婚約破棄、ありがとうございます

奈井

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そっとお茶に口を付ければ少々冷えていました。

お茶を入れなおしてもらおうかな…。


「…それもそうだね。僕たちは自分たちのことばかり考えていたのかもしれないな。お互いの意見だけを通そうとしていてはダメだな。確かに今のままじゃ埒があかない。…あの2人を許すとかそういうことじゃなく、あの2人の事やエミリの未来も考えるべきだった。父さんはあの通り悲しみに毎日沈んでいるからね、ここは僕が動かなければいけなかったな。…エミリ、すまなかったね。」

そう言ってまっすぐに私の目を見て、少しだけ微笑んでくれた。

ここに来てはじめての笑顔ですね。

笑顔までいかないかもしれないけど、空気がやわらかいものに変わった気がします。


やっぱり、お茶を入れなおしてもらいましょうね。


すると、ベルナルダンお兄様が何かに気がついたような表情をしました。

なんですか?

「…もしかして、この件についてエミリは、もう気持ちの整理がついているの?なんだか、僕よりも落ち着いているように見えるけど。」

え?わかっちゃいました?

まあ、そうは言えないのですが。

「もしかして、もう今後の事は何か決まっているの?」

昔からベルナルダンお兄様の問いただす時の目は、逃げ道を塞がれる気がして、苦手です。

「いえ…決まっているわけでは…。」

私、今、目が泳いでいます…。

幼い時の隠し事もすぐにバレていたしね。

やっぱり、ベルナルダンお兄様にはわかるのかしら?

「もしかして、新しい結婚の申し込みが来てるの?あんな公の場でアイツが宣言したから、エミリには今婚約者がいない事はみんなが知っている事実だしね。」

ベルナルダンお兄様のするどい声。

あれ?

意外に見当違いな方向に少々安堵します。

「いえ…婚約破棄された身です。…傷を付いた品物を誰が欲しがると思いますか?…もう、私はどなたにも嫁ぐつもりはありません。修道院へ行く勇気もありませんので、フォンテーナ家が所有する、ここではないどこかへ行くつもりです。父も、しばらくはそうしろ、と許可してくれました。」

噂なんてすぐに飽きる、エミリはまだ若いのだから結婚相手もすぐに見つかる、とお父様には言われましたが、そんな気はありません。

だって、私はベルナルダンお兄様を…。

「私は…もうこちらへは戻って来ないつもりです。」

今、自分が考えている気持ちを正直にお伝えする。

ベルナルダンお兄様に嘘をつくのは1つだけと昔から決めていたから。

私の答えがベルナルダンお兄様の考えとあまりにもかけ離れていたせいなのか、ベルナルダンお兄様は目を伏せ黙り込んでしまいました。


「…ぼくもしばらくはそれでいいと思う。でも、戻ってこないなんて言わないで。エミリの顔が見れなくなるのは、寂しい。…この件が片付いたら僕も会いに行くよ。」

そんな嬉しい事をおしゃってくれるなんて、やっぱり優しいベルナルダンお兄様。

でも、甘えるわけにはいきません。

「いえ。…ベルナルダン様だって、ご自分のお相手を探さなければ。だから、お会いするのはこれが最後です。」




さようなら、私の恋。

育てられなかった、幼いままの恋心。

さようなら、ベルナルダンお兄様。





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