどそこはお前の中で踏ん切りつけてくれ。お前は俺に聞きたいことあるか?」
抱きしめられながらしばらく考えて、ぱ、と口を開けるものの声が出ないことを思い出す。
とんとん、と腕を叩いて抜け出し、紙に書いた。
『あなたのことを教えてください』
「そういや俺のこと何も言ってなかったな。俺はジェット。死神だ。ちなみにここは人間界だ。それはわかるか?」
こくこく。
「死神は見たことあるか?」
クロエは頭からフードを被る仕草をしてみせた。
「そうそう、フードを深く被ったのが死神だ。アイツらは顔を持っていない。でも俺は突然変異で顔を持って生まれた。ついでに本来の死神よりも知能が高い。だから俺は人間に紛れて暮らしている。俺のような死神も結構多いんだ。で、最近は死神も増えてきたからそろそろ統率を取ろうかと思ってな。それに向けて数人で動き出してるところだ」
こくこく。
「最近では人間界で死神退治が流行ってる。俺ら以外の死神…低級死神とでも呼ぶか。低級死神は人間の魂を狩るのが本能なんだ。だから人間たちは悪魔を雇ってでも死神を討伐しようとしてる。あ、俺は人間の魂狩らなくても生きていけるタイプだから。まあそんな中であの悪魔からお前を買わないかと言われたんだ」
ビクッとクロエは体を震わせる。
やっぱり買われた身なのだと実感する。
ジェットは長い腕を伸ばしてクロエの小柄な体を抱っこした。
「お前はかわいいなあ、クロエ」
「…??」
「かわいい悪魔を買ったと思ったら声を奪われてるとか、最高に意味わからんくておもしろい」
「…??」
「俺は面倒ごとが大好きなんだよ。お前を買って正解だ、クロエ」
クロエの腹に顔を埋めて「んー、いい匂い」とジェットは擦り寄っている。
クロエはどうすればいいのかわからず緊張して固まる。それを見てジェットが笑った。
「ははっ、そりゃあ固まるよな。じゃあ俺はちょっと別の部屋に篭るから好きにしててくれ」
ベルベットの一人用ソファーに座らされ、ひらひらと手を降ってジェットが別の部屋へ行く。
クロエは大きな息を吐き出した。
ーーこの短時間で一体何が起きたんだろう。
(なんか色々起きすぎてよくわかんない…。さっきの悪魔に騙されて、声を奪われて、この人に買われて…)
ソファーの上で膝を抱えた。
(僕これからどうなっちゃうんだろ…)
ここは人間界。地界へ帰りたいけれど帰り方がわからない。
でも地界へ帰ったところで何かいいことがあるわけでもない。それならまだここにいたほうがいいのかな…?
(あの人を信じていいのかな…)
ジェットという名の死神。顔を持ち喋れるのだから死神の中でもすごく知能が高いはずだ。
それにジェットに買われた身でもある。恐らく自分には何の拒否権もないだろう。
「…」
特にすることもないのでソファーから降りて、他の部屋を見て回った。リビングにキッチン、トイレに風呂場に寝室とその他の部屋が二つ。
扉が開いている部屋を覗き込むと、ジェットが壁の方を向いて眺めていた。
壁を見ると、一面に十台ほどのモニターがびっしりと埋められ、それぞれが別の映像を流していた。
「ああクロエ、来たのか」
何をしているの、とモニターを指差すとなぜかジェットに腕を広げられた。
「おいで」
「…??」
「おいで」
よくわからないので腕の中に行くと抱っこされた。ジェットが笑う。
「かわいいお前を抱っこするの癖になりそうだな。これらはな、クロエ。全部魔法省に勤める奴らの情報だ」
よく見ると履歴書のようなものや顔写真が映っている。クロエは首を傾ぐ。
「魔法省にも悪魔や天使、その他の種族が大勢勤務している。中には俺のように身分を偽って働く者も多いんだ。ちなみに俺は悪魔と嘘をついている。羽根は魔法でなんとかなるからな。そういやお前も羽根あるのか?」
こくこく。
「見せてもらってもいいか?」
これには腕の中でクロエが目を泳がす。どうしようどうしよう。
しかしジェットがじっと見つめているため無理そうだ。しょうがないので、背を屈めて真っ黒い悪魔の羽根を出した。
「ん? 小さくねえか? しかもむしられたあとがすげえある…」
クロエの羽根は、ジェットの大きな手のひらほどもなかった。
これにはジェットが眉間に皺を寄せた。
「これじゃあ飛べねえだろ」
こくこく。
「…お前もしかして、いじめられてた?」
クロエは明後日の方向を見る。当たっているような当たっていないような、なんて表現すればいいかわからない。
「なるほどなあ。お前、加虐心そそられそうだもんな」
どういうこと? と首を傾ぐと笑われた。
「こっちの話。大丈夫だクロエ。安心しろ。お前にひどいことはしない。約束する。…ん? 悪魔を買った時点ですでにひどいことだろうって? ははっ、その通りだな」
顔に出ていたのだろう、慌てて腕で隠すとさらに笑われた。
「お前はかわいいな、クロエ」
向けられるジェットの目が優しいものに見え、ぽぽぽ、とクロエは顔を赤くした。
コーヒー豆を挽きながら、その様子をぼんやりと眺めるクロエを見た。
(悪魔とはもっと勝気な性格だと思ってたんだが、こんなのんびりもいるんだな)
ずる賢く他者を騙す…そんなイメージだったがクロエは違う。正直、クロエは悪魔に向いていないと思う。
湯が沸いたので少し冷まし、コーヒーフィルターに挽いた豆を入れた。
(悪魔に騙される悪魔ってすげーおもしろいな)
思わず吹き出しそうになる。
死神を統率するためにもまずは悪魔がどの程度の知能を持っているか知りたかった。実際、クロエを連れてきた数人の悪魔たちは片言の言葉を喋っていた。
その点で知能は低いのだろうと推測したが、まさか商品のクロエの声を奪っているとは思いもしなかった。
知能は低いが能力は高め。恐らくだが、クロエは反対に知能は高いが能力は低めとみた。
(しかしまあかわいい顔だな)
黒い髪の毛に白い肌、黒い瞳は伏目がちで神秘的な印象を与える。
体も小さくおまけにのんびりな性格でおどおどするタイプならいじめられても納得がいってしまう。
(天使や悪魔は命よりも羽根が大事だというからな…いじめで片付けられる問題でないのはわかっている。が)
いじめたくなる気持ちもわかる。クロエは加虐心をそそるのだ。
コーヒーサーバーに少しずつコーヒーが流れていく様子を、クロエは興味深そうに見つめている。
かわいい。
「クロエ」
名前を呼ぶとパッと顔を上げた。
「お前もコーヒー飲むか?」
クロエは首を傾ぐ。
「ああ、これがコーヒーって言うんだ。いい匂いだろう? でも苦い。チョコレートがあるからそれと一緒に食べるといい」
冷蔵庫から箱に入ったチョコレートを見せると首を傾いでいた。悪魔にも食事は必要ないので、単純に見たことがないのだろう。
チョコレートを口に含んで食べて見せ、コーヒーを啜る。試しにクロエもマグカップを傾けるものの、眉間に大量の皺を寄せていた。
「はは、苦いな。口開けろ。チョコレートだ」
クロエが口を開けたので、球体型のチョコレートを口に入れてやる。
するとクロエが、ぱああっ、と顔を光り輝かせた。
「…!!」
「うまいか?」
こくこくこくこく! と初めて見せる勢いで頷いている。ジェットは笑った。
(かわいいなあ)
長い間人間に紛れて生きているためジェットとしてはなんでもないことも、クロエにとっては新鮮なのだろう。その反応がかわいくてしょうがない。
(今度はココアを飲ませてやろうかな。それともアイスか? 綿菓子なんか食ったら驚きそうだな)
頭の中のクロエが目を丸くしている。きっとどれを食べてもこんなかわいい反応をするのだろう。
(早く声が聞きたいな)
声を奪われたクロエは自らの名前しか口にできない。どんな声でこの名前を呼んでくれるのだろうか。
もぐもぐ動くクロエのピンク色の頬に、ジェットはそっと触れた。
「うまいか?」
こくこくこく!
「全部食っていいからな」
こくこくこくこく!
勢いよく振られる頭がかわいい。チョコレートの合間に飲むコーヒーが苦いままなのだろう、その度に眉間に皺が寄るのもまたかわいい。
(コイツといたら楽しそうだな)
人間に紛れて暮らすつまらない生活。だから死神関係ではなんでも首を突っ込んだ。
それが今、人生で一番ワクワクしている。
(クロエを買って正解だ)
クロエはチョコレートとコーヒーの組み合わせがよほど気に入ったのか、毎日のように食べていた。
あまりにも食べるものだから、一日一箱まで、とジェットが笑いながら制限をかけるほどに。
出会って五日目の本日もクロエはチョコを堪能しながらコーヒーを飲んでいる。それを見つめながらジェットは考える。
(そろそろ動かないとな)
クロエの声が聞きたい。
「クロエ、ちょっといいか」
チョコを食べていた手を止めて、クロエが見上げる。おいでと両腕を広げるとおずおずと来る姿がかわいいけれど警戒心がなさすぎる気もする。
軽く抱っこをして、その喉元に口付けた。
「さて、お前の声はどこにあるだろうな」
魔法を使って追跡を開始。
実はこの五日間、クロエを売った悪魔たちが味を占めて再び来るのではと少し考えた。
しかし来なかったためにこちらから出向こう。ジェットにとってはどちらでも良かった。
トクントクン、と脈打つクロエの細い喉。軽く食むようにして口づけると、ジェットの頭の中にイメージが入ってきた。
「ーー見つけた」
ふと見上げるとクロエがなんとも言えない顔をしていた。そりゃあ喉元にキスをしているのだ、何をしているのだと思うだろう。
「ははっ、噛んでやろうか?」
ぶるぶるとクロエが慌てて首を横に振る。
「今からお前の声を取り戻しに行ってくる。留守番よろしくな」
しかしクロエは何度も自らを指差した。
「ん? 連れてけって?」
こくこく。
「ダメに決まってんだろ? お前は魔法使えないんだから危ない。 わかったか?」
しばらく悩み、少しして不満げにクロエは頷いた。
「無事にお前の声が戻るように祈っとけ」
そう言うと、トントン、と腕を叩かれ下せと暗に言われた。その通りにするとクロエが紙に何かを書き始めた。
それを見たジェットが目を丸くする。
『あなたが怪我をしないように祈ります』
ジェットは笑った。
ーー手離せるわけがない。
「ははっ! ありがとなクロエ!」
勢いよく抱き上げその頬に何度もキスをしてから羽根を羽ばたかせ出て行った。
浮かんだイメージと同じ通りを見つけ、狭い路地を飛んでいく。人目が付きにくい路地裏のさらに奥に、クロエを売ったあの悪魔たちがいた。
ジェットがその後ろに降り立つ。
「よくもこの俺に不良品を売りつけたな」
悪魔の一人の背中を蹴り上げた。悪魔が勢いよく宙を舞い、地面に叩きつけられる。
それを見た他の悪魔が慌てて逃げようとするので結界を張って行き場をなくす。
ジェットが笑った。
「でもまあ、その不良品がめちゃくちゃかわいくてな。だからクロエを連れてきたお前らを褒めてやろう。ーー魔法省が配給する拳銃と」
ゴキゴキと指を鳴らした。
「俺の素手であの世行き、どっちがいいか特別に選ばせてやる」
「ありがとうございましたー!」
店舗限定な上に期間限定のかわいいチョコレートを買えたジェットはうきうきしながら羽根を出して飛んだ。
もうクロエの声は戻っているだろう。
クロエの声を聞きながらコーヒーとチョコレートを食べよう。
一体どんな声だろう、早く名前を呼んでほしいーーそう思いながら近づくマンションを見ると、自室のベランダにクロエが立っていた。
嬉しそうにぶんぶんと手を降っている。
「ジェットさーん!」
高い声が、響いた。
「僕! 声が! 戻りましたー!」
羽根を仕舞いながらベランダへ降り立つとクロエが抱きついてきた。
「ジェットさん、ジェットさん。僕の声が戻りました」
ジェットが笑う。
「お前は声までかわいいんだな。想像よりずっとずっとかわいい。お前はかわいいな、クロエ」
クロエの顔が、ぽぽぽ、赤く染まるもはにかむように笑った。
「嬉しいです」
その頭を撫でてやり、頬にキスをしてやる。赤い顔をして戸惑うクロエに紙袋を渡した。
「?? なんですか?」
「お前の好きなチョコレートだ。お前の声が戻ったお祝い」
「いいんですか? やったあ」
「コーヒーも淹れてやるから一緒に食べよう」
「はい」
紙袋を大事そうに抱えて室内に入るクロエを見て、ジェットが笑う。
これは一生どころでは済まないほど好きになってしまったな、と。
「クロエ」
思わずジェットは呼び止めた。
「お前が好きだ」
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