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しおりを挟むそんなことがあって、私はしばらくして王太子と婚約することになるまで、とんとん拍子だった。
王太子は何かと私の行く先々に出没しては、その度、会話が弾んだ。周りは、それにポカーンとしていることが多かった。
婚約してから、とある人に呼び出されていた。
「あの子のことをお願いね」
「えっと、私の方こそ、王太子殿下の足手まといにならないように頑張ります」
王妃に会うなり、がっしりと手を握られて、そんなことをなぜか頼み込まれた。どうやら、物凄く変わり者で有名だったようだ。王妃に会う前辺りで、そんなことを耳にしても私には変わっていると言われているのが、あまりピンと来てはいなかった。
しかも、ヴェルニエ子爵家のあの妹のところに婚約の話がいっていると思っていた件は、私の方へ婚約の打診をしたかったようだとわかり、目をパチクリさせてしまった。
「え?」
それを両親も、兄妹も、私ですら勘違いしたのだ。
「でも、あの子ったら、黒髪、黒目の美人だと言っても全然乗り気になってくれなくて、グダグダしていたら、あなたが養子なって子爵家からいなくなっていたのよね」
「……」
そのおかげで、妹の方と婚約することにならなくてよかったのだけどねとあっけらかんと言う王妃に私は、どんな表情をするのが正解なのかがわからなくなっていた。
そのせいで、妹の人生が大きく変わった気がしてならなかった。
「でも、運命ってこういうことを言うのでしょうね」
「?」
王妃は、しみじみと言っていたが、私の頭の上は疑問符ばかりとなっていた。どこから、運命が出てきたのかがわからなかったのだ。そんな要素があったなら、詳しく教えてほしいところだとすら思っていた。
「母上。そろそろ、私の婚約者を返してください」
「……あなた、本当にわかりやすいわね」
王太子は、王妃の言葉を綺麗にスルーして私の手を取った。
取った??
「あの、殿下?」
「今日の執務が早く終わったから、出かけよう」
「えっと」
ちらっと見やるのは、王太子の側近だ。疲れた顔をしている。何やらやつれたようにも見える。それでも、私を見ても何も言わずに苦笑するばかりだった。
王妃がいるからか。思っていることを口にしてくれる機会がめっきり減っていて、私は側近の方が何を言いたがっているかを察することが上手くできなかった。
元より察するのは苦手なようだ。価値観が違いすぎるところで育っていたせいか。普通がよくわからない。あちらと真逆なことをしても、周りはあたふたするのだ。悪口を言われないだけマシだが。
「まぁ、これからはお妃教育もあるのだから、ラウラの予定も把握して動くのよ」
「わかってます。ラウラ。母上の相手に疲れすぎていないのなら、出かけよう」
「……」
そんな言い方をされたら、断れないのではないか。ここで出かけたくないほど疲れたといえば、王妃に失礼だ。かと言って、気分が悪いからと帰宅したいと言えば、物凄く心配されるだけだ。
まぁ、何はともあれ嘘は嫌いだと釘を刺すことは忘れなかった。
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