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しおりを挟むとある世界にローザンネ国という周りを海に囲まれた島国があった。その国は、他所の国では有名な島国で知らない者がいないほど、他所の国ではあることで有名な国が存在した。
そこに勘違いが潜んでいるが、まずは島国で暮らす人たちのことから見ていこう。そこに暮らす人たちの多くが、美しいものをこよなく愛し、そのことについて日々、語り合っていた。
いや、語り合っているというととても高尚な感じだが、この島国の住人は語り合うなんて感じの人間はあまり住んでいない。
どんな感じかと言うとあそこに丁度いるから、近づいて聞いてみよう。
「お聞きになりました?」
そこではごく自然に貴族たちが、美しいと思うものの話題を挨拶代わりにして、出会い頭に会話をしていた。
まだ見てはいけない。聞くだけだ。声は、あまり美しいとは言えない。涼やかな声ではない。島国の外の人たちには、どこからそんな声が出てるんだと思われるような声だが、彼女たちにはそれが美しい声に聞こえるのだ。
「あら、それよりも」
相手の話をしっかりと聞くことなく、自分の方がもっと凄いとばかりに張り合って、美しいものの話をした。
語り合う気はないと言っていいと思う。言い合って競っているだけで、慣れというのは恐ろしいもので、これで相手が何を言っているかも聞きながら、自分の言いたいことを話せているのだ。
ここでは、そのくらい朝飯前でないとやってはいけない。何とも残念なことだが、これがローザンネ国の日常だ。
それは、貴族だけではない。平民も、貴族たちの挨拶代わりをいつしか真似るようになり、それが、ステータスのようになってしまっていた。美しいものについての話題がないと影で色々と言われたりもした。
言い合っていても、しっかり聞き取っているのだから、本当に恐ろしい。適当に同じ話題なんてうっかり同じ人にできないのだ。
あちらでは、話題がないと馬鹿にされている者がいるようだ。
声は、やはり美しいとは言えはしない。
「美しいものの話題に事欠くなんて信じられないわ」
「っ、」
悔しそうにする女性がいる。……うん、その顔については、後回しにしよう。
右を見ても左を見ても、そういう話題をしている人たちが多く住んでいる。それが、ローザンネ国という島国だった。とにかく美しいものに目がないというか。変なプライドだけが、信じられないほど高くそびえ立ち、おかしなルールが定着してしまっていた。
大人たちが、そうやって日々を過ごしているため、子供たちも自然と目が肥えていき、大人たちを真似るうちにそれが当たり前のように刷り込まれて、島の住人の当たり前が、それとなって年々酷くなっている。
「あんな話題しかないなんて、あの子、見た目だけね」
「本当よね。見た目がよくても中身がなさすぎよね」
そんな風に悪口を言い合っている女性たちも見かける。挨拶が終わってから、そんな話題を持ち出すのも、いつもの流れだ。
別の人の前では先程まで話していた者を平気で馬鹿にしたことを言うのも、この国の住人の特徴となっている。
決して全員ではないが、聞いていて気分の良いものではないが、慣れている顔のことは後ほどと言わない面々は、それが当たり前となっていておかしいとは思っていない。
それをしている人たちは疑問にすら思っていないのだ。自分がしていることを周りもしているのにそれにすら気づいていない。能天気というか、かなりお馬鹿な人たちが多く住んでいるところだ。
これまた全員ではないが、割合からして多い。
他の国では、そんなことをしてはいないことを知りもせず、この国の常識が世の常識となって疑問にも思っていない。だからできるのだ。深く考えていたら、続いていない。
もっとも、外の者がこの国で暮らすことは、今は滅多にない。昔は、多くいたようだが、今はこの島に住まわせることに色々と問題があるようだ。
ここで、顔の話題に触れるが、仮面をつけている者が船の荷下ろしなどをしていて、それを見た者たちは美しい故に仮面で素顔を隠して生活していて、外の国の者に素顔を見せないのだと思われていた。
彼らの声は、とても美しい。先ほど、声が残念だと言っている面々とはまるで違う。
だが、ここの住人は、その声も顔も不細工で聞いてられない声だと思っていた。
そう、この島国では美醜が逆転してしまっていた。それを島の住人は知らない。この国の常識が世の常識だと思っているのと外の国に行こうなんて思わないせいと外から船で物資を運んだりしている時に会う者しか知らないため、誤解が誤解を生んでいた。
そんなこともあり、この国以外ではローザンネ国は美しい者たちで溢れかえった国だと昔から思われていた。とんでもない誤解だが、残念ながら訂正できる者がいなかった。
確かにローザンネ国では、割合的に美しい人は多くいた。7割ほどが、美しいと言われ、2割が普通。そして、残り1割は、それ以外の者たちとされていた。
それ以外の人たちに属した1割は、美しい者たちからしたら、見るに堪えない酷い顔をしているとして仮面をつけて生活をさせられていた。
そう、外の国の人たちにとって美しいと思われる者たちが、ローザンネ国では醜いと言われている。
船の荷下ろしで会っているのだが、そういう仕事をしている仮面を付けた者たちはあまり見えない視界で働くため、こちらに来た船員なんてろくに見ている余裕なんてなかった。そんなことしていたら、怪我をしかねない。
そのため、外の国の者たちは、淡々と働く寡黙な人たちだと思っていた。誤解していたが、それは外の国だけの誤解ではなかった。色んな誤解とすれ違いが起こっているのに気づいていなかった。
そんな中で、ローザンネ国で暮らす人たちは美しいものを好むのが当たり前になっていた。中には例外もいた。そういう人はローザンネ国では極々僅かで、そんなことを周りに知られると奇異の目を向けられることになる。
「あの方、美しいことの話を全くされないわよね」
「自分があれだけ美しければ、他なんて探す必要もないのでしょ」
「そのせいで、態度が気に入らないのよね」
「本当にそうね。美しいとは言っても、一番には決してなれないのに」
美しければ、美しいだけやっかみを受けやすい。だが、それをされない者も中にはいた。極稀な存在でしかなかった。
大っぴらに自分は美しいものが好きではないと言う者はいない。本当のことを言って、信じられない目や顔を向けられることに堪えられる者は珍しくほとんどいなかった。みんな、他の人の反応を気にしている者が大半だった。
悪口を言い合うのも、自分とて他でされているのを知りながらしているのもいるが、周りの方が酷いと誤魔化しているようなものだった。
自分がやめたら、それはそれであれこれ言われるのだ。していても、あれこれ言われるのだから、どうせなら悪く言った方がいいと思う者ばかりだったりもする。
そんなことをしても、気分がよくなるのなんて一時的なものでもやめることができないまま続いていた。いや、他にやることがないとも言える。
そんな中で、仮面をつけた者たちは、仮面をつけていない者たちの視界に入らないように生活していた。
美しい人たちの中でも見たことない者も少なくなかったようだが、それで誤解している者などいないほど、一般常識となっていた。
それ故、仮面をつけた者たちは、よほどでなければ日中人目のあるところを歩かない。歩いたら、何をされるかわからないからだ。
でも、勉強だけはそういう人たちにしてくれる人がいた。学園に通うなんてさせてもらえなくとも、仮面をつけた者の方が頭がよかった。
そのため、仮面をつけて虐げられた者たちの方が、この国の中では頭が良いものの集まりとなっていた。
だが、仮面をつけている者たちの学業と比べようなんて誰もしていなかったので、頭のできの違いを知る者はいなかった。
それだけではない。仮面を常につけている者の身体能力も、仮面をつけていない者たちよりも、高いことすら気づいていなかった。
そもそも、運動という運動をしていないから体型がスラリとしていない。ぽっちゃり以上に仮面を付けていない者は多い。
声も毎日負けじと喋るせいで、おかしくなっているだけなのにもローザンネ国の住人は気づいていない。
中には、わざと仮面をつけて、遊んでいる者がいたようだが、そういう者たちは四六時中、仮面をつけて生活している者たちだけでなく、つけていない者たちからも、よくわかった。なにせ、体型が違うのだ。よほどじゃないと丸わかりだ。
姿顔を見られるとまずいことをしている者だと。そういうのは、浮気をしている者たちだ。そういう人たちは、普段からつけている仮面とは異なる華美なものをつけていた。
あれで、紛れていて浮気をしに行っていたとしても、根掘り葉掘り検索されることがないのだ。なぜなら、みんな似たりよったりのことをしているから暗黙のルールのようになっていた。
暴いたら暴き返される。そうなれば、離縁になったり、婚約破棄になったりする。それをされないために新しいルールが作られて、それに従ってさえいれば、大変な目に遭うことはなかった。
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