双子の片割れと母に酷いことを言われて傷つきましたが、理解してくれる人と婚約できたはずが、利用価値があったから優しくしてくれたようです

珠宮さくら

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「エルヴィール王女様!?」
「すぐに医者を」


王女は階段から落ちてしまい、転げ落ちて行くのを誰もが見ているしかできなかった。


「エルヴィール様!」
「ベルティーユ様、慌てては危ないですよ!」
「そうです。ベルティーユ様まで落ちてしまいます」


ベルティーユの側にいる使用人たちは、ベルティーユを必死に止めた。彼女まで怪我をしたら、レオンスに会わせる顔がない。


「エルヴィール」
「殿下」


ベルティーユは第1王子の側に駆け寄った。いや、気持ち的には、駆け寄っていた。車椅子から落ちそうになって痛そうにしながらも、妹を心配して這って階段の下を覗こうとしていたが、動くのが危ないと止められていた。

誰も、こんなことになるのを望んでいたわけではなかった。

王女は、足を骨折していた。その骨折が原因で、王女は足を思うように動かせなくなった。元々、第1王子やベルティーユと同じ病気が潜んでいたのだ。それが、顕著に現れない者もいる。骨折をしたことで、一気に悪くなってしまい、骨折が治っても思う通りに歩けなくなってしまったのだ。

それでも、リハビリをすれば歩けるようになると言われても、辛いリハビリを頑張るよりも王女は、ベルティーユのせいにした。


「あなたのせいよ!」
「っ、」


車椅子の生活になった王女は、ベルティーユのせいだと罵詈雑言を浴びせるようになった。ベルティーユにあれこれ酷いことを言うのが、いつものことのようになっていた。

最もその言葉通りに取る者は少なかった。みんな、本当は何があったかを知っていたからだ。でも、関わりたくなくてベルティーユのことで、怒鳴り散らしている王女を止めようとする者は少なかった。

そのせいで、ベルティーユはどんどん自分のせいだと思い込んで気分を沈ませることになった。


「ベルティーユ」


レオンスが声をかけても、ぼんやりしていることが増えた。あの時に階段から落ちたと聞いて、ベルティーユが落ちたと思って慌てて駆けつけたら、エルヴィールが運ばれて行くところだった。

ベルティーユに色々話しかけていたが、レオンスはぼーっとしたままで聞いてるように見えない婚約者に何とも言えない顔をして、忙しいからとベルティーユのところに現れる回数が増えることはなかった。

第1王子は、妹と揉み合いになって、こんなことになったことを気にしていた。

第1王子は護衛が庇ったから大事には至らなかったが、同腹の妹がこれまでしていたことやベルティーユに掴みかかったことで、揉み合いになったこともわかって、妹に優しさを向けることはないかのようにベルティーユに言っていた。


「あいつの自業自得だ。ベルティーユが気に病む必要はない」
「ですが」
「むしろ、妹が済まなかった。どこも怪我していないか?」
「……私は何ともありません」
「君に何かあったら、弟に顔負けできない。君が、元気がないとレオンスが落ち込んでいた」
「……」


それを聞いて、ぼんやりとしている時にレオンスに声をかけられても上の空だったのを思い出して、ベルティーユは反省することになった。

たが、レオンスの声を聞いてもベルティーユは前のように熱心に耳を傾けなくなっていた。彼が本心で何を思って動いているのかに薄々気づいていたからかもしれない。

でも、レオンスが兄が言ったことでベルティーユが元気になったことに何とも言えない顔を見せたのは、すぐ後だった。


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