62 / 364
62 初めての共同作業(王子視点)
しおりを挟む
アツアツのたい焼きは美味かった。舌が火傷しそうなほどに熱いのにそれをハフハフと冷ましながら食べるこの感覚は面白い。
舌に張り付く甘いあんこを温かいお茶で流し込む。
緑茶が合いそうだが、残念ながら今日はノンカフェインの紅茶。でも、コレはコレで合うな! お茶が進む。
ゴクゴクゴク。
……じゃなくて。
なんか、よく分からないが召喚主は寝坊したことしか気にしていないようだ。それはそれで複雑ではあるが……。
とりあえずは怒ってもいないし、変な空気にならなくて良かった。僕が寝ぼけたのが全ての元凶だ。睡眠さえ足りていれば、もう少し寝起きはいいはずなんだ。
あんなことにならないように、これからはより一層気をつけよう。
そう。今まで以上に規則正しい生活を送るのだ。早寝、早起き。コレが大事。そのためにも長時間の昼寝は避けなければならない。そうなると、3D酔い対策が必須となってくる。
現状どうしても酔ってしまうのならば、効率的なゲームの仕方を考えなければ……!
とりあえずゲームを起動して、僕が作りあげた『幽閉中の塔』へと入った。
我ながらよくできている。
出入り口のカギまでは再現できなかったが、割とリアルだ。こうしていると、昨日の落ち着きのない気持ちまでもがよみがえってくるくらい。
塔の僕の部屋には一応窓がある。それもリアルに再現させてある。空気の入れ替えを出来るのはいいけれど、城からはかなり離れていて、方向も違うので窓から見えるのは木々ばかり。それがよりいっそう孤独を感じさせてくる。そんなとこまでそっくりだ。
それを見て思う。
せっかくだから、隣に召喚主でも住んでいたらいいのに。
――で、思った。
ゲーム内ならそんなことだってできるじゃないか――と。
「あれ? コレって、もしかしてうちのアパート……?」
「! 分かるか!?」
早速、夢中になってアパート建設を続けていると、僕の後ろで建築作業を眺めていた召喚主がすぐに気が付いた。
そうだろう、そうだろう。自慢じゃないが伊達に毎日召喚されてきているわけじゃない。最近は外へも出ているし、しっかりと外からアパートを見ているのでかなりリアルに再現をしているつもりだ。
しかも、ちゃんと僕の部屋(ゲーム内)の窓から全体像が見える位置に建設をしているので仕上がりを上からも確認できる。ああ、完璧だ。早く仕上げたい。……とは思うものの。
「……酔いそう…………かも」
40分くらい遊んだところで例のアレが来た。とりあえずコントローラーを手放して目を休める。
やはり、現状一時間くらいが僕の限界のようだ。これ以上続けたら昨日のような状態になるだろうことは考えなくても分かる。危険を避けるならここでやめた方がいい。
でも――。
もっとやりたい!
早く完成させたい!!
いや! だが!! しかし……!!!
「ね……、ねえ。私もちょっとやってみていいかな……?」
いつの間にか僕の隣に移動し、興味深げに作業を見ていた召喚主がそんな事を言い出した。
「あのね、せっかくだからアパートのお風呂を広くしたいのよ。あ、この辺に花壇も欲しいな。きっと塔から見えるわよ。お野菜とかも植えちゃおうか。家庭菜園なんかもいいわよね」
「!!! いいな!」
どうやら見ているうちに自分でも手を加えてみたくなったらしい。コツコツと風呂場を改造しながらもアパートを完成に近づけていく。流石は住人。自分好みの風呂場を手に入れつつも、外観はそのままだ。
3D酔いをさましながらも時折それを確認していたら、30分くらいたったところで召喚主がギブアップした。
どうやら、今度は召喚主が3D酔いをしたらしい。
どうやら僕は上限一時間。召喚主は一時間半ほどで限界点がくるらしい。
早く完成させたい。
せっかくだからココはこうしたい。
でも、3D酔いはしたくない。
そんなことを二人で話しながら休憩していたら。
「あ、じゃあ、交互にやって、酔う前に交代すれば効率いいんじゃない?」
「それだ!!」
こうして――僕と、召喚主の初めての共同建設作業が始まった。
舌に張り付く甘いあんこを温かいお茶で流し込む。
緑茶が合いそうだが、残念ながら今日はノンカフェインの紅茶。でも、コレはコレで合うな! お茶が進む。
ゴクゴクゴク。
……じゃなくて。
なんか、よく分からないが召喚主は寝坊したことしか気にしていないようだ。それはそれで複雑ではあるが……。
とりあえずは怒ってもいないし、変な空気にならなくて良かった。僕が寝ぼけたのが全ての元凶だ。睡眠さえ足りていれば、もう少し寝起きはいいはずなんだ。
あんなことにならないように、これからはより一層気をつけよう。
そう。今まで以上に規則正しい生活を送るのだ。早寝、早起き。コレが大事。そのためにも長時間の昼寝は避けなければならない。そうなると、3D酔い対策が必須となってくる。
現状どうしても酔ってしまうのならば、効率的なゲームの仕方を考えなければ……!
とりあえずゲームを起動して、僕が作りあげた『幽閉中の塔』へと入った。
我ながらよくできている。
出入り口のカギまでは再現できなかったが、割とリアルだ。こうしていると、昨日の落ち着きのない気持ちまでもがよみがえってくるくらい。
塔の僕の部屋には一応窓がある。それもリアルに再現させてある。空気の入れ替えを出来るのはいいけれど、城からはかなり離れていて、方向も違うので窓から見えるのは木々ばかり。それがよりいっそう孤独を感じさせてくる。そんなとこまでそっくりだ。
それを見て思う。
せっかくだから、隣に召喚主でも住んでいたらいいのに。
――で、思った。
ゲーム内ならそんなことだってできるじゃないか――と。
「あれ? コレって、もしかしてうちのアパート……?」
「! 分かるか!?」
早速、夢中になってアパート建設を続けていると、僕の後ろで建築作業を眺めていた召喚主がすぐに気が付いた。
そうだろう、そうだろう。自慢じゃないが伊達に毎日召喚されてきているわけじゃない。最近は外へも出ているし、しっかりと外からアパートを見ているのでかなりリアルに再現をしているつもりだ。
しかも、ちゃんと僕の部屋(ゲーム内)の窓から全体像が見える位置に建設をしているので仕上がりを上からも確認できる。ああ、完璧だ。早く仕上げたい。……とは思うものの。
「……酔いそう…………かも」
40分くらい遊んだところで例のアレが来た。とりあえずコントローラーを手放して目を休める。
やはり、現状一時間くらいが僕の限界のようだ。これ以上続けたら昨日のような状態になるだろうことは考えなくても分かる。危険を避けるならここでやめた方がいい。
でも――。
もっとやりたい!
早く完成させたい!!
いや! だが!! しかし……!!!
「ね……、ねえ。私もちょっとやってみていいかな……?」
いつの間にか僕の隣に移動し、興味深げに作業を見ていた召喚主がそんな事を言い出した。
「あのね、せっかくだからアパートのお風呂を広くしたいのよ。あ、この辺に花壇も欲しいな。きっと塔から見えるわよ。お野菜とかも植えちゃおうか。家庭菜園なんかもいいわよね」
「!!! いいな!」
どうやら見ているうちに自分でも手を加えてみたくなったらしい。コツコツと風呂場を改造しながらもアパートを完成に近づけていく。流石は住人。自分好みの風呂場を手に入れつつも、外観はそのままだ。
3D酔いをさましながらも時折それを確認していたら、30分くらいたったところで召喚主がギブアップした。
どうやら、今度は召喚主が3D酔いをしたらしい。
どうやら僕は上限一時間。召喚主は一時間半ほどで限界点がくるらしい。
早く完成させたい。
せっかくだからココはこうしたい。
でも、3D酔いはしたくない。
そんなことを二人で話しながら休憩していたら。
「あ、じゃあ、交互にやって、酔う前に交代すれば効率いいんじゃない?」
「それだ!!」
こうして――僕と、召喚主の初めての共同建設作業が始まった。
58
あなたにおすすめの小説
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)
松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。
平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり……
恋愛、家族愛、友情、部活に進路……
緩やかでほんのり甘い青春模様。
*関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…)
★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。
*関連作品
『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点)
『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)
上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。
(以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
幸せを望まなかった彼女が、最後に手に入れたのは?
みん
恋愛
1人暮らしをしている秘密の多い訳ありヒロインを、イケメンな騎士が、そのヒロインの心を解かしながらジワジワと攻めて囲っていく─みたいな話です。
❋誤字脱字には気を付けてはいますが、あると思います。すみません。
❋独自設定あります。
❋他視点の話もあります。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる