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8 ドアマット夫人との交流
しおりを挟む伯爵夫人から聞いたところによると、どうやら食の好みはある程度外見の影響を受けるらしい。顎の強さや苦手としている食べ物も種族ごとに違うからだ。
そこで、犬の耳や犬のしっぽを持つ者は犬獣人用のものを、猫の耳や猫のしっぽを持つ者は猫獣人用のものを、というように、他種族国家らしく食事についてはかなり細分化をされているそうだ。そのため、このように大勢が集まる場所ではたくさんの料理を用意する必要があり、テーブルがいくつも並ぶこの光景を見て、初めてこの国を訪れる人間は皆、デュナミスと同じように驚くらしい。
言われてみれば、確かにテーブルごとにどこかしら似たような特徴を持つ者が集まっているように見える。そして、間違えて苦手なものを食すことが無いように、テーブルの端にはそれぞれの種族を模した可愛らしいマークが飾られていた。
伯爵夫人とデュナミスがいるテーブルにあるのは『人間』のマークだ。なるほど、よく考えられている。
この件をきっかけにして、二人はよく話をするようになった。
人間の特徴を有している伯爵夫人と人間のデュナミスとは食事の際に同じテーブルに集まることになるため、自然と会話する機会が増えたのもあるが、一番は伯爵夫人が人間国の話を聞きたがったからだ。
どうやら、デュナミスたち人間が一度は行ってみたいと遥か遠くにある獣人国や竜人国への興味を持っているように、獣人国に住む彼女も祖母から聞いた人間国に対して強い興味を持っていたらしい。
逃げるように国を出たデュナミスにとって祖国はつらい場所になってしまったが、それでも愛する家族が暮らす国だ。
そんな風に興味を持ってもらえることは素直に嬉しい。
そうやって話をするうちに、大人しそうに見えていた伯爵夫人がかなり好奇心旺盛な女性であることが分かった。
彼女は夫から与えられたボロボロのドレスを自分の手で直しているらしい。本来ならばメイドの仕事だろうに、どうして貴族の彼女がわざわざそのようなことを……と、家での扱いが透けて見える話に胸が痛んだが、伯爵夫人は悲愴感を漂わせるでもなく、上手にできたと楽しそうに話すのだ。
デュナミスはデュナミスで、この国について分からないことは彼女に聞いた。人間と獣人、双方の事情を知る彼女の説明はとても分かりやすく、仕事をする上でも大いに助けられた。
話ができるのは夜会で顔を合わせるほんの僅かな時間だけだったけれど、種族を超えた友情はしっかりと育まれていたと思う。
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