自己中すぎる親友の勘違いに巻き込まれ、姉妹の絆がより一層深まったからこそ、お互いが試練に立ち向かえた気がします

珠宮さくら

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周りの令嬢たちも、見飽きた光景になっていて、何を言ってもアンゼリカがあのままで手におえないため、そのままになっていた。

そんな厄介な存在がやって来たのが見えたので、令嬢たちは身を固くした。また、面倒なことに巻き込まれるのではないかと条件反射のようにそうなっていた。

だが、散々な目にあっているはずのシャーリーは、一緒にお茶をしようと誘おうとしていた。色々あってものんびりする時くらいはおとなしくしているだろうと思ってのことだ。

でも、彼女が涙目になっているのに気づいて、シャーリーは物凄く驚いた。そんな顔を今まで見たことがなかった。相手を泣かせても泣くような令嬢ではなかったのだ。


「アンゼリカ? どうしたの?」


シャーリーは、すぐさま駆け寄ってそう聞いたのだが、返事より先にシャーリーはアンゼリカに平手打ちをされていた。


「っ、」
「酷いわ!」
「いきなり、何をなさるんですか?!」
「シャーリー様、大丈夫ですか?」


友達の令嬢たちは、いきなりのことによろめいてしゃがみこんだシャーリーに慌てて駆け寄った。

だが、アンゼリカは周りのことなど一切見ても聞いてもいなかった。ただ、シャーリーだけを見て憎たらしい顔をしていた。これはいつものことだ。周りのことなど彼女が気にしたことはない。

自分の要件を片付けるまでは、周りのことなどどうでもいいのだ。


「あなたのこと、親友だと思って信じていたのに。こんな仕打ちあんまりよ!」
「アンゼリカ。いきなりすぎてわからないわ」
「とぼけないで! 私が婚約するはずだったのに!!」
「??」


どうやら、アンゼリカは婚約したい子息をシャーリーに取られたと言いたいようだ。そんなことしてはいないし、破棄しようと頑張っていたのは、このことがあったからかと思っても渾身の平手打ちのせいで、シャーリーは頭がクラクラしていて言葉にできなかった。

それを聞いていたシャーリーだけでなく、一緒にお茶していた令嬢たちもアンゼリカが何を言いたいのかがわからなかった。そもそも、そんなことをしようとしていることを誰も知らなかったのだ。


「何とか言ったら、どうなのよ!」
「……」


怒鳴り散らすアンゼリカにシャーリーは何を言いたいのかが本当にわからなかった。婚約者を奪ったと思われていても、シャーリーに婚約者などいないのだ。

そのため、アンゼリカが怒鳴り散らすのにシャーリーはきょとんとするしかなかった。そんなシャーリーに慌てふためいたのは一緒にいた令嬢たちだ。


「シャーリー様、すぐに冷やしましょう!」
「そうですわ。せっかくの美しいご尊顔が腫れてしまいます」


令嬢たちは、放心状態のシャーリーにあれこれ話しかけていたが、シャーリーは呆然としていて返事がなかった。


「ちょっと! 今は、私がシャーリーと話しているのよ!」


アンゼリカに流石に頭にきて他の令嬢が怒鳴ろうとしたところで、割って入った人物がいた。


「何をしているんだ?」


そこにジェレマイア・ロッドフォードがやって来た。シャーリーの側にいた令嬢たちには、救いの主のように見えた。彼は隣国の公爵子息で、最近になって留学して来ていた。

彼の声にシャーリーは、ようやく姿勢をそちらに向けた。


「ジェレマイア様」
「シャーリー嬢、どうした? 気分でも悪くなったのか?」


しゃがみこんでいるのが、シャーリーだとわかるなり片膝をついて心配そうに話しかけて来た。

だが、すぐにシャーリーは頬が腫れているのを見せないように立ち上がろうとして、よろめいた。それを支えたのも、彼だった。


「ジェレマイア様! どうして、そんな女を選んだりしたんですか!!」
「……は?」


ジェレマイアは、アンゼリカの言葉に怪訝な顔をしていた。そんな単語を聞くとは思っていなかったのも大きかったが、アンゼリカという名前はよく覚えていなくとも、面倒な令嬢というのでジェレマイアは覚えていた。

あれだけ、騒ぎ立てて婚約破棄をしたのだ。目立たないわけがない。


「そんな女? 君の親友ではなかったか?」
「もう違います!」
「……」


ジェレマイアは、それで何を選んだと言いたいのかがわからなかった。


「アンゼリカ。勘違いしているのよ。あとで話を……」
「煩い! あんたみたいなのを親友だと思っていた自分が馬鹿みたいだわ!」


あまりの言いようにシャーリーと一緒にいた令嬢たちが、ムッとした表情をしていたが、それでも黙っていながら、シャーリーを心配そうに見ていた。


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