【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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14 失望(ヴィクトリア視点)

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「どうした!? いったい何を騒いでいる!!!」


 突然。何の前触れもなくロイエがヴィクトリアの私室にある衣裳部屋へと入ってきた。後ろから、ヴィクトリア付きの侍女が慌てた様子で付いてくる。


「ロイ! 聞いて!! 皇后サマったら酷いのよ! わたしが遠慮してこの古いドレスを借りようと思ったら――わたしなんかに貸せないって言うの。この、胸の開いたドレスがわたしにはお似合いだって」

「ち……違うわっ! そんな言い方はしていないでしょう。私はただ、それは母の形見のドレスだから気持ちを察してほしいと……」

「ほらあっ!! わ、わたしに親がいないからって、まるで自慢でもするように……。ううっ、皇后サマったらひどいわ! うわぁぁ~~ん、ロイ~~ッ!」


 うえぇ~ん。ひぃっく、ひっく。

 あからさまな泣きまねでロイエに縋りつく女はさりげなくヴィクトリアの大切なドレスに顔を埋めている。ごしごしと、濃い化粧を擦り付けている様子が腹立たしくて仕方がない。


(まさか……まさか、陛下はこの件で相手の肩を持ったりしないわよね? 私、形見分けでいただいた、亡くなったお母様のドレスについては何度も話したし、大切にしているのは陛下だって知っている筈だもの)


 こればかりは譲れない、とヴィクトリアが縋る思いで夫を見上げれば。


「……はあ。君には失望したよ、ヴィクトリア」

「え?」


 予想以上に冷たい声で言い切られて、ヴィクトリアは硬直してしまう。なぜ。どうして。ヴィクトリアの発言におかしなところはない筈だ。

 むしろ、突然現れた本命を名乗る失礼な愛人に対し、これ以上なく礼を尽くしていると言ってもいいくらいなのに……。




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