悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます

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「ご、ごめんねセリスさん」

「……謝らなくていい」

「でも……」

「そのかわりに……眼鏡を買いに、一緒に行ってくれるかしら?」

「僕が?」

「そうよ。あなたが眼鏡を勧めてきたというものあるけど。なんか詳しそうだから……トリスタンにお願いしたい」

 セリスさんの言うことは納得がいく内容だった。僕も彼女のためになるのなら、手伝うことに賛成だ。

「そうだねセリスさん。付き合うよ」

「……つ…………付き合うっ!?」

「うん、一緒に行くよ」

「あ……そ、そう。一緒に……来てくれるのね。じゃあ、今日とかどうかしら?」

「もちろん、いいよ」

 その日の放課後、僕たちはさっそく眼鏡を買いに行くことになった。でもセリスさんは準備をしたいから家に帰りたいというので、僕たちは待ち合わせをすることにした。

 お金の問題もあるだろうし、準備は必要だ。

 待ち合わせ場所に行くと、先にセリスさんが待っていた。

「もしかして、遅れちゃったかな? 少し早く来たつもりだったんだけど……」

「いいえ、大丈夫。あなたは遅れてなんてないわ。私が早く来すぎただけだから気にしないで」

「でも、セリスさんを待たせちゃったよね。待ってくれて、ありがとう」

「……………………」

 あれ? どうしたんだろう。

 セリスさんが真っ赤になって俯いてしまった。

 もしかしたら具合が悪いのかも知れない。
 
「セリスさん、もし具合が悪いなら別の日でもいいよ」

「う、ううん。……大丈夫……」

「そう? もし、体調が悪いときはすぐに言ってね」

「その時は……頼むわね。じゃあ、行きましょう」

「うん、そうしようか」

 僕たちは店が軒を連ねる商業街を目指して歩き出した。

 午前中は雨が降っていたせいもあって、路面がところどころ濡れている。だけど歩くのに支障はない。大きな水たまり以外はだいたい乾いているし。

 彼女と歩いていて分かったことがある。

 通行人ですらセリスさんに怯えているのだ。

 確かに眼力は強いと思うけど、怯える程だろうか?

「ねえ、トリスタン。あなた、よく私と一緒に来る気になったわね」

「え? だってセリスさんと約束したでしょ」

「まあ、そうだけど……」

「約束したら、普通は守るものじゃないかな?」

 僕の疑問に対し、言いにくそうな表情でセリスさんは口を開いた。
 
「ほら、みんな……私を怖がっているでしょ?」

「ああ、そのこと……」

 セリスさんの表情がみるみる曇っていく。
 
「あなたも私のことが……怖いから仕方なく――」

「僕はセリスさんのことを怖いだなんて思ってないよ!」

「…………!?」

 セリスさんが大きく目を見開いていた。

 突然、僕が声を張ったせいで驚かせてしまったのだ。でも僕は、セリスさんを恐れていないことを分かってもらいたかった。

 僕はセリスさんの目をまっすぐに見つめ、落ち着いたトーンを心がけて言葉を続けた。

「僕はね……見た目だけで人を判断するなんてダメだと思う。セリスさんは真面目だし、気遣いだってできる優しい人だよ」

「トリスタン……」

「ごめん、さっきはちょっと強く言い過ぎちゃって……。でも、セリスさんに僕の気持ちを分かって欲しかったんだ」

「……………………」

「みんなもセリスさんの内面を分かってくれたらいいのに、って思うよ……」

「……分かってくれるのは…………あなただけで、充分……」

「え? 今、なにか言った?」

「……なんでもない」

「う、うん。そっか……」

 セリスさんの声が途中で小さくなって聞こえなかったけど、なんでもないなら……大丈夫だろう。

 どういうわけか、セリスさんはそのまま無言になってしまったので、僕たちは会話をすることも無く静かに歩いていた。

 そのせいか、通りを走る馬車の音がやけに大きく聞こえてしまう。
 
 ん? 馬車? ……まずい!
 
 普段なら馬車なんて気にしないが、今日は大きな水たまりができているのだ。

 このままだとセリスさんが泥水で濡れてしまう。

「セリスさん、危ない!」

 僕はとっさに彼女の腕を取り、思いっきり引き寄せた。

「……きゃん」

 懸念した通り、馬車は水たまりの水を跳ね飛ばしながら去っていった。

 でも間一髪、セリスさんを泥水から守れた。
 
「危なく濡れちゃうところだったね……大丈夫、セリスさん?」

「は……はうう」

「いきなり引き寄せちゃってごめんね。もしかして、どこか痛むの?」

「も、もう少し……そ……そのままで」

「……え?」
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