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しおりを挟むだが、楽しいはずの学園生活も、アンネリースがこんな風に思うことになるとは思わなかった。
(つまらない)
アンネリースは、フェイル国の学園の授業に3日もしないで飽きてしまっていた。
「どうかされましたか?」
フェリーネが、ぼーっとしているアンネリースにそんな風に声をかけたのは、学園に通い始めて1週間が経った頃だった。
日に日に帰って来ると借りて来た本を読んでいたりしたが、それもしなくなったアンネリースを変だと思ったようだ。
本は、ローザンネ国の王宮には難しい本がたくさんあった。どれも古いものばかりで、国王や王妃、ましてやマルへリートが読んでも理解できないだろうものばかりだった。仮面を付けていないものは、理解できるはずもなく、仮面を付けた者でも難しいものばかりだった。
それを乳母がこっそり持ってきてくれて部屋で読むのが日課だった。
暗記するほど読んでも、内容がわからずとも覚えて、実践できそうなことからあれこれ試した。乳母がわかることは教えてくれたが、わからないと2人であれこれ議論した。
(懐かしい)
今読んでも理解できないなんてことはない。ここの本は、ローザンネ国の蔵書よりも簡単なものしかなかった。
(王宮にあんなのがあっても宝の持ち腐れのように思えていたけど、あるだけ凄いことだったみたいね)
「……留学しに呼んだ癖に手続きを中々してくれなかっただけはあるわ」
「?」
「物凄くつまらないのよ」
「え?」
フェリーネは、アンネリースの言葉にきょとんとした。
アンネリースの頭が良すぎたようだ。何なら、質問攻めに先生方をして、逃げられるまでになった。
「あー、姫さん、すげぇ頭いいよな」
「え?」
「いや、自覚ないのか?」
「……」
「ないんだな。あー、多分、俺の弟といい勝負だと思うぞ」
「え?」
「あいつも、すげぇ頭良くてさ。俺がバカに見えるくらいなんだ」
(あぁ、だから、バカ息子なのね。変な比べ方をされたものね)
オリフィエルの何が馬鹿なのかがわからなかった。フルネームを聞いて馬鹿にしていた面々が顔色を悪くしたほどだ。
王太子も、何かとアンネリースの側に現れたが、アンネリースの頭の良さに自分が馬鹿に見えるとわかったようで、執務が忙しいからと姿を見せなくなった。
それは、非常にありがたいことでしかなかった、
コルネリスは、オリフィエルと握手をしてから、我先にとオリフィエルのことを至る所で馬鹿にしていたが、そんなオリフィエルよりも王太子の方が馬鹿だったのだ。
「うわっ、見たか?」
「ありゃ、張り合う相手がわかってないよな」
「あの国の頭の良さがわかってないんだろ」
そんな風に周りに言われて、コルネリスも恥ずかしくなったようだ。
バカ息子とは、他にも何かが混じった言葉のようだが、文字通りに捉えた者たちは、みんなオリフィエルに敵う者はいなかった。
オリフィエルが、自国の学園に行く気が失せたのは、勉強についていけないからではなさそうだが、ここではアンネリースと同じく、つまらなそうにしていた。
(しまったわ。だから、留学する言葉通りにするとは思わなかったのかも)
国王のみならず、エデュアルドも苛ついていたのは、アンネリースが無知だと思ったのかもしれない。
そんなことになり、学園ではアンネリースに教えることなどないかのようになっていた。
アンネリースは、自分がやらかしたことに落ち込んでいたが、それは完全なる勘違いでしかなかった。
「アンネリース様」
「……フェリーネの方は、どう?」
「えっと」
アンネリースは、フェリーネの方がどうしているかが気になった。何やら、疲れた顔をしているのだ。
「侍女長が教えてくれているのよね?」
「いえ、その、お忙しいらしく、他の侍女が対応してくれています」
「……対応?」
「……」
「まさか、あなたのこと、ここの侍女のように使っているの?」
フェリーネは、侍女たちに仕事を押し付けられていたようだ。
(へぇー、私の侍女に何をしてくれてるんだか)
もちろん、この後、侍女長にフェリーネが世話になっているようだと嫌味と共に釘を盛大に打ってやったのは、完全なる八つ当たりだ。
侍女長だけでなく、フェリーネをいいように使っていた侍女たちの顔は真っ青になっていたが、ローザンネ国ではできなかったこともあり、ここではできることがあることが嬉しくもあった。
「アンネリース様、ありがとうございます」
「ううん。気づかなくて悪かったわ」
フェリーネは、申し訳なさそうにしながらも、嬉しそうにしていた。
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