姉が年々面倒になっていくのを弟と押し付けあっていたのですが、手に負えない厄介者は他にいたようです

珠宮さくら

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「シュリティ! お帰りなさい」
「王太子と婚約するとは、流石は私たちの娘だ」
「本当にそうね。鼻が高いわ」
「……」


両親は、シュリティが留学する時と打って変わって様変わりしていた。シュリティが覚えている両親とかけ離れていた。

弟は、そんな両親に無表情になった。そんな反応を前まであまり見たことがなかったが、それが一番いいのだろう。

すると今更になって気づいたかのようにラケシュを見た両親がいた。


「ラケシュ、いたのか。シュリティの邪魔をするなよ」
「そうよ。チャーヤの時にあんなことになったというのに」
「……」


チャーヤが浮気していたのを知っていて放置していた両親は思い込んだままのようだ。そのため、ラケシュが責め立てられたままになっているようだ。

自分たちは、何をしていたかなんて考えないのは、いつものことだ。そういう両親だ。まぁ、そんなこと考えるようになったら、明日から外は槍が降って来ることになるだろう。それほど珍しいことだ。

そういう人たちなのだ。昔からそうだ。シュリティが、よく知っていることではないか。シュリティは、それをわかっていて、気軽に留学して、好き勝手にして婚約者までできたのかと思うと急にあちらで満喫していた己を殴りたくなった。

こんな思いをしている弟とほっといてしまった自分が一番許せなかった。ただ、ちょっと同じようにチャーヤの話を聞いて同じ思いをしてくれたら、それでよかったのだ。


「別に邪魔なんてしていません」
「あら、そう? でも、この子のせいで、とんでもない恥をかいたのよ」
「……」


つまり、そういうことにしたいのだろう。この分だと他所でもラケシュのせいで、更に酷い恥をかいたかのように言っていそうだ。そういう人たちだ。自分たちは何も悪くないと言って回るのが、先なのだ。

親が子のせいにして、責任逃れをする。こんな両親に頼ることなんてしない。したところで、自分たちを守れたら、それでいいのだ。

そんな両親を姉弟が、どんな顔をして見ているかに気づいていないようだ。これまた、そっくりな顔をしているはずだが、両親にはどうでも良かったことなのだろう。

その後も、ペラペラと好き放題話すのにシュリティは、イラッとした。何か言ってやろうかと思ったが、ラケシュがそんなシュリティの服をそっと引っ張ってきた。

それに気づいて弟を見ると悟った顔をしていた。それだけはわかった。シュリティがいないところでラケシュが、両親に更にねちっこく言われることになるだけだ。

頭に血が上って、弟を悪く言うのに腹が立ったが、言い返すのはやめた。やめて、別のことを考えた。

この家に弟を置いておくなんてしたくないと思った。どうにかしなくてはと必死に頭を働かせた。

そのためにも、おかしなことになっているのを調べてみようとシュリティが思ったのは、すぐだった。

それにあれだけチャーヤが、出かけた話をシュリティにしていたのだ。その間、王女が何をしていたのかが気になったのもあった。あの王女が、婚約者に放置されていて、長い間ほっとくのも妙だ。

それなのに浮気を素直に認めないままにされて、2人ともすぐさま勘当されてしまっているのだ。それが、引っかかってならなかった。


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