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244 誘惑に負ける貪欲王子様
しおりを挟む「しまった、そっちも美味しそうだったな」
――あ、やっぱり。
あのタピオカ店メニューの数が多いから、王子もギリギリまで何を注文しようか悩んでいたもんね。後ろが詰まっていたから、結局は王子の大好きなミルクティーに落ち着いていたけど。
あ~あ、まったくしょうがないな~、王子は。
午前中とやっていることがまったく一緒。まあ、私の方は日頃から飲むものは決まっているから悩みませんでしたけどね。メニューを見て、サクッと注文しましたよ。
私はサッパリする抹茶系一択で――――――。
……しまった、そっちも美味しそうだったな。
定番メニューは飽きたからといっても、もう少し悩むべきだったか。一周まわって王子の飲んでいるタピオカミルクティーが美味しそうに見えてきた。
――と、いう訳で。
「それじゃ、こっちも飲めばいいじゃない。私も、王子のタピオカミルクティー飲んでみたいし。交換しようよ」
「いいな、ソレ!」
王子の了承を得られたので、お互い半分飲んでところで交換です。もう一回お店に並ぶのは面倒だし、それじゃ半額の意味ないし、何よりお腹タプタプになっちゃいますからね。
摂取カロリーと私のお財布事情を考えて半分こくらいで充分。
「おお、こっちもサッパリしていて美味しいな。何よりこの緑色がキレイだ」
「でしょー? でも、王子の選んだミルクティーも美味しいわよ。やっぱり定番は最強なのかもしれないわ。それにしても、王子ってば言葉も通じない状態で、よくあのお店が半額になっているのに気が付いたわね? 閉店しちゃうお店には悪いけど、こんな機会滅多にないから超ラッキー。しかも、王子と半分こにしたから二種類のお味が楽しめてかなりお得だったわ」
「……ふぅ、美味しかった! いや、いや、夜のスーパーで半額シールは見慣れているからな! 例え自動翻訳切れても『半額』は読めるぞ。――そうか、『半分こ』もお得か! モーニングも『半分こ』だったしな! なるほど、なるほど。途中で交換したからこのタピオカ? も『半分こ』でお得……。ん……? これって……途中で交換ってつまり、乙女ゲーとかでよく見る…………間接………………(ボソボソ)」
うんうん。王子の言う通り、実質一杯分のお金で二人分買えたし『お得』で大満足! 王子もこんなに大喜びだし……って、あれ? 何か王子が下を向いて固まっていますね。
「ちょっと王子、どうしたの? あ、もしかして冷たいものを飲み過ぎたせいで体が冷えちゃった? 顔が赤い……」
「い、いや、その……。……僕は誘惑に負けて別の欲というか…(ゴニョゴニョ)割と大事なことを見逃しているのかもしれない……と反省したと言うか、なんというか……」
「――えっ!? 今、なんて!??」
「――い、いや! うん! そうだな!! 召喚主の言う通り、体が冷えたのかもしれないな!!!」
「そ…そう……?」
…焦った……。気が付かれたかと思った。
……実は…………王子は気付かなかったみたいだけど、駅前に例の……いつか連れて行ってあげたいと思っていた、規模の大きいゲームセンターがあったんだよね…………。
観光モードに入っている今の貪欲王子にあれは危険……。って言うか、私の財政状況的にアレはヤバい……。
スーパー併設のゲームコーナーとは訳が違うもの。
…だって……。
あの店はゲーム・漫画・アニメ好きにはたまらない最新のプライズがてんこ盛り。クレーンゲームだけでも比べ物にならないくらいの量があるし、メダルゲームときたら種類も豊富でエンタメ性の高いゲームも多く、客を飽きさせない――何事にも魅了堕ちしやすい王子がドハマりすること間違いなしだ。
しかも、それでいて全体的に金額お高めときてる。
500円もあればそこそこ遊べて満足できるスーパー併設のゲームコーナーとは必要となる金額が違うのだ。ヘタしたらバイト代くらい余裕で消える。
王子を連れて行ってあげたい。連れて行ってあげたいけれど、散財しちゃった今じゃない。
そう。節約とバイトを頑張って、もーちょい軍資金に余裕が出来てから!!
「よし、じゃー、王子! とりあえず早く帰って、いつもみたいにローブ暖房にくるまりながら、一緒にぬくぬくゲームをしましょうか!」
「!!!! そうだな!! そうしよう!!!! 大きいゲーセンは時間もないし、また今度な!!」
……おおっと、気付かれていましたね。…チッ……。
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