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しおりを挟む「それで、あなたが木登りをして落ちたという木はこれですか?」
グレン様が湖の近くにある大きな木を指差す。
それは正解なんですが…。
「グレン様…。その話は忘れてください、と先ほど申し上げましたでしょ?」
「アハハッ!すみません。あなたの困った顔を見たくて、意地悪をしてしまいました。」
謝っているけど、ぜんぜん悪いなんて思っていませんよね?
まだ顔が笑ってらっしゃるわ。
もう!頬が膨らんじゃいますよ、私。
グレン様は随分前からお兄様より私の事をいろいろ聞いてらっしゃるようでした。
小さい頃、木登りに失敗して手足が擦り傷でいっぱいになってしまった、私の恥ずかしい昔話を知っていらっしゃいましたし…。
今はしてませんよ、本当に小さい頃のお話なのに…。
それを持ち出されたら、おとなしく澄ました顔なんて続けられるわけがないじゃありませんか。
何度かそのようなやり取りをしていたら、グレン様は声をあげて笑うし、私も昨日お会いした時よりスラスラとおしゃべりができるようになってしまいました。
グレン様はお話上手なんですね。
それにしても、王宮でお見かけした時は怖いほど鋭い目つきをされていたので苦手そうな方だと思っていたのですが、声を出して笑ったりされるんですね。
印象が変わりましたし、そのほうが親しみやすいですよ。
「本当にすばらしく綺麗だなあ。」
湖を見て思わずグレン様の口をついて出た言葉は、いつもお話になっている口調なのでしょう。
初対面の私への気遣う話し方と違います。
「ステキでしょ?私もとても気に入ってます。」
私もグレン様のお側に立ってキラキラと光る湖を見ました。
ここへ来てから何度か湖を散歩していましたが、グレン様との楽しい会話のおかげで心が軽くなったせいか、今日はいつも以上に綺麗な景色に見えます。
湖が輝いていますし、空気も美味しいです。
「…そういうキラキラと輝いている瞳が見たかったんです。昨日、お会いした時や王宮でお見かけした時なども、笑顔でしたが…作られた印象でした。アルから聞いて、私が思い描いていた笑顔ではない気がして。今は、眩しいくらいステキな笑顔です。私が想像していた通りのあなただ。きっと、木登りをしていた幼いあなたもそんな瞳をしていたんでしょうね。」
そうおっしゃって、私を見て微笑むグレン様こそ、その笑顔の方がステキですよ。
少々見とれてしまった事は内緒です。
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