【完結】有能外交官はドアマット夫人の笑顔を守りたい

堀 和三盆

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23 お別れの夜会

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「デュナミス様には、何とお礼を言っていいか……」

「本当だ。君がいなかったらどうなっていたか分からない。あのまま妻の異変に気付かずにいたらと思うとゾッとするよ」


 デュナミスが外交官としての任期を終える際、アルテサーノ伯爵が盛大なお別れの夜会を開いてくれた。参加する女性陣は皆、パートナーから贈られた手作りドレスを身に着けている。

 夜会会場には美味しそうな料理がズラリと並び、種族ごとにテーブルが分かれているのは相変わらずだが、夫婦が共に楽しめるようにと、種族に関係なく食べられる料理も新たに用意されるようになった。
 種族フリーのテーブルには全ての種族を模したマークが仲良く並んでいる。これなら伯爵夫人のように愛情過多に苦しむ番も夫の目を盗むことなく、堂々と食事を摂ることができるだろう。

 誤解から伯爵夫人に求婚しようとしたデュナミスだが、本来、他者の運命の番に手を出す行為は殺されても仕方がないらしい。それを考えると、威嚇するにとどめた伯爵の行動はかなり理性的だったことが分かる。
 ただ、今でもちょっぴり根に持っているのか、デュナミスが同席する際は妻から目を離すことなく、隣を陣取ってしっかりとガードしている。

 数々の誤解が解けた今となっては伯爵夫人に余計なちょっかいをかけるつもりはないのだが、やってしまったことがやってしまったことだけに、警戒されるのは仕方がない。

 そんな重めの愛情を向けられる伯爵夫人は大きなお腹を抱えて、初めて会った時と同じように、会場にいる誰よりも美しく輝いている。

 当然だ。あの頃も今も、彼女は運命の番との暮らしの中で、幸せの真っ只中にいたのだから。


 それを思えば、彼女の姿に見惚れてしまうのはごく自然なことだったのかもしれない――


 デュナミスがそんな感傷に浸っていると、アルテサーノ伯爵が表情を硬くして妻を支える手にグッと力を込めた。その様子見て思わず苦笑する。自分の付け入る隙など一切ないというのに。


「アルテサーノ伯爵。どうやら新たに企画したマタニティ―ドレスシリーズも好評のようですね。男爵領に住む子供たちの意見を取り入れて、着心地にこだわった布地の開発を進めた甲斐がありました」

「妊娠中は特に、運命の番への愛情が高まって過保護になるからな。初回出荷分は既に完売しているようだ。これまでと同じように番以外にも広まるだろうから、来年あたりは更に需要が増えるだろう。そちらの周辺国も巻き込んで増産した方がいいかもしれない。……デュナミス殿は、本当にこのまま国に帰ってしまうのか?」

「ええ。外交官としての任期が終わりましたので」




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