私の誕生日パーティーを台無しにしてくれて、ありがとう。喜んで婚約破棄されますから、どうぞ勝手に破滅して

珠宮さくら

文字の大きさ
3 / 3

しおりを挟む

「聖女に誰も選ばれなかったそうよ」
「……」
「男爵令嬢は、光るどころか水晶がどす黒くなったらしいわ」
「……それは、ある意味、逆に凄いことですね」


さして興味もなさげにペルマは答えつつ、紅茶を飲んだ。


「それとその前から、学園での成績も上位から急に下位に転落していたとか。……あなたが、学園から消えた辺りかららしいけど、どうしてかしら?」
「さぁ? 王子妃になるべく、教育を受けてお疲れになられていたのでは? 私も最初は要領が悪く大変でしたから」
「そもそも、教育を熱心に受けてなかったようよ。自分は何もしなくても聖女になる素質があるのだから、妃教育なんてしなくても国母になれると言っていたとか」


(それは、おめでたい思考ね。まぁ、何でも出来ていたのは、私の力を貸していただけなんだけど。……あそこまで、おバカでよく学園に入れたものよね)


「第一王子は、廃嫡となったわ。男爵令嬢も聖女になりすまそうとしていたとして平民となった。平民同士、お似合いよね」
「……あの人たちは、どうなりましたか?」
「最後まで、第一王子を推していたせいで、破滅も時間の問題よ」
「そうですか」
「ねぇ、ペルマちゃん」
「はい?」
「破棄された時、笑っていたのは……、こうなることを読んでいたから?」
「笑ってましたか?」
「えぇ、そう見えたわ」
「あの状況で、笑うって、どうなんでしょうね」
「たしかにそうね。私の見間違いね。きっと」
「……」


ペルマは、とにかく聖女となることも、王太子妃になることも望んではいなかった。あの両親の望むままになるのも、嫌だった。

だから、特別な誕生日パーティーを台無しにされる屈辱を我慢する代わりにあの男爵令嬢と第1王子の我儘が現実になるように手を貸した。

全ては、ペルマが自由になるためだ。


(誕生日パーティーを台無しにしてくれて、ありがとう。喜んで婚約破棄されますから、どうぞ勝手に破滅して下さい)


元婚約者も、元男爵令嬢も、実の両親も、こうして勝手に破滅してくれた。

破滅に人を追いやったペルマは、聖女に選ばれるはずがなかった。彼女も水晶に触れば、どす黒くさせたことだろう。でも、ここではそんな認定の儀式はない。


(こんなことをするために頑張ってきたのではないのだけどね)


婚約破棄の騒動で気持ちが沈んでいると思われて、励まし続けてくれた王太子と婚約することになった。
長らく王子妃としての教育を毎日欠かさずにしていたこともあり、何の問題もないと教育係に太鼓判を押されて、頑張ってきたことが無駄になることはなかった。

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

侯爵令嬢は限界です

まる
恋愛
「グラツィア・レピエトラ侯爵令嬢この場をもって婚約を破棄する!!」 何言ってんだこの馬鹿。 いけない。心の中とはいえ、常に淑女たるに相応しく物事を考え… 「貴女の様な傲慢な女は私に相応しくない!」 はい無理でーす! 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 サラッと読み流して楽しんで頂けたなら幸いです。 ※物語の背景はふんわりです。 読んで下さった方、しおり、お気に入り登録本当にありがとうございました!

初めまして婚約者様

まる
恋愛
「まあ!貴方が私の婚約者でしたのね!」 緊迫する場での明るいのんびりとした声。 その言葉を聞いてある一点に非難の視線が集中する。 ○○○○○○○○○○ ※物語の背景はふんわりしています。スルッと読んでいただければ幸いです。 目を止めて読んで下さった方、お気に入り、しおりの登録ありがとう御座いました!少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いです(^人^)

追放した私が求婚されたことを知り、急に焦り始めた元旦那様のお話

睡蓮
恋愛
クアン侯爵とレイナは婚約関係にあったが、公爵は自身の妹であるソフィアの事ばかりを気にかけ、レイナの事を放置していた。ある日の事、しきりにソフィアとレイナの事を比べる侯爵はレイナに対し「婚約破棄」を告げてしまう。これから先、誰もお前の事など愛する者はいないと断言する侯爵だったものの、その後レイナがある人物と再婚を果たしたという知らせを耳にする。その相手の名を聞いて、侯爵はその心の中を大いに焦られるのであった…。

私が家出をしたことを知って、旦那様は分かりやすく後悔し始めたようです

睡蓮
恋愛
リヒト侯爵様、婚約者である私がいなくなった後で、どうぞお好きなようになさってください。あなたがどれだけ焦ろうとも、もう私には関係のない話ですので。

消えた幼馴染の身代わり婚約者にされた私。しかしその後、消えた幼馴染が再びその姿を現したのでした。

睡蓮
恋愛
アリッサとの婚約関係を確信的なものとしていた、ロードス第三王子。しかしある日の事、アリッサは突然にその姿をくらましてしまう。心に深い傷を負う形となったロードスはその後、エレナという貴族令嬢を強引に自分の婚約者とし、いなくなったアリッサの事を演じさせることにした。エレナという名前も取り上げてアリッサと名乗らせ、高圧的にふるまっていたものの、その後しばらくして、いなくなったアリッサが再びロードスの前に姿を現すのだった…。

「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。 主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。 小説家になろう様でも投稿しています。

皇太子から愛されない名ばかりの婚約者と蔑まれる公爵令嬢、いい加減面倒臭くなって皇太子から意図的に距離をとったらあっちから迫ってきた。なんで?

下菊みこと
恋愛
つれない婚約者と距離を置いたら、今度は縋られたお話。 主人公は、婚約者との関係に長年悩んでいた。そしてようやく諦めがついて距離を置く。彼女と婚約者のこれからはどうなっていくのだろうか。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄して支援は継続? 無理ですよ

四季
恋愛
領地持ちかつ長い歴史を持つ家の一人娘であるコルネリア・ガレットは、婚約者レインに呼び出されて……。

処理中です...