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後編
しおりを挟むそして、今。私は家を出て王都の書店で働いている。実は、不器用な私は習い事でつまずくたびに、ここで参考書を探して乗り越えていた。そして、乗り越えたからこそつまずきそうになる場所が分かっている私は妹のための参考書も用意してあげていた。
つまずくことなく何でも楽しく習得してきた妹は「この先」どうするのかな、と少しだけ心配になる。だって。彼女より先に教育を受けて、分かりやすくまとめてくれる人間はもういない。機密教育、王妃教育、習うことはまだまだあるのだ。
私は姉だし、小さい頃から妹の性格や苦手とするところも何となく察せたけど、流石にこの先は私も知らないし知ることのできない世界だからね。
でもまあ、妹が優秀なのは間違いないし、この先は両親が何とかするだろう。最近、両親が私を捜しまわっているそうだけど、もう籍を抜いたから関係ないし。
それよりも。
「あれ? 奥さんどこ行くの?」
従業員に声をかけ、書店を出ようとしたところで経営者である夫に声をかけられた。そう。私は既に結婚をしているのだ。
彼とは習い事の参考書を探すために、この店へと通っているうちに知り合った。妹のためにとやりたくもない習い事をさせられてつまずくたびに嫌な思いをしていたのが、楽しみに変わったのはいつの頃だったか。
彼はいつも親身になって丁度いい参考書を探すのを手伝ってくれて、だんだんと惹かれ始めて。いつの間にか店に来ること自体が楽しみになっていた。
でも、王太子殿下の婚約者に選ばれた時。これでもう諦めなきゃ、と思って店に通うのは止めた。流石に王太子妃教育の参考書はココにはないからね。
そうしたらもう、つまらないのなんのって。興味を保ち続けるのが大変だったわ。おかげで2年くらいでどうにかなりそうなところ、楽しくなるのに3年くらいかかったし。
私が王太子妃教育を楽しめるようになったのを見て、ようやく興味を持ってくれたやる気満々の妹がサクッとクリアしちゃったものだから、周りも婚約者の交代にあっさり同意できたんだよね。
中々授業に身が入らず、まだ、機密教育まで進んでいなかったのが幸いした。アレ受けたらもう、完全に逃げ出すことは不可能だったから。逃げ切りセーフ! 優秀な真似っこ妹ありがとう!! お姉ちゃんは自由になるわ!!!
そして、実家から籍を抜き自由になった私はここの就職試験を受けた。どこに何の本があるのかすっかり頭に入っているし、接客も自分が客として通って受けてきた分、自信がある。
彼も、急に店に来なくなった私を気にしていて、経営者として最終面接を行った時に感動の再会――ってことで、即結婚。現在私は妊娠中。永久就職になりました。
と、いうことで。
「産婦人科のマタニティー講座に。出産の呼吸法や赤ちゃんの知識を学びに行くの」
「あ、じゃあ俺も行く。しっかりサポートしたいから」
そうして店を出ようとしたときに。
「お姉さまばかりずるい! 私も! 楽しそうだから私もその習い事したいです」
懐かしの妹が現れた。どこで情報を聞きつけたのか。慌てて護衛らしき人間が追いかけてくるところをみると、抜け出したか、まいてきたに違いない。
「いや、だって、あなたまだ婚約中だから無理でしょう。早く教育終わらせないと、いつまでたってもコレは受けられないわよ」
私が家を出てから二年。妹は私の予想通り王家の機密教育あたりでつまずいているらしい。お姉様も一緒に……とか誘われたけどあり得ないから! ソレ、私は学べないし、興味もないし。
ってか、せっかく逃げられたのに今更関わるわけないっつうの。
姪っ子か甥っ子が出来るのは相当先になりそうな予感。全身真っ黒のローブを纏い、何故か顔の識別ができない影っぽい人たちに引きずられ王宮へと戻っていく妹を見て、そんな風に感じた。
「まあ、頑張って! 私は帰りに離乳食の料理教室申し込んでくるから!」
妹の背中にそう声をかけたら。
「お姉さまばかりずるい! 私もっ! 楽しそうだから私もぉぉ~…」
と遠くから返ってきた。……興味あるのか。
相変わらずブレない妹に感心しつつ、ようやく自由になった私は今日もやりたい習い事に出かけるのだった。
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