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84 偽王子(腹黒)との攻防戦
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「ここしばらく、わたくし――王子の様子がなんか変だなあ、とか思いませんでしたか?」
「王子はいつだって少し変です」
主に努力の方向性。
「そうですか。――『真偽』」
「ところでいつもそんなよそよそしい口調なのですか?」
「いいえ? たまにノリで変えているだけです」
主に乾燥機役をやってもらう時とかね。敬語になりますよ。ええ。ええ。気持ちよく魔法を使ってもらいたいですからね。
「『真偽』……ふむ」
「姿形が変わるにしても……『猫耳』とかがついていたりしていたら流石に驚きません?」
「前に角が付いていたことがあるそうなので、猫耳くらいは想定の範囲内です」
そう、まったく不思議はない。ファンタジーなら何でもありだ。しっぽが生えていたって気にしない。
それに、動物は好きだしね。私も昔は飼っていた。アパート暮らしでは動物と接する機会はないけれど、偽王子の猫耳でちょっぴり癒された。なので、猫耳だろうが犬耳だろうが、鳥の羽だろうが大歓迎ですよ。
ああ、それらは目の前の腹黒さんにも似合いそう。イケメンって、眼鏡だろうが猫耳だろうが何でも似合うから得だよね。二次元だろうが三次元だろうが、見ている私の感想は変わらない。ただ一言、お似合いです――だ。
「『真偽』――ふむ。やはり嘘はない――か」
『真偽、真偽、真偽』――何かを質問される度、目の前の偽者さんは眼鏡をクイっと上げながら切り札っぽいそれを多用してくる。
あっ、クイっとするときにちょっとレンズに指が触れた。なるほど。それでそこだけ汚れるのか。納得。
それにしても前の二人のように魔法の回数制限はないのだろうか。
最初のうちは緊張していたが、なんだか少し慣れてきた。眼鏡を楽しむ余裕が出てきた。状況が変わったなら対応が変わるだけだ。問題ない。そして私は嘘はつかない。
そのうち根負けしたのか、非常にお似合いの眼鏡をはずし、「ふう」――とか言って目頭を押さえた。お疲れのようだ。
そういえば、召喚されて以降、座ることもせずに質問というか尋問続き。これは疲れるだろう。私も疲れた。
なので。
「えーと、ひとまずお茶にしませんか?」
私の提案にようやく座ってくれたのはいいけれど、これまでに用意していた飲食物に手を付ける様子はない。
ちなみにお飲み物は偽王子(大)さん用に用意した甘さ控えめのミルクたっぷりコーヒーです。お飲み物の好みも違うのね。
まあ、すっかり冷めてしまったソレを今更飲むとも思えない。これは後で私が美味しくいただくとして、今は別の飲み物に変えた方がいいだろう。
丁度いい物が冷蔵庫に入っている。
――で、新しく用意したのがコチラ。
エナジードリンク☆
そう、ゲームのお供。集中したいときの必需品。……と、言ってもお兄ちゃんの受け売りだけどね。
基本、私はそこまで集中力のいるゲームはやらないので、これはちょっと前の集中講義で朝から夕方までのみっちり授業でお疲れモードだったときになんとなく購入したモノの残りだ。
飲むと元気が出るような気がするから今の偽王子(腹黒)にはピッタリだろう。私も疲れたので気分転換にちょっと飲みたいし。
とはいえ、偽王子から質問攻めにあっていたので既に夕方。私は明日も早朝からバイトがあるので飲み過ぎは厳禁。眠れなくなったら困る。
――という訳で。
プシュ。
大小二つのコップを用意して、用意したそれを注ぐ。腹黒さんにはなみなみと。自分には一口サイズのグラスに少しだけ。
そして――その一口を一気に呷った。
うーん、おいしい!!
「――なるほど、毒見というわけですか」
感心した――という風にウンウン頷く腹黒偽王子。
いえ、どちらかというと味見です。だって、普通にジュースとしても美味しいよねー。早く寝ないといけないので量は控えめにするけれど。
腹黒さんがいてくれてよかったな。少し気分転換をしたかっただけだから、私としてはこれくらいを分けてもらうのがちょうどいい。
もしかしたら何かの混入でも疑っていたのかもしれない。味見という毒見をしたことで腹黒さんも警戒心が解けたのか、先ほどまでとは違いグラスに口をつけた。――で、驚いたような顔をした後、一気に飲んだ。どうやら気に入ってもらえたようだ。
まあ、それはそうだよねー。ずっと質問続きで喉も乾いていただろうし。――で、見ていたら座り心地が悪そうだったから最近購入したクッションを勧めたら素直に従った。
ゲーム用に購入したそのクッション。座り心地がいいんだけど、少し小さいんだよね。夏休み、本腰を入れてゲームをするために、もう一段大きいのを買おうかと悩んでいたんだけど――。
「ああすごい。これは駄目になりそうです……」
偽王子(腹黒)がぽそっと漏らしたその一言を私は聞き逃さなかった。
「王子はいつだって少し変です」
主に努力の方向性。
「そうですか。――『真偽』」
「ところでいつもそんなよそよそしい口調なのですか?」
「いいえ? たまにノリで変えているだけです」
主に乾燥機役をやってもらう時とかね。敬語になりますよ。ええ。ええ。気持ちよく魔法を使ってもらいたいですからね。
「『真偽』……ふむ」
「姿形が変わるにしても……『猫耳』とかがついていたりしていたら流石に驚きません?」
「前に角が付いていたことがあるそうなので、猫耳くらいは想定の範囲内です」
そう、まったく不思議はない。ファンタジーなら何でもありだ。しっぽが生えていたって気にしない。
それに、動物は好きだしね。私も昔は飼っていた。アパート暮らしでは動物と接する機会はないけれど、偽王子の猫耳でちょっぴり癒された。なので、猫耳だろうが犬耳だろうが、鳥の羽だろうが大歓迎ですよ。
ああ、それらは目の前の腹黒さんにも似合いそう。イケメンって、眼鏡だろうが猫耳だろうが何でも似合うから得だよね。二次元だろうが三次元だろうが、見ている私の感想は変わらない。ただ一言、お似合いです――だ。
「『真偽』――ふむ。やはり嘘はない――か」
『真偽、真偽、真偽』――何かを質問される度、目の前の偽者さんは眼鏡をクイっと上げながら切り札っぽいそれを多用してくる。
あっ、クイっとするときにちょっとレンズに指が触れた。なるほど。それでそこだけ汚れるのか。納得。
それにしても前の二人のように魔法の回数制限はないのだろうか。
最初のうちは緊張していたが、なんだか少し慣れてきた。眼鏡を楽しむ余裕が出てきた。状況が変わったなら対応が変わるだけだ。問題ない。そして私は嘘はつかない。
そのうち根負けしたのか、非常にお似合いの眼鏡をはずし、「ふう」――とか言って目頭を押さえた。お疲れのようだ。
そういえば、召喚されて以降、座ることもせずに質問というか尋問続き。これは疲れるだろう。私も疲れた。
なので。
「えーと、ひとまずお茶にしませんか?」
私の提案にようやく座ってくれたのはいいけれど、これまでに用意していた飲食物に手を付ける様子はない。
ちなみにお飲み物は偽王子(大)さん用に用意した甘さ控えめのミルクたっぷりコーヒーです。お飲み物の好みも違うのね。
まあ、すっかり冷めてしまったソレを今更飲むとも思えない。これは後で私が美味しくいただくとして、今は別の飲み物に変えた方がいいだろう。
丁度いい物が冷蔵庫に入っている。
――で、新しく用意したのがコチラ。
エナジードリンク☆
そう、ゲームのお供。集中したいときの必需品。……と、言ってもお兄ちゃんの受け売りだけどね。
基本、私はそこまで集中力のいるゲームはやらないので、これはちょっと前の集中講義で朝から夕方までのみっちり授業でお疲れモードだったときになんとなく購入したモノの残りだ。
飲むと元気が出るような気がするから今の偽王子(腹黒)にはピッタリだろう。私も疲れたので気分転換にちょっと飲みたいし。
とはいえ、偽王子から質問攻めにあっていたので既に夕方。私は明日も早朝からバイトがあるので飲み過ぎは厳禁。眠れなくなったら困る。
――という訳で。
プシュ。
大小二つのコップを用意して、用意したそれを注ぐ。腹黒さんにはなみなみと。自分には一口サイズのグラスに少しだけ。
そして――その一口を一気に呷った。
うーん、おいしい!!
「――なるほど、毒見というわけですか」
感心した――という風にウンウン頷く腹黒偽王子。
いえ、どちらかというと味見です。だって、普通にジュースとしても美味しいよねー。早く寝ないといけないので量は控えめにするけれど。
腹黒さんがいてくれてよかったな。少し気分転換をしたかっただけだから、私としてはこれくらいを分けてもらうのがちょうどいい。
もしかしたら何かの混入でも疑っていたのかもしれない。味見という毒見をしたことで腹黒さんも警戒心が解けたのか、先ほどまでとは違いグラスに口をつけた。――で、驚いたような顔をした後、一気に飲んだ。どうやら気に入ってもらえたようだ。
まあ、それはそうだよねー。ずっと質問続きで喉も乾いていただろうし。――で、見ていたら座り心地が悪そうだったから最近購入したクッションを勧めたら素直に従った。
ゲーム用に購入したそのクッション。座り心地がいいんだけど、少し小さいんだよね。夏休み、本腰を入れてゲームをするために、もう一段大きいのを買おうかと悩んでいたんだけど――。
「ああすごい。これは駄目になりそうです……」
偽王子(腹黒)がぽそっと漏らしたその一言を私は聞き逃さなかった。
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