7 / 12
7
しおりを挟むシュリティは、姉を勘違いさせるような行動をしたマヘンドラが、どうして婚約者を間違えたのかが引っかかった。あの人は、そんな勘違いをしないはずだ。
その辺も、ちゃんと調べたら何かわかるはずだが、その両親があっさり何も調べずに勘当したことにも首を傾げた。
王女が激怒しているからと言って、なぜそんな勘違いをしたか気にならないものだろうか?
シュリティの両親のようなら、まだしも。そう、マヘンドラをさっさと勘当したい何かがあったのではなかろうか。
シュリティの両親の場合、シュリティが王太子と婚約したのもあり、台無しにされたくなかったのが大きく影響しているようだ。
両親は、シュリティが戻って来てから、しばらくシュリティの機嫌を取ろうとしているのがわかって、そこからシュリティはすり寄って来る2人につれなくしたため、向こうもあまり機嫌を悪くさせすぎても大変だとばかりにして、いつものようになるのも、すぐだった。
とてもわかり易い人たちだ。そんな、両親を姉弟は白けた目で見ていた。両親がいる時は、会話は最低限となっていた。
両親がいなくなるとあれやこれやと姉弟は、話をした。荒んでいた弟が、昔のように笑顔になるのもすぐだった。
「それで、王太子とどうなの?」
「会話するのが、とにかく楽しいのよ」
ラケシュは何気なしに聞いているようだが、シュリティはサラッと答えた。いつも話している内容を話すと……。
「姉さん、そんなことは話すのかよ」
「うん」
凄い顔をされた。でも、いつもなら、興味なさげに別の話題になるのだが、今回はそうはならなかった。何やら考え込んでいるのを見てシュリティは……。
「ラケシュ。勉強しといて損はないわよ」
「……姉さん」
「ん?」
「勉強、教えてくれる?」
「もちろん」
学園が長期休暇の間、ラケシュに勉強を教えた。最初は、勉強するのに抵抗が凄くあったようだが……。
「姉さん。教え方、上手いね」
「そう?」
「うん」
弟は、初歩的なところでわからなくなっていて、そこがわかるとスルスルと理解が進んだようだ。
部屋に閉じこもって勉強するより、外で実験をしたりしたのが楽しかったようだ。
ラケシュは、興味のあるものに対してはの勉強は物凄く進んだが、興味のないものには全くだった。
それでも、ちょっとずつ変わっていこうとする弟をシュリティは微笑ましそうにしていた。
色々と調べたいが、まずは弟を構い倒すことにした。学園が始まれば、そんな風な姉弟の時間はなくなるものと思って、チャーヤがいた時にはできなかったことをした。
勘違いしていたとは言え、王女の婚約者と色んなところに出かけていたのは事実だ。浮気しているつもりはないでは済まされない。そのため、チャーヤを心配してもシュリティたちがそれを言葉にすることはなかった。
アガルワル伯爵家では、姉弟の仲が益々よくなったのは言うまでもない。
93
あなたにおすすめの小説
奈落を封印する聖女ですが、可愛い妹が追放されたので、国を見捨てる事にしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
ファンケン公爵家の長女クラリスは本来家を継ぐ立場だった。だが奈落の底に住む魔族を封印する奈落の聖女に選ばれてしまった。聖なる役目を果たすため、クラリスは聖女となり、次女のエレノアが後継者となった。それから五年、両親が相次いで亡くなり、エレノアは女性ながら公爵となり莫大な資産を引き継いだ。その財産に目をつけたのが、日頃から素行の悪い王太子アキーレヌだった。愛人のキアナと結託し、罠を仕掛けた。まず国王を動かし、エレノアを王太子の婚約者とした。その上で強引に婚前交渉を迫り、エレノアが王太子を叩くように仕向け、不敬罪でお家断絶・私財没収・国外追放刑とした。それを奈落を封じる神殿で聞いたクラリスは激怒して、国を見捨てエレノアと一緒に隣国に行くことにしたのだった。
見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです
珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。
だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。
それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。
不倫した妹の頭がおかしすぎて家族で呆れる「夫のせいで彼に捨てられた」妹は断絶して子供は家族で育てることに
佐藤 美奈
恋愛
ネコのように愛らしい顔立ちの妹のアメリア令嬢が突然実家に帰って来た。
赤ちゃんのようにギャーギャー泣き叫んで夫のオリバーがひどいと主張するのです。
家族でなだめて話を聞いてみると妹の頭が徐々におかしいことに気がついてくる。
アメリアとオリバーは幼馴染で1年前に結婚をして子供のミアという女の子がいます。
不倫していたアメリアとオリバーの離婚は決定したが、その子供がどちらで引き取るのか揉めたらしい。
不倫相手は夫の弟のフレディだと告白された時は家族で平常心を失って天国に行きそうになる。
夫のオリバーも不倫相手の弟フレディもミアは自分の子供だと全力で主張します。
そして検査した結果はオリバーの子供でもフレディのどちらの子供でもなかった。
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。
「前世の記憶がある!」と言い張る女が、私の夫を狙ってる。
百谷シカ
恋愛
「彼を返して! その方は私の夫なのよ!!」
「ちょっと意味がわかりませんけど……あの、どちら様?」
私はメランデル伯爵夫人ヴェロニカ・フェーリーン。
夫のパールとは幼馴染で、現在はおしどり夫婦。
社交界でも幼い頃から公然の仲だった私たちにとって、真面目にありえない事件。
「フレイヤよ。私、前世の記憶があるの。彼と結婚していたのよ! 彼を返してッ!!」
その女の名はフレイヤ・ハリアン。
数ヶ月前に亡くなったパルムクランツ伯爵の令嬢とのこと。
「パルムクランツ卿と言えば……ほら」
「あ」
パールに言われて思い出した。
中年に差し掛かったアルメアン侯爵令嬢を娶り、その私生児まで引き取ったお爺ちゃん……
「えっ!? じゃあフレイヤって侯爵家の血筋なの!?」
どうしよう。もし秘密の父親まで超高貴な方だったりしたらもう太刀打ちできない。
ところが……。
「妹が御迷惑をおかけし申し訳ありません」
パルムクランツ伯爵令嬢、の、オリガ。高貴な血筋かもしれない例の連れ子が現れた。
「妹は、養父が晩年になって引き取った孤児なのです」
「……ぇえ!?」
ちょっと待ってよ。
じゃあ、いろいろ謎すぎる女が私の夫を狙ってるって事!? 恐すぎるんですけど!!
=================
(他「エブリスタ」様に投稿)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる