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しおりを挟むそんなことがあって、ようやく帰宅したユルシュルは部屋で休みたかった。でも、夕食を食べる元気もなく疲れ切って頭の働かなくなったユルシュルは、こんなことを言われることになった。
「え? 私が、養子に?」
両親に呼び出されたかと思えば、そんなことを言われたのだ。こんな時に聞きたくなかった。
「そうよ。その方が、お互いのためにいいと思うのよ」
「お互いのため……?」
ユルシュルは妹のことではなくて、デルフィーヌの話を聞いてあれこれ段取りを確認して帰ったところに母親から、そんなことを言われて物凄く驚いてしまった。
いや、どちらかが養子になるのなら、お気に入りのベアトリスを養子にするはずがない。この伯爵伯爵家は、親戚から男子の養子を迎えて跡を継がせることは前々から決まっていたから、これはなるべくしてなっただけだ。
「ベアトリスの婚約が決まりそうなのよ」
「それと私の養子に何の関係があるのですか?」
「はっきり言わないとわからないようだな。お前は、これまで妹を執拗に悪く言っていただろ。また、これまでのように色々言われて、婚約が台無しにでもなったら、ベアトリスが可哀想だ。姉として、最後くらいは妹の幸せを願ってやることくらいしてやれ」
「……」
どうやら、両親は妹の評判が良くなるのをどうにかして阻止したい、ただの意地悪い姉と本気で思っていたようだ。
まぁ、そこは昔からそうだったから今更でしかないが。両親は、ユルシュルはそういう娘だと思っているということだ。
「姉さんのせいで、せっかくの婚約が台無しにされるなんて絶対に嫌よ。どうせ、妹が先に婚約したことに嫉妬するに決まってるもの。今までが、そうだったんだし」
「っ、!?」
ユルシュルは、ベアトリスの言い分にイラッとした。それをするのは、ユルシュルではない。絶対にベアトリスの方だ。
ユルシュルが先に婚約したら、散々なことをして来たはずだが、婚約の話なんて来たことがない。
王太子が、婚約の話うんねんと言っていたが、正式にされていないのだから、やはりあれはからかっていたのだ。
最初こそ、迷惑かけたくなくて、婚約のことをのらりくらりかわしていたというのに。あれすら、冗談だったかと思うとユルシュルは、本当にここに居続ける理由がなくなってしまった。
婚約した時に勘違いさせたら大変だと気遣っていたユルシュルが面白かったに違いない。
ユルシュルの中で何かが切れた。もう、この人たちに我慢なんてする必要はない。そもそも、そんな必要なかったのだ。
誰も彼もが、ユルシュルのことを必要とは思ってくれていなかったのだ。王女だって、王妃と自分の母親のことで何かと話しかけて来ていたのも、面倒事をユルシュルなら、どうにかしてくれると思ってのことだけなのだ。
2人は不仲だと言っているが、ユルシュルが側にいれば、不仲なんて見えない。
みんなにいいように使われていたのだとユルシュルはようやくわかった。
「わかりました。養子になります」
ユルシュルは、あえてベアトリスの婚約相手のことを聞かなかった。更には、どこに養子に出されるのかも聞かなかった。
ここから、遠くへ行けるなら、それでよかった。
この家から縁を切りたいと心から思った。馬鹿みたいに頼られて、お姉様と言われていた王女のことも、王妃たちのことも、ユルシュルは都合よく利用されていたのだとようやくわかった。本当に馬鹿だった。
そんなことを思って、ショックのあまり寝込んだかというとそうはならなかった。
スッキリした気分となれて、これまで悩まされていたことを考えなくてよくなったことにユルシュルは、久しぶりに心から笑顔になれる気がした。
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