見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

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「なぁ、アンネリース様って、本当に絶世の美少女なのか?」
「……何が言いたい?」


学園に再び通うことにしたオリフィエルは、婚約したアンネリースのことで、そんなことを言われることにうんざりしていた。

アンネリースの双子の片割れがフェイル国に来ているとかで、本当に双子の片割れだとは思えない噂で、そんなことばかり聞かれていた。

だが、オリフィエルは双子だということも知らなかった。そんなこと誰も知らなかった。証明なんて何もできていないのに噂だけが日に日に大きくなっていて、オリフィエルはいい迷惑だと思っていた。

そんな噂のせいで、アンネリースといるとひそひそとあることないことを言われ、別々にいても引っ切り無しに声をかけられるのだ。


「お前、婚約しても素顔を見てないとか、どう考えたって怪しいだろ」
「そういう話なら、話しかけて来るな」
「何だよ。気にならないのかよ」
「顔に惚れたわけじゃない」


オリフィエルの言葉をアンネリースは聞いていた。もう何度目になるだろうか。

そんなようなことで、オリフィエルに話しかけて来る者が後を絶たない。

アンネリースにも聞いて来る者もいるが、圧倒的にオリフィエルが多い。


(私の顔のことで、こんなことになるのね。本当に仮面を付け続けて外すなと言っときながら、こんなことになるのだもの。本当にローザンネ国の人間は、仮面を元々付けさせられている者以外、腹が立って仕方がないわ)


アンネリースは、顔のことで一喜一憂する人々にげんなりしていた。オリフィエルは、この事態に苛つくばかりで、対処できる器はないようだ。アンネリースに気にすることはないと言うばかりで、ほっとけば落ち着くと思っているようだ。


(そんなわけない。これは……)


するとそれを見ていた者がこんなことを言って来た。


「アンネリース姫。僕が、どうにかしようか?」
「……」


オリフィエルの弟のリュドは、そんなことを言って来た。それに応対する心の余裕なんてアンネリースにはない。


(この子息がやってることだもの)


アンネリースは、飄々と現れたリュドに怒りがわいた。


「ごめん。そんなに怒る話題なんだね」


リュドの方が恐縮した。素直に謝罪までしてきた。オリフィエルが、気にするなと言うばかりとは違って、彼は吐き出させようとしているのだ。


「そうよ。この顔のせいで、何度殺されそうになったことか。生まれた時から、これを付けさせられた私の気持ちが、あの国を知らない人間にわかるわけがない!」
「……うん」
「私のこの気持ちがわかってたまるものか」
「そうだね。でも、あなたは、何も悪くないよ」
「っ、」
「悪くなんてない」


リュドは、アンネリースのほしい言葉を発した。乳母以外で誰も言ってくれない言葉だ。


「君は、何も間違ってない」
「っ、」
「だから、どうにかしようとあなたが動くことはしなくていいんだ。こんな風にあなたを傷つけた僕を使えばいい。そして、あなたの気持ちを引き出せない兄上を切り捨てればいい」
「っ!?」


(あぁ、そういうことなのね。この子息は、兄に相応しいのかを見ていたのではなくて、私に相応しいかを見ていただけなんだわ)


その言葉を聞いてアンネリースは涙した。

それが一番聞きたかった言葉でもあった。婚約したオリフィエルから、言われたかったことでもあった。

でも、彼からそんなような言葉を聞くことはなかった。そもそも、期待すらしていなかった。


(つまり、そういうことよね。やはり、幸せなふりなんてすることないんだわ)


アンネリースは、心の叫びに従うことにした。

その叫びは、国に帰りたいと望んでいた。この国で生きるより、生まれ育って散々な目にあい続けた国で、生きることを切望していた。

それがわかったからこそ、オリフィエルとの婚約を破棄してもらうことにした。


「は?」
「これだけ、迷惑をかけているから申し訳ないの」
「いや、それは、もうしばらく辛抱したら、落ち着くはずだ」
「それとフェイル国に戻って、双子の片割れだと言っている者と対面して、それから自国に帰るわ」
「どうしてだ?!」
「どうして? そんなの決まっているわ。私の国が心配だからよ」


彼は、公爵家の跡継ぎになったのだ。アンネリースが国に戻って王女としての義務を果たすのなら、それしかなかった。
 
それにアンネリースと婚約する時も弟がアシストしなければ、アンネリースとは婚約してはいなかったのだ。


(弟が味方したと思っていたのでしょうけど、違っていたのよね。オリフィエルを慕ってはいない。彼は、わざと振り回される弟でいただけだもの)


リュドがいたから、婚約したのだ。どんなに着ている服のセンスが自分好みであろうとも、いざとなったら駄々っ子のようになって、絶対に婚約破棄しないとオリフィエルは騒ぎ立てることしかできない公爵子息。

その姿にこんな一面があるのかと色んな人がドン引きして見ていた。


(こういうところなのよね。上手くいかなくなった途端、弟より子供みたいになる。もう、付き合いきれないわ。幸せなふりなんてできない)


アンネリースは、そう見せていただけだ。オリフィエルにも、周りにも。リュドがしていたのと同じだ。相手の望む者になる。蜃気楼のようで、道化師のよう。


(やってみてわかったわ。よほどの目的がなければ、やっていられない)


リュドの目的がアンネリースは気になってならなかった。


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