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しおりを挟むそんなことをしている間に待ち合わせしている方が、騒ぎを耳にしたようでヴィディヤを探しに来てしまったようだ。
無理もない。ヴィディヤは遅刻しているのだ。それに騒ぎ立てているのが、誰かなんてすぐに伝わる。普段なら、そこには近づかない方なのに婚約者がそこにいて絡まれているとわかれば、来ないわけにはいかない。申し訳ないとばかりヴィディヤは、ため息をつきたくなっていた。
今日に限ってしつこさが半端なかったのもあり、色んな疲れが一気に押し寄せているかのようになっていた。
楽しみにしていた気分が、どこかに逃げ出してしまっていて、情けない顔をしているだろう。どうにかしなくては、勘違いされる。
「ヴィディヤ」
「王太子殿下」
そこにいた者たちは、王太子が現れたことで礼を尽くした。学園にいようとも、礼儀は欠かせない。あまり気にしない方だが、そうはいかない。
だが、そこに何もしなかった者がいたとは、ヴィディヤは知りもしなかった。トリシュナだけが、ぽかーんとしたままだとは気づきもしなかった。なにせ、彼女は公爵令嬢なのだ。そんな風に何もしないで突っ立っているなんてあり得ないと思ったのだ。曲がりなりにも、どんなに常識がなかろうとも、公爵令嬢なのだ。
王太子の登場に身動き一つ取れないで、固まって動けないで仁王立ちして醜態をさらすなんてことがあるわけない。そんなんで、候補にすら上がれるわけがないのだ。
その辺のこともトリシュナは頭にないようだ。見ているのは、王太子だけで他は無礼なことをしない限り、辺りをうかがう者なんていないのだから見ようがない。
それこそ、何もしていないのを見ていた者がいるとしたら、王太子しかいない。
そのため、この時も王太子と礼すらまともにとれないトリシュナ以外が、王太子が合図をしてくれたタイミングで顔をあげたため、立ち尽くしていたとは思いもしなかった。
もっとも、その時には王太子は無礼な令嬢など眼中になかったようだが。
「来ないから心配していた。何かあったのか?」
今のこの状況で王太子は、わざわざ、そんなことを言った。何があったかなんて一目瞭然だが、なかったことにしたいかのようにヴィディヤには聞こえた。
ヴィディヤとしても、何事もなかったようにしたかった。そこを蒸し返すのは面倒でしかない。
「いえ、大したことでは……」
「何でよ。まだ、婚約者が決まってないじゃないの?」
「ん?」
王太子は、突然割って入って来た令嬢に怪訝な顔をした。今は、ヴィディヤと話しているというのに会話に混ざって来たのだ。
まぁ、先程、ラジェンドラが話している時に周りの令嬢が割って入ったが、あれも失礼なのだ。だが、トリシュナが関わるとどうにも雑になる。
そんなこと、貴族令嬢にはあり得ないことだが、トリシュナは礼儀をどこかに置き忘れて来たように王太子にも、酷さを披露していた。
いや、元々持ってすらいなかったのかも知れない。パーティーでも、母親のことがあって、滅多なことでは呼ばれないのだ。だからといって、できない理由にはならないが。それすら、許されるなんて思ってないはずだ。
「だから、とっくに婚約していると言ってるでしょ」
「知らなかったのなんて、あなたくらいじゃないの? いい加減にしてほしいわ」
「そんなわけないわ。王太子の婚約者の候補にあがったって、お母様が……」
トリシュナにつられて、令嬢たちも王太子の前で無礼なことになっているが、どうしたものか。
王太子は、トリシュナの言葉に益々眉を顰めているから、そちらが気になるのはわかる。
「婚約者の候補? 君は上がってすらいなかったし、随分前のことを今更話しているんだな」
「随分前??」
王太子の言葉にやっとトリシュナは、いつのことかを聞く気になったようだ。そこまで長かった。
「あー、半年は経っているか」
王太子がそんなことを言えば、トリシュナは何を思ったのか。ヴィディヤを怒鳴りつけた。
「ヴィディヤ! 何で、黙っていたのよ! どうせ、私のこと嘲笑っていたんでしょ!?」
「そんなことしてないわ。それより、殿下に失礼な態度を取るのをどうにかして」
「煩い!!」
トリシュナは、ヴィディヤやヴィディヤの家に騙されたかのように騒いでいた。騙していたのは、彼女の母親が娘にしていたことではないかと思っても、トリシュナの頭の中は彼女の母親は何も悪くないままで、変わることはなかった。
何ともわけわからない人たちだと思いつつ、ヴィディヤは無礼な態度を取り続ける幼なじみにイラッとしてしまった。
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