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319 王家の影と機密情報
しおりを挟む「…えーと。猫ちゃ……じゃなかった、王子ってばこの前も熱を測っていたけど、何でそんなに私の体温が気になるの?」
「ばぁーか。いくら召喚主だからって、そんなの聞かれてホイホイ言えるわけねーだろ。ったく、お前、夜中に間違い召喚しやがってさー。久しぶりに遊んでもらえると思って王子が寝てる隙に大喜びでこっちに来たのに、お前ってば机に突っ伏してまったく反応しないから焦ったぜ。しかも、魔法で確かめたら風邪で高熱出してヤバい状態になってっから、仕方なく本当は使っちゃいけない制約魔法でお前の風邪をオレが肩代わりして無理やり治してやったけど、そういうのって迂闊にペラペラ言えないじゃん? 王家の影って守秘義務あるし、何気に罰則とかエグイしさぁ。ほら、オレが召喚主にこっそり使った制約魔法ってやたら汎用性が高いから取り扱い注意で国の機密指定を受けてるし。アレって他国とかに存在を知られるだけでもまずいんだよね。つっても、陰湿腹黒眼鏡上司には希少な思考翻訳スキルがあるからお前に使ったのもバレバレだけどな。ああいう希少スキルとか使用制限のかかった魔法とか、そういう機密情報ってバレたら相手の口封じしなきゃいけないとか、面倒くさい決まりも色々あるし、オレみたいに口が堅くて行動力あるやつにしか王家の影は務まらないの。今回の件に関しては珍しく眼鏡上司によくやったって褒めてもらえたし、仕事代わってもらってゆっくり眠れたし、オレ的にはいいことずくめだったけどな。オレらみたいな獣人って、成長期入るとやたら眠いんだよ。最近は王子の護衛サボって影だとバレないように獣化してその辺で適当に眠ってるけど、あのバカ暇に飽かせてやたらオレを捕まえて餌付けしようとしてくるからマジうぜぇ。なにが目的なのか知らねーけど、オレのお気に入りのお昼寝ポイントで待ち伏せとかするんだよ。幽閉されているとはいえ、王族のくせに影の扱い酷くない? アイツが持ってくる魚のおやつは欲しいからそれだけはキッチリ奪うけどな。やっぱさー、オレもこうして大人のオスの仲間入りをしたからにはちゃんと頭を使わないとね。見かけたら猫なで声で王子に近づいて、貰うもの貰ったらキャッチアンド猛ダッシュで退散よ。アイツ、何度もオレに騙されてて超ウケル。流石に王家の影として警護対象に危害くわえるわけにもいかないし、今までみたいに適当にやってバレたら後で口封じすればいいやみたいな大雑把なことはできないからな。元々獣人はそういう頭使うこと苦手だったりはするけど、そこはホラ、オレってば狭き門である王家の影に抜擢されるくらいの超エリートだし? 影の内部にスパイ入り込むとまずいから詳しい選考基準とかは内緒だけど、魔力操作が得意で王子の魔力に偽装できるからって選ばれたんだよね。まー、いわゆるスカウトってやつ。あの陰険眼鏡メッチャ性格悪いけど人を見る目だけはあるよな。まあ、人ってか俺は獣人なわけだけど。王子の魔力ってあり得ないくらい多い上に性格と一緒で魔力の動きの予想がつかないから、マネできるやつ少ないんだよ。そういやそれも国家機密とか言ってたな。アイツ目当てで幽閉中の塔に忍び込んでくる暗殺者とか結構いるし。そんなわけでアイツの魔力に完全に合わせられるのってオレ含めて三人くらいしかいねーの。流石にメンバーは秘密だけどね。オレとー、腹黒眼鏡とー、やたらでっけえ筋肉バカ。アイツも大変だよなー。せっかく騎士団所属で将来有望だったのに、魔力操作が得意だったばかりに配置転換で無理やり王家の影にされちゃって。まー、大昔と違って最近はウチの国でも魔力少ない奴が増えてきているから仕方ないところではあるんだけどさ。そのおかげでちょっとくらいやらかしてもあの王子同様処分されることはないって安心感はあるけど、そこはほら、オレにも『王家の影としてのプロ意識』ってものがあるからさ。あはは、言わせんなよ、恥ずかしい。いや、オレは王子なんだけどね……って、アレ? 今って何の話をしていたんだっけ? オレ、謹慎解けたばっかだから、流石にこのタイミングで問題起こすとまずいんだよね。仕方ない。ここは念のため、初心に帰って大雑把にサクッと口封じ……」
「やあねえ、王子ったら! オニギリの話をしていただけじゃない!! シャケとシーチキンとおかかと、実はササミもあるの! お茶入れるから早速食べる!? あ、王子には特別に魚のおやつも付けちゃおっかなー!」
「やったー、食べる―!!!!」
……身体は成長しても、猫ちゃんの情報漏洩グセは直っていないようだ。
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