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第四話「秋」
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食欲の秋である。
まだ九月に入って少しだというのに、双子の食欲が見る見る間に増えていく。
その腹を少しでも満たせればとの思いで風華は、おいしそうに炊き上がった炊き込みご飯を必死に握っていた。
「お、うまそー」
「キノコの炊き込みご飯か。秋っぽくていいな」
そう言って二人が「いただき!」と早くもおにぎりにパクつき始めた。
「ちょっ! シキくんトキくん!? それ明日のキミたちの学校用のおやつだよ!?」
「食べ物は食うためにあるんだろうが」
「食って何が悪い」
「次は赤飯が食いたいわー」
「俺は栗ご飯」
結局三個ずつ食べられ、風華はシクシク泣きながら残り少ない炊き込みご飯を握った…。
「腹へったー」
「腹へったー」
「…キミたちそれ以外言うことないの?」
「風華食わせろ、とか?」
「風華愛してる、とか?」
「……聞いた僕がバカでした」
「そんな真っ赤な顔で言われても」
大量に揚げた夜ごはんの春巻きを食べながら「あ」と風華は思い出す。
「中秋の名月にはまだ早いけど、今日はあとでお月見しようと思うんだ」
「月見?」
「ということは」
「そ! お月見団子作ったんだー! というわけであんまり食べすぎないよう…」
「おかわり」
「おかわり」
空になった茶碗を差し出され、ですよね…と小さく呟いた。
一階の縁側でお月見をしようとしたものの、他の家や木が少し邪魔となったために急遽、二階の寝室のベランダで開催した。
大きな深皿に、大量の手作りお月見団子をイン。
「…なんか雰囲気ないね」
「団子が多すぎんだよ。でもなあ、少ない団子を食べてもな…」
「食った気しねえの嫌だし…」
景色や行事より食い気である。
ベランダに立ち、風華を真ん中に挟んで双子が両隣に立つ。そして手を伸ばし、風華が持つ皿の中のお月見団子を、うまいうまいとひょいひょい放るように食べていた。
怖い。バケツに入るぐらい大量に用意したはずのお月見団子がもう半分もない。
「風華? お前食わねえの?」
「ほれ、分けてやるよ」
お腹がいっぱいと判断されたのか、時の食べかけを口の中に放られた。
おいしいけれど、うん、二人の食欲を前にしたら僕の食欲は消えるよ。
「お月様見えるねえ」
見上げた先の月はまんまるより少し欠けており、ぼんやりとした黒い雲が時折隠した。
「お花見はできなかったけどさ、お月見はできたね」
「あの時の団子もうまかった」
「今日の団子もうまかった」
「もー、二人とも食べ物の話しかしてないよ。ていうかもうなくなっちゃった…」
あっという間になくなった団子の皿を室外機の上に置き、風華は二人の腕を取って笑った。
「なんかいいね、こういうの。家族みたい」
「そうだな、風華」
「そのうち家族になるしな」
「?? どういうこと?」
そう尋ねると双子が楽しそうに笑うも教えてはくれない。一体どういう意味だろうと首を傾いでいると、頬を撫でられた。
キスされると思うより早く色に唇を重ねられ、うっとりと目を閉じる。
「う、ん…、ん…」
時に下半身をまさぐられ、気持ちよさに思わずその腕にしがみついてしまう。
「シキく、トキくん…ここ、外、だよ…」
ちゅ、と額にキスされた。
「見せつけたらいいんじゃねえの?」
「ヤダよ…」
「じゃあこうしよう。風華お前、前に俺らにかわいくセックスおねだりしなかっただろ」
「それを今ここでしろ」
見上げた先の双子はニヤニヤと楽しそう笑っている。「怪獣共め…」と睨みつけてから二人の大きな手のひらを取り、両頬に押し当てた。
「…ベッドで、エッチ、したい…です」
双子は眉間に皺を寄せた。
「三十点」
「不合格」
「なんで!?」
「エロくない」
「かわいいけどエロくない」
「そ、そんなこと言われてもお…」
思わず涙目になっていると「まあ合格ということにしてやろう」と色に抱っこされ室内に移動、時が窓とカーテンを閉めた。
ベッドに下され、二人も上がってきてはベッドが軋む。色と時が上半身裸になったため、慌てて風華も服を脱ごうとするのに脱げない。
「な、なんでっ」
慌てすぎたのかどこから頭を出せばいいのかわからずオロオロしていると、頭上から大きな笑い声が聞こえたと思ったら、スポン、と服を引っ張られた。
「ははっ、風華らしいな」
「全然いい雰囲気にならねえなー」
「…すいませんね」
「しょうがねえよ。俺らはそういうもんなんだろ」
「今のこの雰囲気を楽しもうぜ」
ちゅ、ちゅ、と両頬にキスをされる。くすぐったくて目を閉じると瞼にも唇を落とされた。
「ねえ、シキくんトキくん…」
ころんとベッドに押し倒されながら風華は見上げた。
「さっき言ってたの…どういうこと?」
「さっきのって?」
「そのうち家族になる、って…」
ふ、と双子が笑った。
「そのうちわかる」
ーー結局その日は何も教えてくれなかった。
スマホの通知音がなり、キッチンで作業をしていた風華は手を洗ってスマホを取った。
「あ、お母さんからだ。…え、再婚!?」
メッセージには短く『再婚しました』との文字が。
慌ててスクロールすると、そこにはなんと双子の父親との仲睦まじい写真が載せられていた。
「し…シキくんトキくんっ!」
リビングでごろごろする二人に声をかけると「メシか!?」と飛び起きてきた。
「今日のメシはなんだ!」
「腹へったぞ!」
「それどころじゃないって! お、おか、おか…っ!」
「ああ、ウチのクソ親父と風華のおばさんが再婚したってやつか?」
「もうおばさんじゃねえな。お袋って呼ばねえと」
「それもそうだな」
風華はぽかんと口を開ける。え、なんでそんなに冷静なの?
呆然と見つめていると、ぽん、と頭に手を乗せられた。
「よく考えろ風華。確かにウチのクソ親父はお前の高校卒業資格と引き換えに俺らの面倒を見させている」
「お前はおかしいと思わないのか? ウチのクソ親父はこの半年間、一度もこの家に帰ってきていない」
「いくら仕事人間だからと言っても、どこで何をしているか考えなかったのか?」
それもそうだ。
この家は双子の父親の家でもある。しかしこの半年間、一度も足を踏み入れていない。
そして風華が双子の父親を二度も見かけた場所は…。
「…僕の実家…」
ようやく全ての合点がいくと双子が頷いた。
「そういうわけだ」
「ウチのクソ親父はなあ、おばさんをずっと口説いてたんだよ」
「でもま、風華もいるわけだしいい返事ができなかったってわけだ。そんな時にお前が高校全滅したんだよ」
「ウチのクソ親父はそりゃあほくそ笑んだだろうなあ」
「お前をこの家に住まわせて、おばさんと二人きりになれるんだから」
ヘナヘナと、風華はその場に崩れ落ちた。
「ぼ、僕だけ知らなかった…」
「しょうがねえよ」
「お前は鈍い」
腕を引っ張られリビングのソファーに座らされた。もちろん左右には双子が座る。
風華が、ハッとする中、二人に腰を抱かれた。
「もしかして家族になるって…」
「そ。親同士が再婚したから俺たちは義兄弟だ」
「風華は何月生まれだっけ? 俺らは三月だけど」
「二月…」
双子がにんまりと笑いながら声を揃えてこう言った。
「これからよろしく、風華オニイチャン」
まだ九月に入って少しだというのに、双子の食欲が見る見る間に増えていく。
その腹を少しでも満たせればとの思いで風華は、おいしそうに炊き上がった炊き込みご飯を必死に握っていた。
「お、うまそー」
「キノコの炊き込みご飯か。秋っぽくていいな」
そう言って二人が「いただき!」と早くもおにぎりにパクつき始めた。
「ちょっ! シキくんトキくん!? それ明日のキミたちの学校用のおやつだよ!?」
「食べ物は食うためにあるんだろうが」
「食って何が悪い」
「次は赤飯が食いたいわー」
「俺は栗ご飯」
結局三個ずつ食べられ、風華はシクシク泣きながら残り少ない炊き込みご飯を握った…。
「腹へったー」
「腹へったー」
「…キミたちそれ以外言うことないの?」
「風華食わせろ、とか?」
「風華愛してる、とか?」
「……聞いた僕がバカでした」
「そんな真っ赤な顔で言われても」
大量に揚げた夜ごはんの春巻きを食べながら「あ」と風華は思い出す。
「中秋の名月にはまだ早いけど、今日はあとでお月見しようと思うんだ」
「月見?」
「ということは」
「そ! お月見団子作ったんだー! というわけであんまり食べすぎないよう…」
「おかわり」
「おかわり」
空になった茶碗を差し出され、ですよね…と小さく呟いた。
一階の縁側でお月見をしようとしたものの、他の家や木が少し邪魔となったために急遽、二階の寝室のベランダで開催した。
大きな深皿に、大量の手作りお月見団子をイン。
「…なんか雰囲気ないね」
「団子が多すぎんだよ。でもなあ、少ない団子を食べてもな…」
「食った気しねえの嫌だし…」
景色や行事より食い気である。
ベランダに立ち、風華を真ん中に挟んで双子が両隣に立つ。そして手を伸ばし、風華が持つ皿の中のお月見団子を、うまいうまいとひょいひょい放るように食べていた。
怖い。バケツに入るぐらい大量に用意したはずのお月見団子がもう半分もない。
「風華? お前食わねえの?」
「ほれ、分けてやるよ」
お腹がいっぱいと判断されたのか、時の食べかけを口の中に放られた。
おいしいけれど、うん、二人の食欲を前にしたら僕の食欲は消えるよ。
「お月様見えるねえ」
見上げた先の月はまんまるより少し欠けており、ぼんやりとした黒い雲が時折隠した。
「お花見はできなかったけどさ、お月見はできたね」
「あの時の団子もうまかった」
「今日の団子もうまかった」
「もー、二人とも食べ物の話しかしてないよ。ていうかもうなくなっちゃった…」
あっという間になくなった団子の皿を室外機の上に置き、風華は二人の腕を取って笑った。
「なんかいいね、こういうの。家族みたい」
「そうだな、風華」
「そのうち家族になるしな」
「?? どういうこと?」
そう尋ねると双子が楽しそうに笑うも教えてはくれない。一体どういう意味だろうと首を傾いでいると、頬を撫でられた。
キスされると思うより早く色に唇を重ねられ、うっとりと目を閉じる。
「う、ん…、ん…」
時に下半身をまさぐられ、気持ちよさに思わずその腕にしがみついてしまう。
「シキく、トキくん…ここ、外、だよ…」
ちゅ、と額にキスされた。
「見せつけたらいいんじゃねえの?」
「ヤダよ…」
「じゃあこうしよう。風華お前、前に俺らにかわいくセックスおねだりしなかっただろ」
「それを今ここでしろ」
見上げた先の双子はニヤニヤと楽しそう笑っている。「怪獣共め…」と睨みつけてから二人の大きな手のひらを取り、両頬に押し当てた。
「…ベッドで、エッチ、したい…です」
双子は眉間に皺を寄せた。
「三十点」
「不合格」
「なんで!?」
「エロくない」
「かわいいけどエロくない」
「そ、そんなこと言われてもお…」
思わず涙目になっていると「まあ合格ということにしてやろう」と色に抱っこされ室内に移動、時が窓とカーテンを閉めた。
ベッドに下され、二人も上がってきてはベッドが軋む。色と時が上半身裸になったため、慌てて風華も服を脱ごうとするのに脱げない。
「な、なんでっ」
慌てすぎたのかどこから頭を出せばいいのかわからずオロオロしていると、頭上から大きな笑い声が聞こえたと思ったら、スポン、と服を引っ張られた。
「ははっ、風華らしいな」
「全然いい雰囲気にならねえなー」
「…すいませんね」
「しょうがねえよ。俺らはそういうもんなんだろ」
「今のこの雰囲気を楽しもうぜ」
ちゅ、ちゅ、と両頬にキスをされる。くすぐったくて目を閉じると瞼にも唇を落とされた。
「ねえ、シキくんトキくん…」
ころんとベッドに押し倒されながら風華は見上げた。
「さっき言ってたの…どういうこと?」
「さっきのって?」
「そのうち家族になる、って…」
ふ、と双子が笑った。
「そのうちわかる」
ーー結局その日は何も教えてくれなかった。
スマホの通知音がなり、キッチンで作業をしていた風華は手を洗ってスマホを取った。
「あ、お母さんからだ。…え、再婚!?」
メッセージには短く『再婚しました』との文字が。
慌ててスクロールすると、そこにはなんと双子の父親との仲睦まじい写真が載せられていた。
「し…シキくんトキくんっ!」
リビングでごろごろする二人に声をかけると「メシか!?」と飛び起きてきた。
「今日のメシはなんだ!」
「腹へったぞ!」
「それどころじゃないって! お、おか、おか…っ!」
「ああ、ウチのクソ親父と風華のおばさんが再婚したってやつか?」
「もうおばさんじゃねえな。お袋って呼ばねえと」
「それもそうだな」
風華はぽかんと口を開ける。え、なんでそんなに冷静なの?
呆然と見つめていると、ぽん、と頭に手を乗せられた。
「よく考えろ風華。確かにウチのクソ親父はお前の高校卒業資格と引き換えに俺らの面倒を見させている」
「お前はおかしいと思わないのか? ウチのクソ親父はこの半年間、一度もこの家に帰ってきていない」
「いくら仕事人間だからと言っても、どこで何をしているか考えなかったのか?」
それもそうだ。
この家は双子の父親の家でもある。しかしこの半年間、一度も足を踏み入れていない。
そして風華が双子の父親を二度も見かけた場所は…。
「…僕の実家…」
ようやく全ての合点がいくと双子が頷いた。
「そういうわけだ」
「ウチのクソ親父はなあ、おばさんをずっと口説いてたんだよ」
「でもま、風華もいるわけだしいい返事ができなかったってわけだ。そんな時にお前が高校全滅したんだよ」
「ウチのクソ親父はそりゃあほくそ笑んだだろうなあ」
「お前をこの家に住まわせて、おばさんと二人きりになれるんだから」
ヘナヘナと、風華はその場に崩れ落ちた。
「ぼ、僕だけ知らなかった…」
「しょうがねえよ」
「お前は鈍い」
腕を引っ張られリビングのソファーに座らされた。もちろん左右には双子が座る。
風華が、ハッとする中、二人に腰を抱かれた。
「もしかして家族になるって…」
「そ。親同士が再婚したから俺たちは義兄弟だ」
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