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しおりを挟む(第2王子視点)
こんなことになるとは思っていなかった。
兄上と想いあっているのを知っていた。仲睦まじくしているのを見てもいた。
とても美しい令嬢で、兄上になんて勿体ない令嬢がそこにいた。アデラインがやっていることを自分の手柄にするような人だ。それに文句も言わずにそのままにしていて、失敗すればアデラインが色々言われていた。それでも、何も言わずにいた。
隣国から来る留学生たちが、アデラインの虜になって戻って行って、あちらで婚約破棄になったり、解消となったりして、誘惑したのだと元婚約者の令嬢たちが乗り込んで来ても、言いがかりだと怒ることもなかった。
エイベル国でも、同じように婚約が破棄となったり、解消したりしていて、その積み重ねで令嬢たちからアデラインはずっと妬まれ恨まれ、悪く言われていたが、それでもそのままにしていた。
そんなアデラインを見ていられなかった。彼女の妹のように顔のことを持ち出して黙らせるなんてこともしなかった。
それを見ていられなかった。私の方がアデラインを幸せにできると思っていた時にふと思った。
アデラインの妹をまずどうにかして、そこから兄上と婚約した2人をどうにかしては、どうかと。
だから、ディアドラにあることを吹き込んだ。あの顔をどうにかすればいいと思っていたようで、あっさりと恐ろしいことをやる気になっていた。
そのことをマルティネス公爵に伝えた。実行させずにディアドラを現行犯で捕まえて、勘当にでもすると思っていた。
私は、アデラインに相応しい男になるために今の間に必要なことをするべく留学しに行った。あちらで、アデラインの隣にいても恥ずかしくないようにするのに必死になっていて、勉強三昧の日々を送っていた。
あっという間に1年以上が経った頃に国王である父から、戻って来るようにと手紙をもらった。
第1王子が王太子から外されて、私が王太子となると聞いて驚いた。しかも、兄はマルティネス公爵家に婿入りすると聞いて、もっと驚いた。
そこでアデラインが、顔を醜くすることになって、その主犯がディアドラと兄だった証拠があると言われて驚いてしまった。
「は? 兄上も、関わっていたんですか?」
「そうだ」
「……」
わけがわからなかった。止めてもらおうとしてマルティネス公爵に話していたのに彼は、私の話を信じていなかったということのようだ。
それを確認せずにアデラインと一緒になることを考えて、あちらで勉強三昧をしていたことでアデラインと一緒になるどころではなくなっていたようだ。
アデラインのことを必死に探したが、どこの修道院にもいなかった。
そこまでになって最悪なことが頭を過ぎってしまった。想いあっていると思っていた相手に殺意を向けられ、妹の方と婚約したいからと顔を台無しにされたと顔のみならず、理由まで知ってしまって、絶望してしまったのだとしたら……。
「私のせいだ。私が、あんなことをけしかけたからだ」
そんな風に嘆いて申し訳なかったと思っても、今更でしかなかった。
マルティネス公爵も、同じく落ち込んでいた。私がそう仕向けたとは思っていないようだが、それを阻止しきれなかったことを悔いているようで、マルティネス公爵家が残念なことになっても嘆くことも、文句も、愚痴も言うことはなかったが、マルティネス公爵夫人は相変わらず好き勝手なことを言っていたが、それを止めることもなく、そんな妻と離婚することもなく、見かけるたび年齢よりも老け込ん見えて心が痛んでならなかった。
そんな私が、自分だけ幸せになろうとは思わなかった。王太子となっても、アデラインのような令嬢に出会うこともなく探すこともなく、無難な女性と婚約したが、王太子となった義務を全うして執務もこなすだけで、婚約者を好きになることはなかった。
アデラインのことがあってから、私は笑うこともしなくなって両親が何かと心配してくれたが、元通りになることなんてできなかった。
自分だけ幸せになんてなれるはずがない。
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