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しおりを挟むシャーリーにダレイオスはにっこりと微笑んだ。そして、シャーリーの隣に並ぶ令嬢たちにも柔らかな表情を見せた。その変わり身の早さに驚いてしまった。
「シャーリー嬢の友達も、紹介してくれ。そちらは、ちゃんとしているようだから、挨拶しておきたい」
「わかりました。ですが、今は授業の時間も差し迫っています。先に移動しましょう」
「わかった」
ジェレマイアは、王太子が授業を受ける気になっているのに驚いた顔をしていた。
王太子の頭の良さから、ジェレマイアと同じ授業を受けるのかと思っていたが、年相応の授業の方を受ける気でいたのに何より驚いていたのを言葉にすることはなかった。それで気が変わるわけにはいかなかった。
「ま、待ってください! 案内なら、私の方が……」
アンゼリカは、ここで引き下がれないとダレイオスの腕を掴まえた途端に護衛が現れて、アンゼリカに腕を捻り上げていた。
「痛い!!」
「殿下の身体に不用意に触れるとは、何を考えているんだ!!」
ジェレマイアが声を荒げ、シャーリーはすぐに頭を下げた。
「殿下。彼女の代わりにお詫びします」
シャーリーと一緒にいた令嬢たちも同じように謝罪した。隣国の王族に不用意に触れるのが、どれだけの重罪になるかをアンゼリカは知らないようだ。
「ちょっ、離しなさいよ!」
一番に謝罪すべきアンゼリカなのだが、彼女はそれどころではなかった。まぁ、謝罪するところを見たことがないが、隣国の王太子にまでやらかさないでほしい。
シャーリーだけでなく、学園にいる者たちがそう思っているのすらわからないようでアンゼリカは喚き散らしていた。
「……頭に藁でも詰まっているのか?」
ダレイオスは、護衛に腕を掴まれながら文句を言っているのを呆れた顔をして見ながら、そんなことを言っていた。
「藁には使い勝手があります。なので、もっと使えないものが詰まっているかと」
シャーリーは、ダレイオスの言葉にそんなことを真顔で答えていた。それに友達の令嬢は、吹き出しそうになっているのを堪えるのが大変そうにしていた。
少し離れたところでは、ツボにはまったのが数人いたようだ。
「あぁ、謝罪はその辺でいい。元よりしなくていい。すべきなのが、すればいいだけだが……」
「離せって言ってるのよ!!」
「……無理そうだな。バークロンビー伯爵だったか。あんなのを野放しにしているのを後悔させてやろう」
ダレイオスが妙にやる気になっていた。それを誰も止める気はなかった。ジェレマイアも、それにちょっとだけ嬉しそうな顔をしたが、すぐに表情を隠した。
彼の不穏な言葉通りにバークロンビー伯爵家は、アンゼリカのやらかしたことで大変なことになったのは言うまでもない。
それでも、シャーリーが側にいたのになぜ、こんなことになったのかとバークロンビー伯爵夫人がアンゼリカとオールポート侯爵に乗り込んで来ようとしたが、オールポート侯爵家に入れさせることをオールポート侯爵が許さなかったため、シャーリーが会うことはなかった。
流石に隣国の王太子を怒らせたことで、バークロンビー伯爵は妻と離婚して、娘を勘当することにしたようだ。
だが、今更すぎて周りに同情されることはなかった。
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