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しおりを挟む「仕事のうえで駆け引きのような話し方をする時もあるが、今日のあいつに嘘はない。」
夕食後、湯浴みの前にお兄様の部屋に呼ばれました。
部屋に入るとお兄様は窓より月を見上げていました。
湖が多いこの地域は、夕方から朝方にかけて霧が発生しやすく、こんなにハッキリと月が見えるのは珍しいのです。
「…あんな綺麗な目で嘘を付く方なら、お兄様は連れていらっしゃらないでしょ?」
まっすぐな少し鋭い眼差しが、ときどき私を優しく見つめている事に気がついたのは夕食の時。
「その通りだ。結婚相手としては、性格も家柄も申し分ないと思うが。…ルゥグホンの兄弟たちより。昔から、あいつらは気に入らなかった。まさか、こんな事をしてくれるとは…。」
「やっぱり!お兄様は口には出していらっしゃらなかったけど、お嫌いだったのね…。」
どうりで一緒に遊ぶどころか、ルゥグホン家にお兄様がお邪魔した記憶がないはずです。
「お前は気に入ってたし、気に入られてたからなあ。…特に兄貴の方は、兄としてお前を守る俺の役目をいつも取られていたから、おもしろくなかった。小さい頃された事はいつまでも根に持つもんさ。」
「…」
ヤキモチというのとはちょっと違いますが、そんな感じででしょうか?
お兄様心が狭いですよ。
「…手続きは滞りなく済んだ。婚約は解消されたよ。もう、あいつらに囚われる事はない。」
終わったのね、すべて。
ベルナルダンお兄様とも、もう関わりがないのね。
なにも繋がってない、そう思うだけで心に何か冷たい物を感じる。
「すぐに次を考えろとは言わない。でも、誰とも結婚しないなんて言うな。…1人で生きていくにはこれからの時間が長すぎる。愛する相手がいないなら、せめて一緒にいて心休まる相手を見つけてほしい。」
お兄様の言いたい事はわかります。
お父様やお兄様にご迷惑をかけていることはわかっておりますが…。
私はどうしたらいいのでしょうか?
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