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318 偽王子(猫耳)の匂いチェック
しおりを挟む羞恥心から逃げ出そうとしても、しっかりと偽王子(猫耳)に押さえ込まれているせいで動けない。
くっそ、見かけによらず馬鹿力な猫ちゃんめ。
……はっ! もしや、これは猫ちゃんモードの偽王子(猫耳)を人間との体格差を利用して抱っこしまくっている私への復讐なのか!?
確かに、完全に猫ちゃん扱いしてスンスンと匂いを嗅いだことはありますし。ゴロゴロと喉を鳴らしてはいたけれど、アレ本当は嫌だったのかも……。
何てことだ。ごめん、猫ちゃん! 謝るから許して!!
「スンスンスン……うん、大丈夫。他の猫の匂いはないな! あの、やたらねちっこいムカつく嫌な匂いも無くなってるし、今は召喚主とオニギリのいい匂いしかしない! これはシャケとシーチキンと……スンスン……おかかかな? やりぃ♪ 盛沢山じゃん!」
――と、今度はゴロゴロと喉を鳴らして、ぎゅーっと私に抱き着いてくる。
あ、これあれだ。寝ぼけた猫ちゃんがよくやってくるやつ。
あの腕にしがみつくしぐさが可愛くてねぇ……。
……って、いやいやいや、オニギリ盛沢山で嬉しいのは解ったけど! オニギリの具も正解だけど!!
猫ちゃんの時ならともかく、獣人の姿でコレはやめて! 今の猫ちゃん身体が大きいから、完全にすっぽりと抱き込まれちゃってるじゃん!!
あと、その『やたらねちっこいムカつく嫌な匂い』って何!?? 私、普段からそんな嫌な匂いを発しているの?
軽くショックを受ける私をよそに、猫ちゃんは大はしゃぎで更に抱き着いてくる。
「お♪ やっぱ、いーなー! この、ふわもこ(?)の感触。触り心地もいいし、召喚主とオニギリのいい匂いがするし、こうしてギューッとしながら頬っぺたスリスリしていると、テンション爆上がりで……段々と…妙な気分……に……」
「……ちょ、どこ触って……って、ダメだってば、ストップ! いけません! 猫ちゃん落ち着いて! 良い子にしないと、オニギリあげませんよ」
――――ピタ。
「おっと、そうだった! こんなことしている場合じゃないんだった!!」
好物のオニギリ効果は絶大。
偽王子(猫耳)はすぐに動きを止めて体を起こす。
――が、段々と猫ちゃんの大人キレイな顔が私に近づいて来て……。
こつん☆
――と、前髪を上げておでこを合わせてきた。
そして、続けて何かを確認するように、大きな手でペタペタと私のおでこを触ってくる。
うん? なんだろう。前もこんな動きをしてきたような……。
あの時は偽王子(猫耳)も猫の姿だったから可愛かったけど、今は無駄に整った顔がすぐ目の前にあって、この状態はただただ落ち着かない。
「――うん、大丈夫。いつも通りだ。やっぱり猫の状態よりも、人の肌の方が細かい感触は解りやすいな。ほら、オレらみたいな獣人は猫の時と人間の時で若干感覚が違うからさぁ。一応魔法でも健康状態の確認はできるけど、種族によって体温とか違うじゃん? だから念のため……って、いやいや、オレは王子だけどね?」
……おっと。外見は大人になっても、その大胆な誤魔化し方は成長しないようですね。変わらぬおバカぶりに何かちょっと安心した。
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