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本編
6 悪役令嬢とアルバイト
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二度目の冬が来て。
自称ヒロインと悪役令嬢が帰国する日まで三カ月を切った。帰るのは卒業式の翌日だ。
この頃、急に悪役令嬢が「アルバイトをしてみたい」と言い出した。彼女は異世界ではかなり高い身分らしいし、変なバイトはさせられない。先生に相談し、休日に学校で行われる試験の受付のバイトをすることになった。
この頃には俺も推薦で進路が決まっていたので一緒にやることにした。受験者が来たら番号を見て、教室の場所を教える。それだけのバイト。しかも校内だから安全だ。
ただこのバイト、吹きさらしの校門の横で突っ立っていなくてはならない。小さなストーブはあるが、かなり寒い。俺もやったことはあるが、希望したというよりは仲のいい教師に押し付けられた、と言った方がいいだろう。かなりキツイので、人気のないバイトだ。試験が終わるまでの時間で、五千円の収入。正直、あまり割に合う仕事ではないと思う。
それでも、悪役令嬢は楽しそうだった。かじかんだ手をさすりつつ、受験者が来たらにこやかに案内する。その姿を見て、ああそうだと、俺は彼女に使い捨てカイロを手渡した。
「あったかい……!」
怪訝そうに受け取った悪役令嬢は手に持った瞬間、目を見開いて驚いた。揉んだり振ったり、とても興味津々だ。
「素晴らしいですわ。どういう仕組みですの? これがあれば、国民は冬も暖かく過ごせますわね!」
そう興奮する姿を見て、少しだけ複雑な気分になる。と、同時に尊敬もする。彼女の優先順位は常に国やその国民だ。
自らの冷えた指先など気にしてもいない。自分と同じ年齢で、既に色々なものを背負っているのだ。
彼女は第一王子の婚約者だと言っていた。いずれ、その王子と共に国や国民を育んでいくのだろう。きっと彼女なら素晴らしい国を作っていけるに違いない。
バイト代が入ると悪役令嬢は珍しくデパートに行きたがった。
彼女のお気に入りは100均だ。召喚された直後から、必要なものは大体そこで揃えている。最初に連れて行ったときは大喜びだった。もう何度付き合わされたか分からない。
服だって買うのは庶民向けの激安量販店だ。しかも、着回しのきくものを選んでいる。
だから、何を買うのかと思ったら。
「その……婚約者に」
と言って、質の良いシルクのハンカチを四千円で買っていた。
ああそうか。国に帰る日も近い。自分で働いたお金でお土産を買いたかったのか。
その後、悪役令嬢は残ったお金で100均で何か買っていたが、何となく考え事をしてしまい何を買っていたのかは見ていない。
その後も変わらぬ日常が続いた。授業を受けて、放課後の教室で分からないところを教える。少しだけ変わったことがあったとすれば、放課後用事で教室を離れた俺を待っている間、例のハンカチに刺繍をしている姿をよく見ることくらいだ。
一針一針。凄まじい集中力で。
「私は第一王子の婚約者、私は第一王子の婚約者……」
ぶつぶつと言いながら針を動かす姿は怖くてちょっと声がかけられなかった。
自称ヒロインと悪役令嬢が帰国する日まで三カ月を切った。帰るのは卒業式の翌日だ。
この頃、急に悪役令嬢が「アルバイトをしてみたい」と言い出した。彼女は異世界ではかなり高い身分らしいし、変なバイトはさせられない。先生に相談し、休日に学校で行われる試験の受付のバイトをすることになった。
この頃には俺も推薦で進路が決まっていたので一緒にやることにした。受験者が来たら番号を見て、教室の場所を教える。それだけのバイト。しかも校内だから安全だ。
ただこのバイト、吹きさらしの校門の横で突っ立っていなくてはならない。小さなストーブはあるが、かなり寒い。俺もやったことはあるが、希望したというよりは仲のいい教師に押し付けられた、と言った方がいいだろう。かなりキツイので、人気のないバイトだ。試験が終わるまでの時間で、五千円の収入。正直、あまり割に合う仕事ではないと思う。
それでも、悪役令嬢は楽しそうだった。かじかんだ手をさすりつつ、受験者が来たらにこやかに案内する。その姿を見て、ああそうだと、俺は彼女に使い捨てカイロを手渡した。
「あったかい……!」
怪訝そうに受け取った悪役令嬢は手に持った瞬間、目を見開いて驚いた。揉んだり振ったり、とても興味津々だ。
「素晴らしいですわ。どういう仕組みですの? これがあれば、国民は冬も暖かく過ごせますわね!」
そう興奮する姿を見て、少しだけ複雑な気分になる。と、同時に尊敬もする。彼女の優先順位は常に国やその国民だ。
自らの冷えた指先など気にしてもいない。自分と同じ年齢で、既に色々なものを背負っているのだ。
彼女は第一王子の婚約者だと言っていた。いずれ、その王子と共に国や国民を育んでいくのだろう。きっと彼女なら素晴らしい国を作っていけるに違いない。
バイト代が入ると悪役令嬢は珍しくデパートに行きたがった。
彼女のお気に入りは100均だ。召喚された直後から、必要なものは大体そこで揃えている。最初に連れて行ったときは大喜びだった。もう何度付き合わされたか分からない。
服だって買うのは庶民向けの激安量販店だ。しかも、着回しのきくものを選んでいる。
だから、何を買うのかと思ったら。
「その……婚約者に」
と言って、質の良いシルクのハンカチを四千円で買っていた。
ああそうか。国に帰る日も近い。自分で働いたお金でお土産を買いたかったのか。
その後、悪役令嬢は残ったお金で100均で何か買っていたが、何となく考え事をしてしまい何を買っていたのかは見ていない。
その後も変わらぬ日常が続いた。授業を受けて、放課後の教室で分からないところを教える。少しだけ変わったことがあったとすれば、放課後用事で教室を離れた俺を待っている間、例のハンカチに刺繍をしている姿をよく見ることくらいだ。
一針一針。凄まじい集中力で。
「私は第一王子の婚約者、私は第一王子の婚約者……」
ぶつぶつと言いながら針を動かす姿は怖くてちょっと声がかけられなかった。
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