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協力要請 side
協力要請 side:ノヴィラ
しおりを挟む今回は上の人達がEMANONに協力を要請したそうで、ニコライさんは終始渋い顔をしていた。
いくら人手不足でも、一般区民の手を借りるような真似はしたくないらしい。
EMANONの彼らは強いが特殊部隊ではないと、ニコライさんが上に何度も進言しているのは私も知っていた。
人類の英知を超えると噂されるロジェ・スマーニャさんはニコライさんの長年の友人である。
しかしニコライさんは友人だからこそ事件に関わってほしくないと愚痴を溢していた。
他人の私にはわからないが、ニコライさんにはニコライさんの思いがあるのだろう。
二人の関係は気安いもので、私には友人というにはもっと強い繋がりがあるように感じた。
そもそもの話、ロジェさんが所属するEMANONという組織自体がこの最下層では珍しいものだ。
慈善事業のような働きをしたかと思えば利益を追求する事もあるし、営利目的かと思えば施設や団体にポンと寄付している事もある。
黒かと問われたら黒ではないし、かと言って白かと問われたら白ではない不思議な存在だ。
私は突入の合図で部下達と一斉に建物内に入った。
抵抗する者を千切っては投げて制圧していると、視界の端に獣ではないかと思うような戦い方をする男が映った。
男の剣は見事なもので、荒々しくも魂を削るような技の連続だった。
後ろを振り返った時には既に会場は鎮静化していて、私は現場の警察官に取り調べをするよう指示を出すと、EMANONの人達を追いかけた。
シェルアさんはニコライさんの写真で顔を知っていたため、彼女に声をかける。
私は軽く自己紹介をすると、手を合わせて今回の協力について御礼を言った。
シェルアさんはこちらこそと思慮深い返事をすると、もう一人の女性は人手不足だと大変ですねとこちらを気遣う言葉をくれた。
最下層では珍しい部類に入る善良な人達だ。
改めて迷惑をかけた事をお詫びすると、シェルアさんは苦笑を浮かべた。
「お互い様ですから。あと……知ってると思うけど、私はシェルア。こっちは部下のマリアとブラッドです」
穏やかそうな彼女がマリアさんで、不機嫌そうに見える彼がブラッドさんだと紹介を受けた。
彼の方は戦闘の時に見せた強い眼差しはなりを潜めて、今はただだるそうに話を聞いている。
マリアさんは私の体調を心配してくれる優しい人だった。
「見かけたら気軽に声かけてください。私も力になりたいので」
「……! ありがとうございます」
「大変でしょうけど、お仕事頑張ってくださいね」
シェルアさんとマリアさんの優しい言葉に胸を打たれていると、犬の鳴き声が聞こえて二匹の犬がこちらに向かって走って来た。
犬の後ろには四人ほどこちらに向かって歩いて来ている。
一応確認のためシェルアさんに連れかと聞くと、やはりEMANONのメンバーだった。
手を合わせて名前を名乗ると、見た事のない小さい犬が私の足元にやって来て、笑ったような顔をした。
つぶらな目とふわふわの毛並みが可愛い。
きっとこの犬もEMANONの一員なのだろう。
私は撫でたい衝動に駆られたが、今は勤務中だとぐっと堪えてEMANONの皆さんに職務に戻ると言って敬礼した。
しかしマリアさんには私が撫でるのを我慢していたのがバレていたようで、次は撫でていってくださいと朗らかに言われてしまった。恥ずかしい。
私はマリアさんに是非と返事をすると、ニコライさんを探して走った。
ニコライさんはそう遠くない場所にいて、警察官二人と話し込んでいた。
少し離れた所で話が終わるのを待っていると、私に気付いたニコライさんがヒラリと手を挙げた。
「よ。終わったか?」
「はい、粗方は。EMANONの皆さんに挨拶をしていたら遅くなりました。すみません」
「構わねーよ。んで、どうだった?」
「現在は逮捕者三十二名。容疑を認めない者もいますが、限りなく黒に近いかと。また、薬物に関しては別の犯罪グループが関与しています」
「いや、そっちじゃなくてあいつらの方」
「あいつら?」
ニコライさんの言葉の意味がわからず、問いかけると、ニコライさんは口端を上げた。
「いい奴だったろ」
「ああ……はい。彼らの事ですか」
「新入りもいるらしいからな。気にかけてやってくれや」
「新入り?」
「なんだ、挨拶したんじゃなかったのか? 金髪に赤目の少年がいたろ」
ニコライさんに言われて振り返ると、確かに青年の隣に金髪に赤目の少年がいた事を思い出した。
「どうも訳ありなんだとよ」
「なるほど……?」
「お前、思い出せてねーだろ」
「違います。ただ、その……訳ありのようには見えなかったので」
目の色以外は平凡な少年に見えたと暗に言うと、ニコライさんは苦笑を浮かべた。
私はそれがなんだか居心地悪くて、おもむろに眼鏡のブリッジを上げた。
「此処じゃそんなんばっかだぞ。前住んでたとこはわかりやすい奴ばっかだったのか?」
「まあ……そうですね。比較的」
「そっちの方がやりやすくていいかもな」
「悪党見かけたら私刑でしたから」
「おぉ……」
ニコライさんは微妙な顔をした。
荒っぽそうに見えて規律は守る人だから、一般人が罪人に暴力を振るう行為は良しとしないらしい。
私は正直罪人がどうなろうと興味がないため、ニコライさんの心情は理解出来なかった。
「……それで、ニコライさん。私は次何をすれば?」
「あーそうだったな。じゃあ聴取に加わるか」
「はい」
「応援も来てるから日付変わる前には帰れんだろ。多分」
ニコライさんはそう言って内ポケットに手を突っ込んでスマホを取り出すと、どこかに電話をかけた。
通話の内容から、今から私は被害者の聴取に当たるらしかった。
女性の私なら言い難い事を話してくれるだろうという上司と同僚の見解だったが、私は生憎愛想が良い方ではない。
それでも被害者は私を女性の刑事だというだけで信用して、事件の詳細を話した。
時間は多少押したものの、今日はなんとか日付をまたぐ前に帰宅する事が出来た。
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