【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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13 古いドレスと夫の番(ヴィクトリア視点)

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「わぁー、すっごぉーい。奇麗なドレスがいっぱーい。どれにしよっかなー? ロイは好きなの好きなだけ選んでいいって言ってたしぃ。うぅ~ん、ど・れ・に・し・よ♡」


 ゴソゴソ。バッサバッサ。

 皇帝の許可が出ている以上、夫の番が自らのドレスを乱雑に扱うのを見ていることしかできないヴィクトリアはどこかぼんやりとしていた。

 ……まさか、離縁することすら許されないとは思わなかったのだ。


 せめて実家へと帰ることが出来れば、愛する妻を早くに亡くした父親は、二人の愛の証でもあるヴィクトリアを喜んで迎え入れてくれるはずだったのに――。



「ん? 何コレだっさ! 古臭いデザイン~」


 バサッ!!


 女の言葉にヴィクトリアはハッとした。女が衣装室の床へと乱暴に投げ捨てたドレスをヴィクトリアは慌てて拾い上げる。


「ああ、ごめんなさいね。コレは……お貸しできないの。そうだ、こちらのドレスなんていかがかしら? 最新のデザインで若い女性に人気だし、色合い的にも貴女にお似合いになると思うの。私はまだ袖を通していないから、良かったら貴女に差し上げるわ」

「……ふ~ん? ま、いっか。キレーだし貰っとくわ。――でも、今日はこっちにするわよ……っと!」

「あ、ちょ……」

「うん。古臭いけどよく見たらこのドレスだって、物はすごくいいみたいだし?」


 最新のドレスを渡そうとした隙をつかれて。拾い上げたばかりの古いドレスを女に奪われ、ヴィクトリアは焦る。

 しかし、事情を話せば解ってもらえるはずだと心を落ち着けて、ニヤニヤと薄笑いを浮かべている女に説明をする。


「悪いけど、それは亡くなった私の母が生前によく着ていた『形見』のドレスなの。だから、それは……そのドレスだけはダメなの。他のドレスならどれでもお貸しするから……。ね? 形見のドレスを大切にする私の気持ち、解っていただけるでしょう?」

「はぁ? 何それ分かんなぁ~い。とにかくわたしはこれがいいの! ハイ決まり~」

「な……っ、ダメよ! お願いだから返してちょうだい」

「キャーッ! ヤダヤダ引っ張らないでよ、ロイー!! 助けて、ロイ―!!」


 女はまるで子供がふざけるように、ドレスを高い所へ持ち上げたり後ろ手に隠したり。

 女が乱雑に振り回すたびに大切なドレスの裾がこすれて、ヴィクトリアはとてもじゃないがそれ以上黙って見ていられなかった。

 仕方なく形見のドレスを取り返そうとすれば、女は大声を出し大袈裟に騒ぐ。

 まるで言葉の通じぬ野生の獣か反抗期の子供のようだ。


 だいたい、この女はあのドレスをつい先ほどまで古臭いだなんだと、嘲っていたのに。一度は自ら床へと投げ捨てておいて、この女はいったい何がしたいのか。




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