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しおりを挟む一方のミュリエルはというと父親違いの妹が、どうなったかも知らずに留学先の国王と婚約して充実した日々を送っていた。
何気にミュリエルは、祖国のことを耳にするのを楽しみにしていた。もちろん、トレイシーと元婚約者、伯父のこと以外でだ。
最近のお気に入りは、すっかり仲良くなれた男爵令嬢のオリーヴからの手紙を心待ちにしているところだった。彼女は、周りと仲良くできているようで、文面からも楽しくてしょうがないと言わんばかりにしていて、それを読むのが楽しみでならなかった。
ミュリエルとは同い年のはずが、年下のように思えてならなかった。最初こそ、反発して、ミュリエルが婚約破棄される時に色々言われもしたが、それも知らなかったからにほかならない。自分の過ちに気づいてからは、物凄く反省したようだ。
それが、謝罪の手紙からも滲み出ていたが、楽しいことや嬉しいことも手紙に書けるのだ。文才がある。それだけでも、将来が楽しみだと思えていた。
すっかり、ミュリエルはオリーヴの姉というか。近所のお姉さんみたいになっていた。
「ミュリエル」
「陛下」
そこに慣れ親しんだ声が届いた。立ち上がろうとするのを制して、ダンスを踊るかのようにミュリエルの隣に座った。彼こそ、ミュリエルの今の婚約者となった国王だ。
「また、手紙が来たのか?」
「はい。前にお話した男爵令嬢からです。お友達がたくさんできて、学園でも色んな方に気にかけてもらえているようです」
「そうか。素直な令嬢なのだな」
だからこそ ミュリエルはついつい口うるさくしてしまったと思っていた。トレイシーに言われるままにあれこれと言ってしまったが、わざとではなくて知らなくてやっていたのだ。そこをもうちょっと考慮していたら、あんなことで悪目立ちさせなかったのにとミュリエルは、そこを後悔していた、
それも、トレイシーのことを信じていたからこそ、喧しくしてしまってもいた。
それがわかって、トレイシーが何をしていたかもよくわかった。大体、姉を利用して王太子の婚約者になったのだ。可愛がって信用しきっていた妹にそんなことをされるとは思いもしなかったし、そんなことをする子だとは思ってもいなかった。
それにオリーヴの素直さこそ、ミュリエルが妹として求めるものを持っていた。トレイシーがこうであったならと無意識に思うこともあった。
「そういえば、あちらの王太子はまた婚約者をか
えたそうだ」
「え?」
国王が、珍しくミュリエルのところにやって来ると少し前に知らせてきたのは、それを知ったからのようだ。
急に会いに来ると聞いたミュリエルは、そんな話をされるとは思っていなくて目をまん丸にした。それこそ、少しでも時間が空くと顔が見たいと訪れるが、今日はきちんとどうしているかを聞いて来たから、それなりのことだとは思っていたが、それが婚約者をかえたと言う話だとは思わなかった。
そんな方向にいくとは思わなかった。まだまだ元婚約者のことをわかっていなかったようだ。
それこそ、自分は悪くないと思い込んだ挙句、追い込まれた王太子が藁にすがった結果だとは、流石に思わなかった。
それを目撃した面々も、そんな理由で婚約破棄をして、新しい婚約者を選んだとは思っていなかった。
ただ、そういう令嬢が好みなんだろうなと思う者は、それなりにいた。
「よりにもよって、そちらが好みとはな」
「それなら、元婚約者になった令嬢のままでもよさげだが」
「そうだよな」
子息たちは、そういうのが好みなのだと思って残念なものを見る目をして王太子を見ていたことに王太子は気づいていなかった。
子息のみならず、令嬢たちの多くが残念な王太子を白けた目で見ていたことにも気づいていなかった。
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