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しおりを挟む(アンゼリカ視点)
留学して来たジェレマイアを見て、運命の人だと思った。しかも、隣国の公爵子息と聞いて、益々運命に違いないと思った。
だから、婚約者がいると迷惑でしかなくて、婚約を破棄してもらおうとした。
「は? いきなり、何を言うんだ?」
「だから、破棄したいんです」
「……理由は?」
婚約者は、私にぞっこんだったせいで、理由、理由と煩かった。
運命の人に出会ったからとは言わずに破棄になった方が、魅力があるのに無下にされた令嬢として、ジェレマイアと婚約する時に気にかけてもらえると思っていたが、中々婚約破棄をしてくれなくて大変だった。
異変に気づいたシャーリーが、何かと心配したふりして聞きに来たが、それも煩わしくて仕方がなかった。
それでも、やっと破棄することになったことに喜んで、ジェレマイアと婚約したいと父に話したら……。
「侯爵令嬢と婚約した……?」
「そうだ。お前、まさか、その子息と婚約したくて……」
「嘘よ! 信じられない!!」
父が何か言おうとしていたが、それを聞かずに頭に血が上ったのは、すぐだった。
私が婚約したがっているのを横取りしたのだ。許せるはずがない。
シャーリーが隙を見て婚約したと思って、次の日に平手打ちをしたら、それがシャーリーではなくて病弱な姉と婚約していたと言われて驚かないわけがない。
そこからだ。シャーリーの父親のオールポート侯爵が色々言って来て、ジェレマイアの家からも色々言われることになり、流石に隣国のロッドフォード公爵の機嫌を損ねるわけにいかないと母親に言われて、オールポート侯爵家に両親と言った。
また、親友として仲良くしてあげようと思っていたのに。あの女は、私に平手打ちをしたのだ。
しかも、姉の方は足まで引っ掛けて来たのだ。そのせいで、鼻血が出て酷い顔になったが、その顔で学園に行っていたのは、みんなにこんな目に合わされたと見せるためだ。
それなのに周りは、これまでと違っていて、シャーリーが裏で何か手を回したに違いない。本当に嫌な女だ。
それでも、隣国の王太子が留学しに来たとわかって、ジェレマイアと婚約せずに良かったのだと思った。
運命の人は、王太子の方だったのだと思っていた。それなのにシャーリーばかりを気に掛けるのにどうにかして、私の方を見てもらおうとちょっと触れただけで、酷い目にあった。
それを親に話して、どうにかしてもらおうと思った。この間のことで父は役に立たないのがわかって、母に話せば何とかしてくれると思っていた。
母は、私を見るなり平手打ちをしてきた。
「なんてことをしたのよ!!」
「お、お母様……?」
「隣国の王族に触れるなんて、何を考えているのよ!」
父は、娘が隣国の王太子に無礼なことをしたというので仕事仲間から総スカンを食らうことになり、母親は主催のお茶会をしていた時にその知らせを聞くことになって、大恥をかいたと言うのだ。
だが、父は母の育て方が悪いから、こうなったと言い、夫婦喧嘩となってしまった。
それでも、すぐに父が母に謝って、母も私に謝るはずだと思っていたのにそうはならなかった。
母は離婚することになり、私は勘当されることになったのだ。
「何で、こんなことになるのよ」
母は仕方がないと言い、母の実家に身を寄せることになったが、母の実家はとっくに絶縁しているとして、屋敷にいれてすらもらえなかった。
シャーリーが言っていた通りだったことに母を嘘つき呼ばわりしたら、次の日には母がいなくなっていて、1人で生きていくしかなくなったが、私なら平民となっても上手くやれると思っていた。
でも、周りが元貴族なことを妬ましく思っているようで同性から意地悪をされているようだが、そんなのに屈したりする気はなかった。
「私って、どこにいても妬まれるのよね」
そんなことを思いつつ、色々と建前があるから、ほとぼりが冷めたら父が迎えを寄越してくれると思いながら、何十年も待ち続けた。
耐えられないことがあるとこんな風に思うようにした。貴族に戻った時にシャーリーにいの一番にやり返して、泣いても許しを乞うても許してやらないと決めていた。
シャーリーに色々し返すことで頭がいっぱいになっていたため、彼女がどこで幸せになっているかも、アンゼリカが知ることはなかった。
バークロンビー伯爵家がどうなったかも、アンゼリカは知りもしなかったが、娘がやらかしたことだけでなくて、それまで母娘でやらかしてきたことがありすぎて、爵位を返上するまでに至ったのも、妻と娘を追い出して、すぐのことだったが、アンゼリカがそれを知ることはなかったからこそ、父の迎えを待ち続けることをやめることはなかった。
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