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しおりを挟む(オリーヴ視点)
私が、両親に公爵令嬢のミュリエル様のことを話したのは、王太子が彼女と婚約破棄をして、トレイシー様と婚約すると決まった時だった。
それこそ、私はそちらとの方がお似合いだと思っていたし、両親もそう思うと思っていた。
だって、聞いていると小言ばかりというか。説教ばかりなのだ。それを聞いていると家ではトレイシー様が酷い目にあっているのだろうなと思えて仕方がなかった。
詳しいことを話さなくても、両親も同じように憤慨して、そうなっても仕方がないとわかってくれると思っていた。
なのに両親は、私が思っていたのと違う反応を見せた。それは、あの場で見ていた子息、令嬢たちと同じような顔をしていた。
いや、もっと酷いかもしれない。あの場にいたのは、信じられないことになったとばかりにしていたり、ミュリエル様のこと心配そうに見ている者はいたが、王太子たちを祝福する者もいないように見えた。
そこが、謎だった。なぜ、そんな反応をするのかが私には分からなかった。だって、お似合いの2人だと思っていたからだ。ミュリエル様より、ずっとお似合いの2人だと思っていたのは、私だけだったことに見る目がないなと思ってすらいた。
「お前、そんなことをしていたのか?」
「なんてことなの」
「え??」
父と母が、何やら信じられない顔をしていて、私にはよくわからなかった。なぜ、両親はそんな反応をしているのだろうか?
「そんなことをして、再三注意してくださったのに非難するなんて、あなたや殿下、それにその妹も、どうかしているわ」
「注意? そんな、あれは、嫌がらせです!」
ネチネチと説教してきたのも、くだらないことばかりだった。なのにどうして、両親はそんなことを言うのか。公爵令嬢が相手だから……?
「お前が恥をかくと思ってあえて言ってくれていたんだ。それを嫌がらせだなんて受け取る方が、どうかしている。そもそも、王太子も婚約しているのにお前や妹の方を大事にしすぎている。それこそ、婚約している令嬢の味方をするところなのに。なぜ、お前たちと一緒に責め立てて、婚約破棄して、妹の方と婚約するんだ」
それを聞いて我慢ならずに言い返した。
「それだけ、目に余ったからです!」
「そんなのが理由になるものか。はじめから、その妹と婚約したくて、お前は利用されていんだろう」
「え? そんなことは……」
「そうね。そうじゃなければ、その妹が利用したのね。そちらの方がありそうだわ」
「……」
私は、そんなはずないと思おうとした。そもそも、王太子のことを狙ってはいたけど、あの調子でミュリエル様に嫌味なことをネチネチと言われて、うんざりしていた。
周りに何を言っても、ミュリエル様の味方をするかのようにわかってはくれず、そこにトレイシー様が現れて涙ながらに姉のことを謝罪してくれた。
やっとわかってくれる人が現れたと思った。そこから、何かあるたびを申し訳なさそうにするトレイシー様を王太子と一緒になって、私は慰めた。
そのうち、王太子にはトレイシー様こそ相応しいと思えて、王太子との婚約なんて自分には過ぎた事のように思えてならなくなって、今回のようなことになった。
そこまで考えて私は、あれ? これだと、利用されたのでは??となった。
両親は、ミュリエル様やあの家にすぐに謝罪した。娘がしでかしたことで、ミュリエル様に非はないと。
でも、家でトレイシー様を虐めていたのかまでは証拠がないからと触れずにいたが、妹を溺愛しているのは有名だからありえないだろうと両親が言うのに私は絶句した。
そんなこと、知らなかった。通りで周りに何を言っても、ありえないと一蹴されるわけだ。
そこから、ミュリエル様に言われていたことを思い返して勉強し直した。
「っ、」
すると両親の言う通りだった。それこそ、私が恥をかかないように言ってくれていたのは、本当だったのだ。
なんてことをしてしまったのか。今更、後悔してしまった。
酷いことを言ってしまった。きちんと謝罪しなければと思っても、ミュリエル様に会うことは叶わなかった。
更には、トレイシー様が、彼女の伯父の養子となり、実はそちらが実父だったことが知られることになった。ミュリエル様の伯父の妻が子供を連れて実家に帰って、しばらくして離婚した。
他にも何かあったようだが、そちらはわからない。
私は、益々ミュリエル様に申し訳ない気持ちになってしまった。彼女に謝りたくても留学してしまっていて会うこともできなかった。
「ミュリエル様が、あれだけ一生懸命にしていたことを嫌がらせだと捉えていたなんてね」
「その上、あの女に取られるために動かされるなんて、どうかしているわ」
学園では、トレイシー様にいいように利用されたと思われていて、色々言われていた。確かにその通りだと思って何も言えなかった。
何を言っても、助けてくれなかったのは、その通りで直すべきことだと周りもわかっていたからだ。
全て私が悪かったのだと気づいたからこそ、そう言われても仕方がないと思っていた。
「ねぇ、ミュリエル様には謝罪できたの?」
「っ、いえ、まだです」
「直接、会おうとしてるの? そんなの待ってたら、いつ戻って来るかわからないわよ」
「え、でも、留学なら、いつかは……」
謝罪は、直接の方がいいはずだ。だが、話しかけて来た令嬢は……。
「そこが甘いのよ。ミュリエル様は、あちらで婚約されたわ。あの家を継ぐのは、ミュリエル様の父方の従兄になったそうよ」
「え? それって……」
「今回のことで離婚してしまって、事情を知ったからこそ、家を継ぐのは嫌だと言ったのを知ってミュリエルのお父様がならば、家を継いでくれと頼んだそうよ。……それも断っていたそうだけど、ミュリエル様が嫁げるようにするためならばって、トントン拍子できまったとか」
そんな話をする令嬢の目はキラキラと輝いていた。今の話からすると……。
「それって、ミュリエル様の婚約が決まった……?」
「そうよ。だから、会って謝罪できるのがいつになるかなんてわからないわよ。なにせ、ミュリエル様は隣国の国王陛下に見初められたのだもの」
「!?」
それにびっくりしたのは、私だけではなかったはずだ。
でも、周りを見渡すと当然のようにしているから、ミュリエル様はそれほどまでに凄い方だったのだろう。
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