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2 夢と現実2
しおりを挟むどれくらいの間そうしていただろう。
抱きしめられて。
優しく髪を撫でられる
子ども扱いをされているようで気恥ずかしくはあるが、それで安心するのも事実だ。愛する者から繰り返し与えられる慈愛のそれが心地よく、ロイエは思い切り息を吸い込んだ。
夢で感じた不快な焦げた匂いはどこにもない。鼻腔に広がるのは長年慣れ親しんだ、愛する妻の香りだけ。
「……ああ、君の香りがする。この香水の香りは落ち着くな。嗅ぐだけで心が穏やかになる。……昔から私の一番好きな香りだ」
ロイエは縋りついていた良い香りのする身体を解放し、代わりに癒しを与えてくれた愛する妻へ感謝の口づけを贈ろうとして――――唇が触れ合う前に、妻の美しい指先でロイエの唇を押し戻されて阻まれてしまう。
構わず押し倒して強行しようとすると、ダーメ、と妻にクスクス笑われる。
「ふふふ……もう、陛下ったら。ソレだけじゃすまないのだからダメよ。昨日も……ううん、もう今日ね。『さっき』ので私も疲れているからこれ以上は許して。それにあんなに魘されていたのだから、少しは寝ないと陛下の体が持たないわ。さあ、まだ起きるには早いから、大人しく目を閉じて?」
「……ちぇっ」
ロイエは口をとがらせながらも、大人しく妻の横へと身を横たえる。仕方なく言われるままに目を閉じると、よくできましたとばかりに瞼に口づけが贈られた。
妻が言うようにロイエもやはり疲れていたのだろう。
安心する心地よい香りに包まれて。ロイエはあっという間に穏やかな眠りへと落ちて行った。
ごく短な悪夢の連続に疲れ切り。その分、愛する妻の温もりに癒された後に再び訪れた心地のよい眠りは深く、ちょっとやそっとじゃ目は覚めない。
だから、ロイエは隣で横たわる妻が起き上がり、ドアを開けたのにも気づかなかった。
※※※※※※※※
夫婦の寝室とはドア一枚を隔てて続き部屋になっている皇帝の妻に与えられている自室に戻ると、ヴィクトリアは真新しい鏡台の引き出しの中から小さな香水瓶を取り出した。
廊下側のドアをそっと開けて、入ってきたメイドに皇后愛用のそれを手渡す
「――処分して」
「お気に入りでしたのによろしいのですか?」
「ええ……もういらないの。実家から持ってきた私物だけど、物はいいから良かったら貴女にあげるわ。売っても自分で使ってもいいけれど、私がいる所でだけは絶対に使わないで。私もひと眠りするから今日はもういいわ」
「かしこまりました。ありがたく頂戴いたします」
失礼いたします……そう言うとメイドは深く頭を下げてまだ三分の二ほど液体が残っている香水瓶を両手で大事そうに持って、皇后の部屋を後にした。
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